オトナンサー|オトナの教養エンタメバラエティー

「迷惑極まりない」と怒りも…私はコロナに感染しないと言う人の心理とは

コロナ禍が長期化し、深刻さを増していますが、「俺は感染しないから」「私は大丈夫だから」という根拠のない自信を誇示する人たちもいます。その心理とは。

「俺は感染しない」と言い切る心理とは?
「俺は感染しない」と言い切る心理とは?

 コロナ禍が長期化し、感染拡大を防ぐための「新しい生活様式」を実践する人も増えてきています。しかし、中には「俺は感染しないから」「私は大丈夫だから」という根拠のない自信を誇示して、スーパーや百貨店へ入店する前の手指の消毒を拒否したり、社内外の対面での会議を積極的に設定したりと、感染リスクを考慮しない行動を取る人もいるようです。

 こうした人について、ネット上では「迷惑極まりない」「私の上司も『俺は感染しない』と言い張っていて困る」「根拠のない自信で周囲を振り回すのはやめてほしい」など怒りの声が多く上がっています。「俺は/私はコロナに感染しない」と言い切る人の心理について、心理カウンセラーの小日向るり子さんに聞きました。

体力や健康に自信あり

Q.一般的に「自分の考えに自信がある」と思っているときの心理とは、どのようなものでしょうか。

小日向さん「『自分の考えに自信がある』と思っている当人の多くは、その考えに『根拠もある』と思っているものです。その根拠のよりどころとなるものは大きく2つあります。一つは自分自身の学習や経験がよりどころとなっている場合です。『自分が実際に体験したのだから間違いない』などの発言が該当します。これは人生に成功体験が多く、社会的ステータスが高い人がなりやすい思考です。

そして、もう一つは他人の発言がよりどころとなって、自信につながっている場合です。これは尊敬している人や指示を仰いでいる人がいる場合によく見られる思考で『あの人が言うんだから間違いないだろう』といった自信の持ち方です。よって、『根拠がある/ない』というのはあくまで、第三者がする判断です」

Q.コロナ禍で「俺は感染しない」「私は大丈夫」と考え、感染対策を積極的に行わない人の心理状態とは、どのようなものだと考えられますか。

小日向さん「これには大きく分けて、いくつかの心理が働いていると考えています。一つは自分の体力や健康に自信があるケースです。『周囲がインフルエンザになっても、自分はいつも罹患(りかん)しないから』『風邪なんてめったにひいたことがないから』など自身の経験によって裏打ちされているためです。また、何でも人と反対のことをする、あまのじゃくな性格の人はコロナに関係なく、ただ、『みんなが感染対策をしているから、反対の行動を取りたくなる』という心理もみられます。

他に自暴自棄に近い状態である『セルフネグレクト(自己放置)』に陥って、それが自分の健康に対しても及んでおり、分かりやすくいえば、『コロナにかかって死んだっていいや』という心の状態も考えられます。そして、これらの心理が複合的に絡み合っているケースもあるでしょう」

Q.周囲に対し、「俺は/私は感染しない」と声に出して主張するとき、心理状態に何らかの変化はあるのでしょうか。

小日向さん「試合や試験の前に『絶対勝つ!』『合格できる』と声に出して言うとテンションが上がって、その気になったという経験を持つ人は多いと思いますが、それと同じです。一種の自己暗示と考えてよいでしょう」

Q.「俺は/私は感染しない」と考えたり、それを周囲に言ったりする心理状態や考え方はなぜ、形成されるのだと思われますか。

小日向さん「先述のように、自分に自信があるからです。こうした人を観察していると、コロナ関連だけでなく、さまざまな事象について自信満々の発言が目立つことに気付くはずです。さらに、それを周囲に言う傾向は承認欲求や自己顕示欲が強い人によくみられます。これらの欲求が強いことでリーダーシップを取れるなど、よい方向に働く場合もあるのですが、エビデンス(証拠、根拠)がなければ自己満足にすぎず、さらに、コロナなどの疾病の場合は周囲に迷惑をかけたり、社会を混乱させたりしてしまいます」

1 2

小日向るり子(こひなた・るりこ)

心理カウンセラー

カウンセリングスペース「フィールマインド」代表。出版社で働きながらボランティアで電話相談員を始めたことが、カウンセリングの世界に入るきっかけに。資格取得後、行政機関でのセクハラ相談員を経て、2012年に独立。2019年4月現在、約3500件の相談実績を持つ。メディア、ネットなどで心理・恋愛系コラムを多数執筆。フィールマインド(http://feel-mind.net/)。

コメント