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「おでん」が“○○煮”ではなく「おでん」と呼ばれる理由は?

おでんと煮物はそれぞれ、食材をだしで煮て味付けをする料理であるにもかかわらず、呼び方が異なります。両者の違いは何でしょうか。

おでんと煮物、なぜ呼び方が違う?
おでんと煮物、なぜ呼び方が違う?

 秋が深まり、「おでん」がおいしい季節です。近年はコンビニのレジ横にも、おでんが置かれるのが当たり前となり、わざわざ調理しなくても簡単に食べられるようになりました。おでんは大根や卵、はんぺんなどをだしで煮て味付けをした料理ですが、食材をだしで煮て味付けをするのは「煮物」も同じです。おでんと煮物の違いは何でしょうか。料理研究家で管理栄養士の関口絢子さんに聞きました。

江戸時代に現在の形が完成

Q.おでんと煮物は両方とも、食材をだしで煮て味付けをした料理ですが、呼び方が異なります。おでんと煮物の違いは何でしょうか。

関口さん「煮物とは、具材を味のついた液体で煮る調理法のことで、そのような調理で作られた料理の総称です。おでんは煮物料理の一つで、具材が練り物や昆布、卵、大根など『おでん種』といわれる材料を使った料理のことです」

Q.「○○が入っているからおでん」といった、おでんの定義はあるのでしょうか。ある場合、どのような定義でしょうか。

関口さん「関東と関西での違いがあり、また、地域独自のおでんが生まれ、各地で、使われるだしや煮汁の調味料、具材に地域性があります。しかし、ほぼ全国で用いられるおでん種は大根、ゆで卵、昆布、こんにゃく、ちくわ、厚揚げ、がんもどき、巾着(きんちゃく)だといわれています。

おでんは数種類の具材を長時間煮込む料理なので、先述したように、一般的な具材が入っていれば、おでんと呼べるのではないでしょうか。地域によっては、しょうゆ味で炊いたおでんは『関東煮(かんとだき)』と呼び、その地方独自の味を『おでん』と称している場合もあります。

例えば、愛知県とその周辺地域では、みそを使ったみそ味のおでんや、具材にみそだれを塗って焼いた田楽をおでんと呼ぶようです。とはいえ、コンビニで販売するおでんの全国展開により、若干のご当地性はあるものの、幅広く認識されるおでんの概念はほぼ一般的な具材を、だしで煮込んだ料理に定まってきているようです」

Q.煮物とは別に「おでん」という名称で呼ばれるようになった背景を教えてください。

関口さん「おでんは漢字で書くと『御田』であり、その『田』は田楽(でんがく)が由来です。田楽とは元々、平安時代に農作物の豊穣(ほうじょう)を祈願するために踊った舞のことで、豆腐を串に刺して焼いた料理をその舞に例えて、田楽と呼ぶようになりました。宮中に仕える女性の間では上品な言い方として、田楽に『お』をつけて呼ぶようになり、『おでん』に変わっていったといわれます。

江戸時代に入り、豆腐以外にこんにゃく、サトイモなどの具材が増え、現在のような、だしにしょうゆを入れて煮込んだ『おでん』が完成したようです」

Q.おでんを食べるとき、からしを付けるのはなぜですか。

関口さん「おでんが現在のようなスタイルの食べ物として定着した江戸時代は『夜鳴きそば』のように、屋台で食べられることが多かったようです。当時の屋台は衛生状態がよいとは言えず、度々、食中毒を起こすことがあったようです。

食中毒のうわさが広がり、売り上げが激減することで困った店主が発見したのは、カツオの刺し身につける『和がらし』でした。調べてみれば、からしには殺菌効果があることが分かり、カツオの刺し身による食中毒を防ぐために使われているからしをおでんに採用したということです。おでんの薬味に欠かせないからしですが、味だけではなく、理にかなった組み合わせのようです」

Q.おでんは食材をだしで煮て味付けをする、あまり難しい料理ではないように思いますが、家庭でおでんを調理するとき、ありがちな失敗はあるのでしょうか。

関口さん「おいしいおでんとは、一つ一つの具材がそれぞれベストな状態で完成すること、煮汁にいろいろな具材からのだしが溶け出し、うまみを増した煮汁がそれぞれの具材に染み込んでいることではないでしょうか。そのためには、一つ一つの具材に適正な下処理をすることが大切です。

例えば、おでんの煮汁にそのまま具材を入れたら、おいしいおでんにはなりません。大根を生のまま入れると大根の苦味や辛味がスープの味を落とし、大根の中まで火が通る前に他の具材が煮えてしまいます。また、味の染み込みが悪くなります。そのため、大根は下ゆでしておきます。

また、味を落とす成分を取り除いておくことでスープがおいしくなります。練り物や揚げ物は熱湯をくぐらせて、周りの油を落とすことでスープの濁りがなく、きれいに仕上がります。こんにゃく、しらたきはあく抜きしておきます。

煮汁の中で煮崩れを防ぐための火加減も重要です。おでんはグツグツ煮込むのではなく、下処理を済ませた具材を煮汁につからせるように、ゆっくり時間をかけて煮込みます。一度煮えたら、火から下ろして置いておくと味がよく染みますので、時間があるときに作るのがおすすめです。2日目のおでんがおいしいのも同様の理由です」

(オトナンサー編集部)

関口絢子(せきぐち・あやこ)

料理研究家・管理栄養士・インナービューティースペシャリスト

米国栄養カウンセラー、ヘルスケアプランナー。企業やウェブサイトなどの各種メディアで、レシピやコラム、企画提案などを行う。斬新なアイデアやニーズを捉えた企画が人気を博し、CM用のフードコーディネートやフードスタイリング、商業施設のフードプロデュースなど多岐にわたり活動。「毎日続けられること」をモットーに簡単・おいしい・おしゃれ、かつ美容と健康に直結したレシピを発信。自らの体調不良を食で克服した経験から執筆した著書「キレイになる!フェロモンレシピ」で「食から始めるアンチエイジング」をテーマに、女性が一生輝き続けるための食事法を紹介。セミナーや女性誌の特集で人気を集めている。

■オフィシャルブログ(http://ameblo.jp/ayako-sekiguchi/
■YouTubeチャンネル「管理栄養士:関口絢子のウェルネスキッチン」(https://www.youtube.com/channel/UC6cZRYwUPyvoeOOb0dqrAug

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