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「トイレが近い」…その原因と対処法を徹底解説!

「トイレが近い」。ともすれば放置してしまいがちな「頻尿」ですが、そこには深刻な原因が潜んでいることがあります。ここでは、頻尿の背後にあるさまざまな病気や不安時の対処法について、医師の先生と解説します。

トイレが近い原因とその対処法とは

そもそも頻尿とは

「最近トイレが近くなった」と感じることはありませんか。また、トイレが近いことで旅行や外出に不安を覚えることはないでしょうか。

 医師の髙田女里さんによると、「トイレが近い」という体のサインには、実はさまざまな原因が隠れていることがあります。トイレの問題は、放っておいても自然に治ることはなく、症状は改善しないままですが、薬物療法や理学療法によって改善できます。

 人になかなか相談しにくいトイレの話。しかし、自覚症状としては発見しやすいトイレの習慣。自分のトイレ習慣に少しでも異変を感じたら、自分に合った方法ですぐに対処することが大切です。

頻尿の目安は「1日8回以上」

 そもそも「頻尿」とは排尿回数が多く、頻繁にトイレに行くことで、その原因は多岐にわたります。

 一般には、1日8回以上排尿することが頻尿の目安とされていますが、日本泌尿器科学会によると、トイレに行く回数が8回未満でも「尿意を感じる回数が多い」と本人が感じれば頻尿であると定義されます。頻尿は、トイレに行く回数が多いため、1回あたりの尿量が少なくなるのが特徴です(糖尿病などが原因の場合、尿量は少なくない)。

 また通常、夜間は排尿抑制が効いているため、「トイレに行きたい」と目が覚めることはほとんどありません。しかし、夜間に尿意で目が覚め、2回以上トイレに行く状態も頻尿といえます。回数だけでなく、日中や夜間の尿意、本人にとって問題となるような尿意があれば頻尿という病気であることを疑うべきです。

 尿意は通常、膀胱(ぼうこう)に尿が150~200ミリリットルたまると感じ始めます。何らかの理由でトイレに行くことができず、もらしてしまう寸前では350~600ミリリットルもの尿がたまっています。その働きに問題がなければ、膀胱はどれだけ尿意を感じても収縮することなく、尿が漏れてしまうこともありません。しかし、頻尿には「膀胱に尿をためられない」「何回もトイレに行かないと漏らしてしまう」などの症状があるのです。

トイレと病気の関係【過活動膀胱~膀胱がん】

 トイレが近くなる原因には、体の病気が影響している場合と精神的問題が影響している場合があります。

 体の病気としては「過活動膀胱」「膀胱炎」「前立腺炎」「膀胱がん」などが挙げられ、ほかに糖尿病や心不全が原因の場合もあります。精神的問題としては、トイレのことが気になって何度もトイレに行ってしまう「心因性頻尿」が挙げられます。これらの病気や精神面以外に、加齢や出産などによる筋力低下が原因の場合もあります。

【過活動膀胱】 

 過活動膀胱は、膀胱が必要以上に活動することです。自分の意思とは関係なく、急に膀胱が収縮し、尿意が我慢できなくなります。過活動膀胱は老化現象の一種であり、加齢とともに過活動膀胱になるケースが少なくありません。また、加齢のほかに脳疾患やパーキンソン病、前立腺肥大症のために膀胱の収縮がコントロールできなくなるという、病気の2次的症状として発症することもあります。男性よりも女性に多く、大きな病気が隠れている可能性もあります。

【膀胱炎】

 膀胱炎は尿管から細菌が入り込み増殖することで、膀胱の粘膜に炎症が起きる病気です。膀胱炎は尿道が短い女性に起こりやすく、特に疲れやストレスがたまって免疫力が落ちている時にかかりやすいとされています。膀胱炎の場合、頻尿のほかに残尿感、下腹部痛、腰痛、排尿時痛などの症状があります。血尿が出たり、濁っていたりすれば、膀胱炎が疑われます。ほとんどが急性膀胱炎ですが放置すると慢性膀胱炎になってしまいます。

【前立腺炎】

 前立腺炎は前立腺に細菌が入り込み、炎症を引き起こす男性特有の病気で、30~40代の若い男性に多くみられます。前立腺炎の原因には、細菌によるものとそうでないものがありますが、細菌の場合は大腸菌や緑膿菌が原因であることが多いと報告されています。しかし、ほとんどは非細菌性の前立腺炎で、自覚症状が少なく慢性化しやすいのが特徴です。慢性化すると完治が困難になるため、早めの対策が必要です。

 前立腺炎の自覚症状としては、頻尿のほかに排尿時痛、尿意切迫感、排尿困難などが挙げられます。また、下腹部や肛門周辺の痛みや違和感、こう丸の痛み、太ももの違和感やしびれなどがあります。前立腺炎は放っておくと勃起障害(ED)の原因になることもあり、頻尿以外に上記のような自覚症状がある場合、慢性化する前に治療しましょう。

【膀胱がん】

 頻尿の背後に隠れている原因として、膀胱がんなどの恐ろしい病気があります。膀胱がんの多くは尿路上皮の一部ががん細胞化することで起こり、女性よりも男性が発症しやすい病気です。症状としては、頻尿のほかに血尿、排尿時痛、背部痛など。背部痛以外の症状は膀胱炎と類似しており、がんの発見が遅れてしまうことがあります。

 膀胱がんは進行が遅く、自覚症状が出にくいため、症状に気付いた時には転移性のがんや筋層浸潤性がんに進行している恐れがあります。膀胱炎と診断されてもなかなか症状が治らない場合「膀胱がんも心配」と相談しましょう。

トイレと病気の関係【糖尿病・心不全~加齢現象】

【糖尿病・心不全】

 頻尿は泌尿器科疾患とは関係ない病気が原因の可能性もあります。頻尿とは一見無関係に見える糖尿病や心不全ですが、その症状として頻尿が見られることがあります。

 糖尿病の主な症状は「のどの渇き」です。血液中の糖分濃度を薄めるためにのどが渇き、水分を摂取するのですが、水分摂取量が多くなると必然的に尿量が増えてトイレに行きたいと感じることが増えます。運動をしているわけでも、汗をかいているわけでもないのにのどが渇くようになったと感じたら要注意です。

 心不全は心臓の働きが弱まることで血液の循環が悪くなり、日中下半身にたまりやすくなった血液が、夜間に横になることで一気に心臓へと戻ってきます。そのため、夜間睡眠中に尿意を感じることが多くなるのです。

【心因性頻尿】 

 ストレスや心の不調による心身症の一つとして、頻尿が現れることがあります。膀胱は精神的な作用を受けやすい臓器であり、心因性頻尿は環境に対する強い緊張や不安感が原因で起きます。小さな子どもは家庭や学校など環境の変化、家庭のしつけなどに対する不安や緊張、青年は受験や就職など大きなライフイベントに関する不安や緊張、成人は仕事のストレスなどが原因となりえます。

 頻尿の原因が心因性頻尿とわかった場合は、泌尿器科よりも心療内科や精神科の受診が適しています。服薬は抗不安薬や、場合によっては抗うつ薬が効くことがあります。また、自分自身の精神状況や落ち着くための対処方法を学ぶことも治療として重要です。

【加齢現象】

 加齢により膀胱の働きが弱まることで頻尿となります。加齢現象の場合は、上記の病気のような自覚症状はなく、主な症状としては、夜間に何回もトイレに行きたくなることが挙げられます。通常、夜間睡眠時は体内の抗利尿ホルモンの働きで排尿抑制がかかっていますが、抗利尿ホルモンが減ると排尿抑制がかからなくなり、夜中に何度も尿意を感じて目覚めてしまいます。加齢によって膀胱が硬くなることで尿がためられなくなったり、骨盤内の筋力が低下したりすることもあります。

 しかし、トイレに行くのが嫌だといって飲水量を減らすと脱水症状に陥ってしまいます。インナーパッド(大人用オムツ)の使用や医療機関の受診、服薬などが必要です。

トイレが近くて不安な時の対処法

 トイレが近いと、旅行や映画などトイレに長時間行けない状況に大きな不安を感じ、活動性が低くなったり引きこもったりしてしまう懸念があります。ここでは、トイレが近くて不安な場合の対処法をご紹介します。

【インナーパッドを利用する】 

 ひと昔前まで「大人用オムツ」というと介護用の大きな分厚い紙オムツを想像し、あまり良いイメージはありませんでした。しかし最近では、パンツやスパッツなどのインナーに手軽に取り付けるタイプのインナーパッドが数多く商品化されています。

 インナーパッドは薄くて小さいため、持ち運びが楽で着用しても気にならず、トイレへ行くたびに手軽に交換できて便利です。吸水性に優れ、臭いも気にならないため、安心して使うことができます。旅行や映画など、トイレに長時間行けない状況のほか、ちょっとした外出時に利用できれば、頻尿へのストレスを和らげる効果も期待できます。吸収量によってさまざまな種類があります。

【利尿作用の高い食べ物や飲み物を避ける】 

 コーヒーや紅茶、緑茶など、カフェインが含まれている飲み物は利尿作用が高く、尿意を感じやすくなったり、頻尿の原因になったりします。普段からコーヒーや紅茶を飲む習慣がある人は、麦茶や番茶などカフェインが含まれていない飲み物に切り替えることをオススメします。

【骨盤底筋群を鍛える】 

 尿意を感じても漏らすことのないように、骨盤底筋群を鍛える方法があります。骨盤底筋群を鍛えることにより、排尿を我慢できるようになったり、失禁しにくくなったりします。

<骨盤底筋群の鍛え方>

1.息を吐きながら下腹部を凹ませる
2.下腹部を凹ませたまま、尿を我慢する要領で尿道と肛門に力を入れる
3.(1)と(2)の状態を保ったまま数回呼吸を続ける
4.力を抜く時もゆっくりとコントロールしながら徐々に戻す

 このトレーニングは座ったままでも立ったままでも、どのような状態でも可能であり、気がついた時にいつでもできます。早い人はトレーニングを始めて約3週間で効果が出ることも。高齢者も毎日行うことで効果が期待できます。

まとめ

「トイレが近い原因は泌尿器科の病気、病気の2次的症状、精神的問題、加齢などさまざまです。トイレが近いと感じる背景に、重篤な病気が隠れている場合があります。たかがトイレ、されどトイレ。これまでと違うと感じたら専門医を受診し、重篤化する前に自分に合った対処法を見つけることが最も効果的です」(髙田さん)

(オトナンサー編集部)

髙田女里(たかだ・めり)

医師(形成外科)・医学博士(法医学)

1980年8月15日生まれ。慶応義塾大学法学部法律学科の憲法ゼミで学んだ後、医師を目指して秋田大学医学部へ学士編入。医師免許取得後、2年間研修医として各科を回り、その後、法医学分野の博士号を取得した。日本形成外科学会会員、日本美容皮膚科学会会員、日本熱傷学会会員。

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