偏食→繊細な舌 「リフレーミング」がわが子の短所を長所に変える?
親は子どもの「できていない部分」に気持ちが向いてしまいがちです。そんなとき、「リフレーミング」という手法が役立つことがあります。

「親は子どもの『できていない部分を見つける天才』だ」と思うことがあります。短所を見つける才能が、親には備わっているようにも感じます。
わが子だからこそ、親としての責任や愛情があるので“年中無休の怒り屋”になってしまいがちですが、「あれもできない」「これも不足だ」と叱られてばかりいたら、子どもの自尊心はズタズタになり、いつしか、心の中に「僕(私)はだめな人間だ」という気持ちが生まれてしまうのではないでしょうか。これでは元も子もありませんよね。
人や物の見方を変えてみる
さて、「リフレーミング」という言葉があります。主に、家族を対象とした心理療法で使われてきた言葉で、人や物事に対する捉え方、見方を変えることをいいます。リフレーミングの具体例は次の通りです。
・落ち着きがない→好奇心旺盛/興味津々/エネルギッシュ
・騒がしい→元気/明るい
・しつこい→粘り強い/諦めない
・ふざけてばかりいる→面白い/愉快
・好き嫌いが多い、偏食→味覚が過敏で「まずい」と感じる感覚が鋭い/舌が繊細
・スーパーでお菓子を欲しがり、座り込んで泣く→自分の意見を主張することができる
・優柔不断→思慮深い/慎重
・皆と同じようにできない、変わっている→個性的/独創的/マイペース
・兄や姉のまねばかりして困る→人に関心がある

私はかつて、学習塾で小学生を指導していました。指導する中で、2タイプの子どもがいました。
A君はプリントの問題に全て解答していましたが文字が雑で、ケアレスミスが多い子でした。数字の「6」も適当に書くので、「0」に見えます。学力が低いわけではないので、じっくり取り組めば解答できる生徒でしたが、判別不能なので、学校でも「×」をもらうことが多かったようです。親御さんは「うちの息子は雑で困る」と相当悩んでいました。

一方のBちゃんは毎回、時間切れで、最後の問題まで解くことができません。時間があればできる問題も空欄のままです。文字はきれいなのですが、じっくり取り組み過ぎる子だったのです。この子の親御さんは、わが子が神経質で丁寧過ぎることを悩んでいました。
どちらもそれぞれの性格により、このような結果になっています。大ざっぱな子に「緻密になれ」と要求しても難しく、また、じっくり取り組みたい子に「適当にササッとやりなさい」と言ってもなかなかできないでしょう。しかし、私は「A君の大ざっぱなところが長所、Bちゃんの丁寧なところが長所だ」と思っていました。
また、忘れ物をよくする子どもは「忘れ物をするだらしがない子」という悪い評価を受けがちですが、忘れ物ばかり気にして神経質になっている子どもの親から見れば、「細かいことを気にしないおおらかな子」として映っていることもあります。このように、つい「ないものねだり」をするのが親なのですね。
発達障害の息子に対するリフレーミング
私の息子は19歳の知的障害を伴う自閉症児ですが、「これでよかったのだ」と思うことがあります。「大変だ」と思うことのリフレーミングです。
例えば、息子は舌の感覚過敏により、「超」が付く偏食です。好き嫌いが多いというより、「○○(店)のシューマイしか食べません」という状態。でも、考え方を変えれば「料理を工夫しなくてもよいので楽かも!」と思えます。
息子は暴言を吐くこともありますが、大きくなってもいつまでもかわいく思えます。塾にも行かず、受験戦争にも巻き込まれず、教育費もほとんどかかりませんでした。そして、障害者を育てるママ友ができて世界が広がったとともに、「普通」「人並みに」の呪縛に私自身ががんじがらめになることなく、自由になれました。
自分の子どもに対しては特に、「こうであってほしい」という理想や期待があるので、どうしても「ここがもっと改善されれば、私も子どもも幸せになれるのに…」と思ってしまうのかもしれません。しかし、見方を変えると悩みも少なくなります。
「こじつけ」「都合のいい解釈」と感じる人もいるかもしれないリフレーミングですが、わが子の「短所」を「強み」と捉えられる方法なので、試してみてくださいね。
(子育て本著者・講演家 立石美津子)
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