劣等感に自己嫌悪…自分と他人を比較して落ち込む癖、どうしたら直せる?
日常生活でつい、他人と比較して物事を考えてしまい、劣等感を抱く人も多いのではないでしょうか。他人と接する中で精神的に落ち込まないコツを、心理カウンセラーに聞きました。

日常生活の中で、他人と自分を比較して物事を考えることはないでしょうか。中には、他人との比較によって劣等感を抱き、自己嫌悪に陥る人もいるようです。なぜ、人は他人と自分を比べるのでしょうか。心理カウンセラーの小日向るり子さんに聞きました。
「自分の成長」に焦点を当てる
Q.そもそも、人はなぜ他人と自分を比べるのでしょうか。
小日向さん「人が社会の中で生きているからです。無人島に行き、すべての情報を遮断して生きるのであれば、他人と比べない生き方が可能ですが、それは現実的には、ほぼ不可能です。社会の中で生きるためには、他者との比較の中で自分の立ち位置を確認し、少なくとも生存できるだけの調整はしていく必要があります。そうした意味で、他人と比べることは、社会で生きる人間にとっては避けられない心理といえます」
Q.他人と自分を比較して劣等感を持つ人の心理的特徴は。
小日向さん「自分を優位に立たせて物事を見るのではなく、常に、自分より優位にある他者を見て『こんな自分はダメだ』と自己否定に走る人です。自己肯定感が低いため、多くの他人が自分より優位な人であるように見えてしまうのです」
Q.他人との比較が癖になって精神的につらいと感じる人が、できるだけ比較しないようにするためには、どのようなことを意識すればいいのでしょうか。
小日向さん「他人との比較がやめられずにつらい人は『自分との比較』に焦点を当てることを意識してください。例えば、『過去に数カ月で挫折した勉強が今回は半年続いている』『以前は嫌だと思うとすぐにやめていたけど、今回はもう少し頑張るぞ』などと、過去の自分と現在の自分を比較対象にするのです。
過去や未来の自分と比較せず、『今、ここ』だけに充足を感じ続けることが幸せの本質であると言われていますが、その境地に行き着くにはハードルが高いので、まずは、他人ではなく自分に焦点を当てるというところから始めるのがおすすめです」
Q.自分に焦点を当てることで、本当に心穏やかになれるのでしょうか。
小日向さん「可能です。『比較するのは過去や未来の自分だけである』と腹をくくると、次第に他人の言動への興味が薄れてきます。他人と比較して悩んでいる自分に気付いたら、まだ自分に集中するための余力があるのだと思ってください。
また、比較だけでなく、多くの事象において『○○してはいけない』と自分に禁止令を出すと、逆にそこに神経が集中するという矛盾が生じて苦しくなってしまいます。『他人と比較してはいけない』と自分に禁止令を出すのではなく、『向き合うのは自分』と考えることも穏やかになるためのコツです」
Q.結局、「人は人、自分は自分」と割り切り、常に自分を肯定することが大切なのでしょうか。
小日向さん「それは少し違います。日常生活で他人から、『自己中が過ぎるよ』『わがままだよ』などと指摘された場合は、自分の考え方や行為が他人に不快感を与えている可能性があります。先述したように、人は社会の中で生きています。ですから、自分さえ肯定できれば他人に不快感を与えていいものではありません。
心当たりがある人は自分の行動を見直しましょう。比較するためではなく、相手をよく知るために他者に関心を向け、他者への共感能力を高めていくことが大切です」
Q.スポーツ選手など日々、競争という「比較」にさらされる分野で活躍できる人の心理的な特徴は。
小日向さん「優秀なスポーツ選手の多くは『勝ち気』という心理的特徴があります。人は興奮すると、脳からアドレナリンという快楽物資が出ます。競争に勝つことによる快楽を脳が覚えると『また、あの快感を味わいたい』という気持ちになり、さらに勝つための努力をするようになります。こうした性質を持つ人々を『勝ち気』『負けず嫌い』といいます。
ただ、何に興奮してアドレナリンが放出されるのかというのは、先天的な気質や後天的な成育歴など人それぞれです。従って、すべての人が勝負事に勝つことによって大きな快楽を感じるわけではありません。そうした意味では、競争にさらされる分野で活躍できる人は、自分に向いている職業を選択できているといえます」
(オトナンサー編集部)
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