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障害者差別解消法1年 「努力義務」の先に“差別なき社会”は見えるか

「人の価値は同じ」という価値観の共有を

 それでは、行政から履行を促す助言や指導、勧告が再三なされたにもかかわらず、一向に履行する気配が示されない場合には、どのような結果が想定されるのでしょうか。

「具体的な企業名の公表などもありえます。また、合理的配慮が受けられなかったことを理由として、障害者側から損害賠償請求を起こされる可能性もないとは言えません」

 しかし、現時点で、行政指導に従わなかった場合の措置がはっきり示されていないため、不明な部分が多く、また「公表されうるレベル」も客観的に判断できないことから確実な結果を想定することは難しいといいます。

 罰則がないという点で、義務規定と比して「弱い」ともいえる同法ですが今後、社会に根付いていくのでしょうか。

「法的拘束力が弱いと断定することはできません。障害者差別解消への意識の高まり、法規制の必要性に対する認識の深まりなどによって、事実上、強行規定に変わりうる可能性があります。同法は国連の『障害者の権利に関する条約』の締結に向けた、国内法制度の整備の一環としての立法だからです」

 西原さんは「意識の高まり」や「認識の深まり」について、以下のように話します。

「国際的な流れ、世論としかいいようがないでしょう。障害のあるなしにかかわらず、人間の価値は同じ。その当たり前の価値観を改めて、社会全体で共有していくことが大切でしょう。日本社会で当たり前のように根付いていくことを期待します」

(オトナンサー編集部)

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西原正騎(にしはら・まさき)

弁護士

1975年東京都生まれ。中央大学法学部、立教大学法科大学院卒業。2009年弁護士登録(東京弁護士会登録)。インテグラル法律事務所パートナー弁護士。NPO法人遺言相続リーガルネットワーク所属。東京弁護士会法教育委員会委員、同委員会若手会員総合支援センター委員、日弁連高齢者・障害者権利支援センター幹事、日弁連若手弁護士サポートセンター幹事。日経ビジネスコラム、その他書籍多数執筆。相続や離婚など誰もが巻き込まれる可能性のある一般民事事件から中小企業の法務、経営の相談まで幅広く取り扱っている。趣味はラグビー、ダイビング。

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