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障害者差別解消法1年 「努力義務」の先に“差別なき社会”は見えるか

障害者差別解消法が施行されて1年がたちましたが、同法は企業にとって「努力義務」にとどまります。そもそも、この努力義務とは一体、どのようなものでしょうか。その先に「差別なき社会」は見えるのでしょうか。

2016年4月の施行から1年が経過した障害者差別解消法

 2016年4月の障害者差別解消法施行から1年――。差別解消と、健常者との共生を目的とする同法は社会にどの程度浸透したのでしょうか。先日発表されたアンケートによると、盲導犬を連れた視覚障害者の6割以上が、飲食店への入店やバス・タクシーの乗車を拒否された経験があるとのこと。いまだに、差別解消とはほど遠い現実もあるようです。

 ところで、内閣府のホームページを見ると、「行政機関などには率先した取組を行うべき主体として義務を課す一方で、民間事業者に関しては努力義務を課した上で、対応指針によって自主的な取組を促す」と書かれているように、同法は、民間企業にとって「努力義務」とされています。

 オトナンサー編集部では今回、この努力義務とは何を意味しているのか、弁護士の西原正騎さんに聞きました。

努力に対する評価は人それぞれ

 西原さんはまず、前提となる「義務規定」について説明します。

「義務規定とは『~しなければならない』と決められているものを指します。たとえば、労働基準法第16条は『使用者は、労働契約の不履行について違約金を定め、又は損害賠償額を予定する契約をしてはならない』としており、これに違反した場合は罰金などを払う必要があります」

 こうした流れから、努力義務規定は「規定の対象者が、努力しなければならないこと」と理解することができます。しかし、努力義務規定の場合、それに反する行為自体を違法とする効果を持たず、罰則がありません。そのため、対象者が努力している「姿勢」さえ示せばよい、という結論も予想されますが、実際はそうではありません。

「努力しているか否かは、その人や会社の主観によって異なります。たとえば、学校の勉強があまり得意ではない子どもがいたとします。テストの結果が悪かった時に、子どもは『僕は頑張っている』と言うでしょう。しかし、親は『まだまだ努力が足りない』と判断します。人によって『努力に対する基準』に幅があることが分かるでしょう。企業側が努力をしているといっても、努力が足りないと行政が判断すれば、行政から履行を促す助言や指導、勧告がなされる可能性があります」

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西原正騎(にしはら・まさき)

弁護士

1975年東京都生まれ。中央大学法学部、立教大学法科大学院卒業。2009年弁護士登録(東京弁護士会登録)。インテグラル法律事務所パートナー弁護士。NPO法人遺言相続リーガルネットワーク所属。東京弁護士会法教育委員会委員、同委員会若手会員総合支援センター委員、日弁連高齢者・障害者権利支援センター幹事、日弁連若手弁護士サポートセンター幹事。日経ビジネスコラム、その他書籍多数執筆。相続や離婚など誰もが巻き込まれる可能性のある一般民事事件から中小企業の法務、経営の相談まで幅広く取り扱っている。趣味はラグビー、ダイビング。