「こども保険」は高齢者偏重を切り崩せるのか
「世代間格差」と呼ばれるものの正体
そもそも、現行の社会保障制度は本当に高齢者偏重なのでしょうか。ここで一つ、内閣府が出しているデータをひも解いてみます。
内閣府経済社会総合研究所の2012年の資料では、社会保障の「受給」から「負担」を差し引いた数値を「生涯純受給率」と定義し、各世代の数値を公表しています。これらの数値を比較すると、実際に「若ければ若いほど不利」、つまり高齢者が優遇されている実態が鮮明となり、政府自らその事実を認めていることになります。
生年(年齢) 生涯純受給率
1950年生まれ(67歳) +1.0%
1960年生まれ(57歳) -5.3%
1970年生まれ(47歳) -7.8%
1980年生まれ(37歳) -9.8%
1990年生まれ(27歳) -11.5%
2000年生まれ(17歳) -12.7%
2010年生まれ(7歳) -13.0%
(※内閣府経済社会総合研究所「社会保障を通じた世代別の受益と負担 2012年」)
この数値は「受け取り」と「支払い」の差とも言え、プラスは「得」、マイナスは「損」ということになります。
マイナスなので「損をしている!」と怒る方がいますが、まず大前提として、この数値がプラスになることはあり得ません。そのことを理解するには、「全体」と「個人」を分けて考える必要があります。個人レベルでは、どの世代でも「得する人」と「損する人」がいて、年金は長生きすればするほど多く受給でき、短命ならば当然少なくなります。
医療や介護も、使う人はたくさん使いますが、使わない人は全く使わずに亡くなります。そうした「個人間の損得の差」はあっても、それを承知で、「皆で支える」ことが制度の根幹であり、全体としての収支もトントンになるはずです。
つまり、理論上はプラスマイナスゼロになるのですが、現実的には、これらの制度を運営する上での人件費(公務員の給与)や設備費、システム費、事務手数料などの「コスト」があるため、それらは全体で負担する必要があります。
このコスト分だけ「少しマイナス」になるのは仕方ありませんが、実際には、若ければ若いほどマイナス幅が大きくなり、これが「世代間格差」となるのです。
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