「こども保険」は高齢者偏重を切り崩せるのか
高齢者世帯への負担はいずこに…
ポイントは1950年生まれの「+1.0%」です。
先述の通り、本来プラスはあり得ません。また、データには、1950年生まれ以降しか出ていませんが、それ以前の70、80歳代については、大幅なプラスになっていることが容易に想像できます。なぜ、資料が公表されていないのかは不思議なところで、「きっと政府にとって都合が悪いからでは」と邪推してしまいます。
60代後半以上の世代で、本来あり得ないはずの「プラス」が実現できているのは、インフレによる、数十年前との貨幣価値の違いなどの理由があるとしても、主因は「若い世代の富が使われているから」ということになります。
このように「高齢者を現役世代が支える」方法を賦課方式といい、日本をはじめとする先進諸国の社会保障制度はどこも同じ形態を取っています。その意味では、若い世代の富を使うこと自体は当然なのですが、日本は急激な少子高齢化の影響で極めてバランスが悪く、「使われ過ぎている」ことが問題の本質なのです。
本来は、高齢者世代でも「ちょっとマイナス」でないとおかしな話で、せめて0%程度で収めてほしいところです。
こども保険についても、本来望まれているのは、高齢者への過剰な医療費などの給付を減らし、資産を持つ高齢者世帯への負担を増やすこと、そして、それらを財源として子供への給付を実現すること、のはずです。
そんなことは、政治家であれば誰もがわかっているはずなのに、誰も言い出せない――。自民党の次世代エースと目される小泉進次郎氏をもってしても、そのことに触れられず、折衷案として社会保険料の上乗せしか「提言」できないことに、この国の将来を憂わずにはいられません。
(株式会社あおばコンサルティング代表取締役 加藤圭祐)
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