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ひきこもりの子の国民年金保険料を父親が拒否、「未納」から救う手は?

20歳になると、国民年金への加入が義務付けられますが、ひきこもりの子どもの年金保険料の支払いを親が拒否した場合は、どうすればよいのでしょうか。

ひきこもりの子の年金保険料、未納は望ましくない
ひきこもりの子の年金保険料、未納は望ましくない

 ひきこもりのお子さんが20歳になると、たとえ無職でも国民年金に加入することになります。保険料は親御さんが代わりに支払っていたり、免除や猶予をしていたりするケースがほとんどです。

 しかし、中には「未納状態のまま放っている」というご家庭も見受けられます。どんな事情であれ、未納のままにしておくのは望ましいことではありません。ご家庭の状況を踏まえた上で、適切な手続きをしておきたいところです。

納付猶予では将来が不安

 筆者は、ひきこもりのお子さんを持つご家族向けの講演会で話をする仕事もしています。その内容は主にお金に関することで、お子さんの国民年金のお話もしています。そんな中、講演会後、ひきこもりの息子さんがいる母親から個別に質問を受けました。

「長男は今年で20歳になりました。しかし、主人は『国民年金の保険料は支払わない』と言っており、どうしたものかと悩んでいます…」

「なるほど、それは心配ですね。免除や納付猶予の手続きはしていないのですか?」

「今のところ何もしていません。主人は会社員で所得があるので、免除申請は通らないと思います。かといって、私は専業主婦なのでお金を捻出することはできず、保険料を支払うことは難しいです。そうなると納付猶予になると思います。ですが、講演会で『納付猶予では、将来の国民年金(老齢基礎年金)がもらえない』と知り、心配になってしまいました」

「そうですね。納付猶予は毎月の保険料が0円になりますが、将来もらえる国民年金も0円のままです。後から納付しない限り国民年金はもらえません」

「納付猶予以外に何か方法はないのでしょうか?」

 母親は、すがるような表情でそう訴えかけてきました。

親子で世帯分離することも検討

 保険料の免除が認められるためには、本人、その配偶者、世帯主の所得が一定額以下になっている必要があります。今回のケースでは、長男と父親の所得が関係してきます。長男は無職で収入がありませんが、父親は会社員で所得が一定額以上あるので免除は認められないでしょう。そこで、筆者は次のような提案をしました。

「親子で世帯分離をし、長男ご自身が世帯主になります。そうすることで、ご長男の所得だけで免除の審査が行われるようになります」

「なるほど。そういう方法もあるのですね。いつの分から免除が反映されるのですか?」

「世帯分離をした月からです。仮に2020年2月に世帯分離をしたとすると、2月分から全額免除に該当するでしょう。ただし、20歳になった日から2020年1月分まではお父さまの所得も関係してしまうので、その期間は免除ではなく納付猶予になります」

 筆者は続けました。

「全額免除の場合、毎月の保険料は0円になりますが、年金は年額で約800円ずつ増えていきます。仮に、ご長男が60歳まで全額免除をしたとすると年額で約38万円。これに老齢年金生活者支援給付金を足します。すると月額換算で約4万2000円になります」

「納付猶予とは全然違いますね。どこで手続きするのですか?」

「世帯分離の手続きは市区町村役場で行います。免除申請は市区町村役場の年金課、または年金事務所の国民年金課が担当しています。手続きに必要なものは、事前に電話などで問い合わせるようにしてください」

「分かりました。世帯分離をすれば、取りあえず安心できそうですね」

 母親はほっと胸をなでおろしました。しかし、世帯分離をすると別の問題が発生してしまいます。筆者はそれを母親に伝えることにしました。

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浜田裕也(はまだ・ゆうや)

社会保険労務士、ファイナンシャルプランナー

2011年7月に発行された内閣府ひきこもり支援者読本「第5章 親が高齢化、死亡した場合のための備え」を共同執筆。親族がひきこもり経験者であったことから、社会貢献の一環としてひきこもり支援にも携わるようになる。ひきこもりの子どもを持つ家族の相談には、ファイナンシャルプランナーとして生活設計を立てるだけでなく、社会保険労務士として、利用できる社会保障制度の検討もするなど、双方の視点からのアドバイスを常に心がけている。ひきこもりの子どもに限らず、障がいのある子ども、ニートやフリーターの子どもを持つ家庭の生活設計の相談を受ける「働けない子どものお金を考える会」メンバーでもある。

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