実は先進国でも「祝日」が多い日本、なぜ“働き過ぎ”と言われる?
今年12月23日は31年ぶりに平日となりますが、ネット上では「え! 祝日じゃないの?」という声もあります。日本の祝日、国際的には多いのですが…。

今年の12月23日は31年ぶりに“平日”ですが、ネット上では「え! 祝日じゃないの?」という声もあります。新天皇即位に伴い、「天皇誕生日」が2月23日となることによるもので、実際の増減はないのですが、クリスマスの時季であるためか、残念に思う人も多いようです。
ところで、各国の「祝日」について調べてみると、「国民の祝日に関する法律」で定められた日本の祝日は「16日」で、フランスの「11日」(日本貿易振興機構資料より、以下同)、米国の「10日」、ドイツの「9日」、英国(イングランド)の「8日」などより多く、先進国ではかなり多い方ですが、一方で「日本人は働き過ぎ」とされ、休みを取るように言われる人も多いのが現実です。
なぜ、祝日が多いのに「働き過ぎ」なのでしょうか。社会保険労務士の木村政美さんに聞きました。
低い有給休暇取得率
Q.そもそも、日本で祝日が多いのはなぜでしょうか。
木村さん「『国民の祝日に関する法律』1条には『自由と平和を求めてやまない日本国民は、美しい風習を育てつつ、よりよき社会、より豊かな生活を築きあげるために、ここに国民こぞって祝い、感謝し、または記念する日を定め…』と祝日を定める理由を挙げています。しかし、昨今では、祝日の意義が労働者の長時間労働を是正するための施策の一つとなっています。
会社側は今年4月から、該当する従業員について年間5日の有給休暇を取得させることが義務になりましたが、これまでの慣習や人手不足の影響などもあり、有給休暇取得率の向上が難しい会社も多いのが現状です。そのため、国が祝日を増やすことで強制的に休みを取らせているという考え方もできるでしょう」
Q.祝日が多いのに、日本人があまり休んでいないという印象があるのはなぜでしょうか。
木村さん「まず、理由として挙げられるのが、企業における有給休暇の取得率が国全体で約50%で、諸外国よりも低いことです。有給休暇の取得は本来、労働者に与えられた権利であり、国も働き方改革の一環として有給休暇の取得率を上げるための施策を行っています。しかし、上司や周囲から嫌な顔をされたり、自分自身が罪悪感を持ったり、仕事が忙しくて休めなかったりして、なかなか取得率が改善されていません。
休暇は自分自身の働き方に合わせて自主的に取得するものであり、国や会社がお仕着せで決めるものではありません。そのためには、祝日を増やすより、有給休暇の取得率を上げるのが先決であり、さらには、従業員が自分の都合に合わせてフレキシブルに有給を取得できるよう、会社の環境を変えていくことが重要なのですが、現実にはそこまで至っていない企業が多く、休んでいない印象があるのでしょう」
Q.祝日以外にも、年末年始休暇やお盆休みもありますが、それらを含めても「働き過ぎ」の印象があります。
木村さん「以前から『日本人は働きすぎだ』と言われていますが、経済協力開発機構(OECD)の2017年労働時間調査でみると、加盟国全体の年平均1759時間に対して、日本人は1710時間で統計上は平均を下回っています。しかし、この数値にはサービス残業が含まれておらず、さらに、男女の労働時間が混在しているため(女性はパートなど短時間労働者が多い)実態を表していません。
実際は時間外労働やサービス残業で、統計上の時間より長時間働いている労働者が多いのではないでしょうか。仕事が終わらずに祝日や休暇中に出勤している社員がいることも考えられます。残業が多い理由の一つとして、諸外国と比較した労働者の生産性の低さが考えられます。その原因としては、各人の仕事の範囲が曖昧で、担当外の仕事まで抱え込みやすいことなどが挙げられます」
Q.祝日が多いこと、年末年始やお盆休暇があることは、日本人にとってよいことなのでしょうか。
木村さん「祝日や年末年始、お盆休暇など休日が多いことは、仕事から離れてプライベートな時間を充実させることができ、ひいては国が推奨するワーク・ライフ・バランスの促進にもつながりますが、半面、休日が増えれば次の弊害も考えられます。
(1)業務量が減らない限り平日の仕事が忙しくなり、その結果、社員が疲弊し、その状態で有給休暇を取得すると休暇明けの業務量がますます増えてしまうので、有給の取りづらさにつながる(2)特に、サービス業では、祝日や年末年始、お盆などの休日が『書き入れ時』の業界や業種も多く、一斉休日の恩恵を受けづらい(3)非正規社員など、日給月給や時給で給料を計算されている労働者が増加しており、休日が増えればその分給料が減り、生活に支障が出る」
Q.生まれて初めて「平日の12月23日」を経験する人もいます。仮定の話ですが、祝日と勘違いして出社しなかったら、どうなるでしょうか。また、会社は12月23日が出勤日であることを従業員に周知する必要がありますか。
木村さん「12月23日は、2019年のカレンダーでは平日扱いです。本来の会社の出勤日であれば、同僚や上司から連絡が来て出社した場合は遅刻扱い、出社がなければ欠勤扱いとなります。有給休暇処理するかどうかは、会社と本人の話し合いによります。
12月23日の扱いに関しては、会社や上司が事前に社員に伝えたり、社員同士で確認し合ったりすることが多いと思いますが、もし社内で周知されない場合でも、自分から上司に確認することが必要でしょう」
(オトナンサー編集部)
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