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コロナだから…業績悪化で「試用期間」終了後に解雇、認められる? どう自衛?【#コロナとどう暮らす】

4月に新社会人となり、「試用期間」が6月末で終了する人も多いと思います。もし、「コロナ不況だから、試用期間が終わったら解雇」と言われたら、どうしたらいいのでしょうか。

コロナ理由に「試用期間が終わったら解雇」と言われたら…?
コロナ理由に「試用期間が終わったら解雇」と言われたら…?

 4月1日に新社会人となった人の多くは現在、「試用期間」として働いていると思います。企業の多くは試用期間を3カ月に設定しており、その場合は6月末で終了します。例年であれば、よほどの問題を起こさない限り本採用となって、その会社で働き続けることになりますが、今年は新型コロナウイルスの影響による不況で「試用期間終了後に本採用せず、解雇する」という事例が相次ぐことも懸念されます。

 もし、「コロナ不況だから、試用期間が終わったら解雇」と言われたら、どうしたらいいのでしょうか。グラディアトル法律事務所の清水祐太郎弁護士に聞きました。

従業員としての適格性を判断

Q.まず、試用期間について概要を教えてください。

清水さん「一般的な試用期間は、実際に働いている様子から、従業員として適切かどうかを判断し、企業が『従業員であることが不適切だ』と判断すれば、労働契約を解約することができる期間と位置付けられています。法的には『解約権留保付労働契約』における、解約権を留保されている期間とされます。

法的には試用期間の長さについての制限は設けられていませんが、一般的には3カ月から6カ月とされることが多いようです。給料や労働条件は本採用と同じ場合も多いですが、『研修期間』などの名目で、本採用以降よりも給料が少ない場合もあります」

Q.試用期間終了後に本採用されないのは、どんなケースでしょうか。

清水さん「採用面接時に企業が知ることができなかった事情が試用期間中に判明した場合、その事情により、『雇用し続けることが適当でない』と企業が判断した場合には、本採用を拒否されることがあります。

例えば、採用面接時には『特別なスキルがある』と聞いていたにもかかわらず、実はなかったと判明した場合や、教育や指導をしたにもかかわらず、他の従業員に比べて大幅に能力が劣っていて、改善の余地がない場合には、本採用を拒否されることがあり得ます」

Q.試用期間終了後に本採用しないのは、法的には解雇と同じ扱いになるのでしょうか。

清水さん「法的には解雇と同じ扱いとなります。ただし、試用期間が始まって14日以内の場合、『解雇予告手当』については、通常の解雇と少し違いがあります。通常の解雇では、少なくとも30日以上前に解雇予告をするか、解雇予告手当を支払わなければなりませんが、試用期間開始から14日以内の人に対しては解雇予告をせずともよく、解雇予告手当の支払いも必要ありません」

Q.試用期間中や終了時の解雇は、本採用後の解雇よりハードルが低いのでしょうか。

清水さん「試用期間は新入社員の適格性を判断するためのものであり、試用期間中や終了時の解雇は本採用後の解雇よりハードルが低いと言われています。本採用後の解雇については、労働契約法16条で『解雇は、客観的に合理的な理由を欠き、社会通念上相当であると認められない場合は、その権利を濫用したものとして、無効とする』とされています。

それに対して、試用期間中の本採用拒否については、1973年に出された最高裁判決で『留保解約権に基づく解雇(注:本採用拒否のこと)は、これを通常の解雇と全く同一に論ずることはできず、前者については、後者の場合よりも広い範囲における解雇の自由が認められてしかるべきものといわなければならない』と判断されており、少し解雇のハードルが下げられています。

ただし、本採用を拒否するためには、『本採用を拒否するのが妥当だ』という客観的で具体的な根拠を会社が提示しなければなりません。会社としては、どのようなことを期待して採用したのか、その新入社員がどうして期待外れであったのかについて、客観的に見ても分かる証拠を提示する必要があります。

そのため、実際のところは、本採用後の解雇とそこまでハードルが変わらないという印象です」

Q.企業側は、業績の悪化や景気の悪化を本採用拒否の理由にできるのでしょうか。

清水さん「試用期間は従業員の適格性を判断するためのものであり、業績や景気の悪化を理由に本採用を拒否することはできません。

しかし、試用期間中の従業員も従業員の一人には違いないので、整理解雇(リストラ)として解雇することは可能です。ただし、新入社員だからといって、簡単に整理解雇できるわけではありません。新入社員についても、これから能力が上がっていくという見込みで、整理解雇する対象の社員として適切なのか十分に検討しなければなりません。

なお、整理解雇を行う際は少なくとも(1)会社や事業存続のため人員削減が必要(2)解雇を回避できるよう努力を尽くした(3)解雇する社員の選定が妥当(4)解雇手続きが妥当――という4つの要件が必要です」

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清水祐太郎(しみず・ゆうたろう)

弁護士

弁護士法人グラディアトル法律事務所所属。1993年、新潟県生まれ。労働事件、消費者被害、誹謗(ひぼう)中傷、企業間トラブルなど、多岐にわたる分野を手掛ける。依頼者の悩みを解決するため、多彩な手段を提案するよう心掛けている。労働問題に関する相談は(https://labor.gladiator.jp/)。

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