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乳がん検診「マンモグラフィー」「乳房超音波検査」の違いは? メリット/デメリット解説

10月は「ピンクリボン月間」。乳がん検診の検査方法「マンモグラフィー」「乳房超音波検査」の違いを医師に聞きました。

ピンクリボン月間にちなんだライトアップに彩られた東京スカイツリー
ピンクリボン月間にちなんだライトアップに彩られた東京スカイツリー

 毎年10月は「ピンクリボン月間」です。「乳がんで悲しむ人を一人でも減らしたい」との思いから、乳がんの早期発見・早期治療を啓発する取り組みが各地で行われています。乳がん検診の検査方法には「マンモグラフィー」や「乳房超音波検査(乳腺エコー)」がありますが、「どちらを受ければよいのか分からない」「両方とも受けてもいいの?」「生理中でも大丈夫かな」「20代でマンモグラフィーは早いですか?」など、検査の内容や選択に悩む女性は多いようです。

 年代問わず、女性が正しく理解しておきたい「乳がん検診」のさまざまな疑問について、産婦人科医の尾西芳子さんに聞きました。

30~64歳女性の死因第1位

Q.まず、乳がんについて教えてください。

尾西さん「乳がんは乳房にできる悪性の腫瘍で、女性ホルモン(特にエストロゲン)に反応して大きくなる性質があります。そのため、初潮が早い▽妊娠・授乳経験がない▽高齢出産の経験者など、エストロゲンにさらされる期間が長い人ほど乳がんになりやすいです。また、脂肪の多い食事でリスクが上がるといわれており、近年の高齢出産の増加や食の欧米化により、日本でもなる人が増えています。

年間約9万人の日本人女性が乳がんにかかっており、女性が一生のうちにかかるがんとしては、最も多いがんとなっています。また2018年には、乳がんによって亡くなった人の数が1万4285人に上り、30歳から64歳までの女性の死亡原因1位になっています」

Q.「マンモグラフィー」「乳房超音波検査(乳腺エコー)」とは、それぞれどのような検診方法でしょうか。

尾西さん「『マンモグラフィー』は乳房のエックス線検査です。乳房は厚みがあるので、重なっている部分にがんがあると見えにくいです。そのため、乳房を専用のプレートで挟み、2方向から撮影します。『超音波検査』は、あおむけになり、超音波を発生・探知する『超音波プローブ』を乳房に当て、動かしながら乳房を満遍なく診る検査です。

マンモグラフィーと超音波検査にはそれぞれ、得意・不得意な病変があります。例えば、乳腺・乳管に硬い石のようなものが沈着した『石灰化』という状態は、マンモグラフィーの方が発見しやすいです。石灰化はがんの初期症状として現れることがありますが、がんではない良性のケースもあるため、その分布や形で良性/悪性を判断します。この病変は超音波検査では発見しにくいため、マンモグラフィーの方が適しています。

一方で、乳腺が分厚い人の場合、マンモグラフィーではしこりが写りにくいのに対して、超音波検査では乳腺が分厚くても、しこりを腫瘤(しゅりゅう)として見つけることができます。また、しこりとして触れないほどの小さな腫瘤も、超音波検査では見つけることが可能です」

Q.これらの検診方法に、メリットやデメリットはありますか。

尾西さん「マンモグラフィーはエックス線写真が残るので、後から他の医師が確認したり、過去の検診結果を確認しやすかったりするメリットがあります。また、医師や技師の技量にかかわらず一定の精度が保たれます。デメリットとしては放射線被ばくがありますが、被ばく量は東京~ニューヨーク間を飛行機で移動する際に受ける、宇宙からの自然の放射線量とほぼ同じといわれています。

超音波検査は時間がかかることや、医師や技師の技量によって精度にばらつきが出ること、後から検診結果を見返すのが困難なことがデメリットですが、放射線被ばくがないこと、乳腺の分厚い人でも病変の描出が可能なことはメリットです」

Q.乳がん検診の際、痛みを感じることはあるのでしょうか。

尾西さん「マンモグラフィーは乳房をプレートで挟むため、痛みを感じる人がいます。超音波検査は、痛みは伴いませんが、プローブを動かして隅から隅まで見ていくので、くすぐったく感じる人がいます」

Q.乳がん検診のおおむねの費用を教えてください。

尾西さん「マンモグラフィーと超音波検査は、人間ドックなどで受ける場合は自費となり、それぞれ5000~8000円程度のところが多いです。症状がある場合は保険適応となるため、2500円程度までの自己負担で受けることができます。保険適応でない場合でも、40歳以上の人は市区町村で2年に1度補助が出ることがあり、その場合は、市区町村によって異なりますが最高で3000円程度の自己負担になります」

Q.乳がん検診が推奨される年齢(年代)は。

尾西さん「40代に入ったら、1年に1回マンモグラフィーを受診することを厚生労働省が推奨しています。20代・30代は特に決まってはいませんが、若い人の発症が増加していることを考えると、定期的に検診を受けるのがおすすめです。ただし、20代・30代は乳腺がまだ発達しており、マンモグラフィーだと病変が見つかりにくいため、超音波検査の方が適しています。母親や祖母など、女性の親族に乳がんの人がいる場合は20代から検診を受けましょう。

また、どの年代でも月に1度は、しこりの有無などのセルフチェックを行うことが大切です」

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尾西芳子(おにし・よしこ)

産婦人科医(神谷町WGレディースクリニック院長)

2005年神戸大学国際文化学部卒業、山口大学医学部学士編入学。2009年山口大学医学部卒業。東京慈恵会医科大学附属病院研修医、日本赤十字社医療センター産婦人科、済生会中津病院産婦人科などを経て、現在は「どんな小さな不調でも相談に来てほしい」と、女性の全ての悩みに応えられるかかりつけ医として、都内の産婦人科クリニックに勤務。産科・婦人科医の立場から、働く女性や管理職の男性に向けた企業研修を行っているほか、モデル経験があり、美と健康に関する知識も豊富。日本産科婦人科学会会員、日本女性医学学会会員、日本産婦人科乳腺学会会員。オフィシャルブログ(http://ameblo.jp/yoshiko-onishi/)。

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