節分の豆まきに「殻付き落花生」が使われるのはなぜか
殻付きのエリアは今でも拡大している?
大豆ではなく殻付きが使われる理由について、専門家はどのように考えるのでしょうか。北海道博物館学芸員で、2013年に「なにこれ!? 北海道学」(北海道新聞社)の著書がある池田貴夫さん(文化人類学・民俗学)は「拾うのが楽」などの説に懐疑的です。
「2001年、2013年と殻付きに関する論文を書きましたが、大豆から殻付きに切り替わった本当の理由は、まだ分かっていません。現在も調査を進めており、全国を巡った経験上、殻付きを撒く地域は今でも拡大していると感じます」
「雪の中でも拾いやすいからとか、北海道民は物事を合理的に考えるから、などの理由は後付けに過ぎず、学術的な根拠はありません。習慣が広まった要因の一つとして存在したのかもしれませんが、確実な話ではありません」
「そのような理屈で理解しようとするのであれば、落花生の名産地である千葉県でも同様の習慣が根付いているはずですが、そういった事実はありませんし、そもそも、習慣のある九州地方の一部は、降雪地帯ですらないですからね。私自身研究を通じて、殻付きを撒く習慣と気候との関係性は薄いと思っています」
「人々の生活文化の移り変わりは公的記録に残りにくいため、彼らが自らの意思で大豆を撒くのをやめ、殻付きに移行したという証拠がなければ、結論付けられないのです。一般的に言われている昭和30年代よりも早く、昭和20年代後半にはすでに習慣があったという説もあります」
「もしかしたら、現在の恵方巻ブームと同じように、習慣のある各地域で“仕掛け人”がいたのかもしれません。しかし、いくらうまく仕掛けても地域の人々がそれを受け入れ、習慣としなければ長続きしません。まだ何とも言えないのが現状で、私もこれから数十年かけて研究を続けていきます」
節分から見えてくるかもしれない「日本」、その文化の奥深さに改めて思いをはせる、2月3日です。
(オトナンサー編集部)
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