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ケチるとビジネス失敗? 中国における「接待」、どんなルールやマナーがある?

料理は全部食べないのが正解

Q.中国では、接待時に食べきれない量の料理がテーブルに並べられると聞いたことがあります。なぜでしょうか。

青樹さん「料理が足りないと相手に失礼だからです。日本人は、出された料理は全部食べなければと思いますよね。中国では、出した料理をすべて食べきると、『足りなかったのだ』と判断されます。あらかじめ料理をたくさん並べるのはそのためです。

20年以上前ですが、こうした習慣は食品ロスが非常に多くなると中国政府が問題視しました。そこで、政府が飲食店でのテークアウトを推奨するようになり、現在は中国国内のほぼすべての飲食店で、残った料理を持ち帰ることができます。山のように料理を注文しても、余った場合は店がテークアウト用の容器に入れてくれます。例えば、火鍋店に行くと、肉や野菜類に至るまで、余ったものはすべて持ち帰ることができます。

日本のように安全性を追求した結果として食品ロスが増加することに比べたら、食べ残した料理をテークアウトできる中国の取り組みは、とてもよいと思います」

Q.青樹さんが中国の食文化で驚いたことは。

青樹さん「面白いコンセプトのレストランが多いことです。忘れられないのが『離婚レストラン』『文革レストラン』ですね。『離婚レストラン』は20年ほど前に登場しましたが、あまり長く続きませんでした。離婚する夫婦が最後の夕食会をするためのレストランです。メニューが工夫されていて、酸っぱい味や甘い味、苦い味や辛い味などさまざまな味付けの料理を用意していました。

つまり、『人生は楽あれば苦ありです、だから離婚も考え直しませんか』と提案し、『それでも駄目なら、今日は平和裏に食事して楽しく別れてくださいね』ということになります。
この店は有名な公園の湖のほとりにあったため、レストランに入店する際に目立ちすぎるのが欠点でした」

Q.「文革レストラン」とは。

青樹さん「文化大革命の時代の料理を再現するレストランです。あの時代は、都会人が教育の機会を奪われて、農村に追いやられました。農村で労働をしながら毛沢東思想を学ぶ革命でしたが、当時の農村で食べられていた貧しい料理が提供されます。約20年前に1回だけ連れられて行ったことがありますが、レストランとは思えないような貧しい造りの店でした。炒めた野草、トウモロコシのマントウ、中にはアリの炒めものもあって、私は無理でした(笑)

主な客は、自家用車を所有し、当時はまだ珍しかった携帯電話を持ったリッチなビジネスマンでした。今は豊かな生活を送っているけれども、貧しい時代の食事を食べながら、『昔を懐かしみつつ今の幸福をかみしめる』というものです。北京にもまだあります」

Q.発想が奇抜ですね。

青樹さん「ただ、この発想が中国人だと思いました。日本人はまず思いつきません。現在の中国で、短期間でもうけを出せるのは飲食業だといわれています。中国人は、お金もうけに頭を働かせる人たちなのでそうした姿勢がレストランに反映されていると思います。

そもそも、中国人は中華人民共和国建国以来、おなかいっぱい食べられることを目標に頑張ってきました。経済が発展し、おなかが満たされると、今度はよりおいしい料理を提供するレストラン、面白いレストランに興味が移ります。その結果、食にかけるお金が増え、中国国内では飲食代が高くなりました。彼らが日本に来て一番驚くのが、中国に比べ物価が安いことで、特にレストランの飲食代の安さに驚きます。

中国国内には他にも、清の時代の伝統的な様式の邸宅を模したレストラン、胡同(フートン)、つまり、路地の奥にあるレストランなど面白い店がたくさんあります。外国人が行っても楽しめると思いますよ」

(オトナンサー編集部)

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青樹明子(あおき・あきこ)

ノンフィクション作家・中国社会情勢専門家

早稲田大学第一文学部卒、早稲田大学大学院アジア太平洋研究科修士課程修了。大学卒業後、テレビ構成作家や舞台脚本家などを経て企画編集事務所を設立し、業務の傍らノンフィクションライターとして世界数十カ国を取材する。テーマは「海外・日本企業ビジネス最前線」など。1995年から2年間、北京師範大学、北京語言文化大学に留学し、1998年から中国国際放送局で北京向け日本語放送のキャスターを務める。2016年6月から公益財団法人日中友好会館理事。著書に「中国人の頭の中」「『小皇帝』世代の中国」「日中ビジネス摩擦」など。近著に「中国人の『財布の中身』」(詩想社新書)がある。

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