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“ついでに”かかってよい病気ではない、おたふくかぜの恐ろしさ【ぼくの小児クリニックにようこそ】

合併症で難聴、聴力回復しない恐れ

 私は再度、お子さんを診察しました。

「上を向いてごらん。次に前を向いて。今度は下。あごを胸に付けてごらん」

 お子さんは痛みを訴えて、泣き出してしまいました。

「じゃあ、今度はベッドに横になって」

 お子さんの頭を持ち上げてみました。首が硬くなって曲がりません。泣いてばかりいます。

「お母さん、これはおたふくかぜによる髄膜炎ですね。入院しましょう」

 お子さんは、総合病院の小児科に入院し、時間の経過と共に髄膜炎も自然に快方へと向かいました。結局、幸運なことに、下の子にはおたふくかぜはうつりませんでした。そして、それから1カ月くらいして、ワクチンを受けに来てくれました。

 おたふくかぜの合併症は、膵炎や髄膜炎のほかに精巣炎や卵巣炎もあります。そして、気を付けなければいけないのが、難聴です。多くの場合は片側だけなのですが、いったん聴力を失うと回復は望めません。

 おたふくかぜによる難聴は、小児科の医学書を開くと「1万人に1人くらい」と書いてあります。しかし、そんなことはないと耳鼻科の先生は言います。はるかに頻度は高く、「100~200人に1人くらいは難聴になっている」と千葉県こども病院の耳鼻科の先生が教えてくれました。

 確かに、片側だけの難聴だと親も気付きにくく、その結果、小児科医も把握できていない可能性があります。しかし、耳鼻科の先生は、就学時検診が終わる時期にかなり多くの難聴の子を診るそうです。最近になって、小児科医の間でも難聴の子が多いという認識が広まっています。

 おたふくかぜは“ついでに”かかってもいいような病気ではありません。ワクチンを1歳と5歳のときに接種して、かからないようにしてくださいね。

(小児外科医・作家 松永正訓)

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松永正訓(まつなが・ただし)

小児外科医、作家

1961年東京都生まれ。1987年千葉大学医学部を卒業し、小児外科医となる。日本小児外科学会・会長特別表彰(1991年)など受賞歴多数。2006年より「松永クリニック小児科・小児外科」院長。「運命の子 トリソミー 短命という定めの男の子を授かった家族の物語」で2013年、第20回小学館ノンフィクション大賞を受賞。著書に「発達障害に生まれて 自閉症児と母の17年」(中央公論新社)などがある。

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