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ひきこもりの34歳長男を抱える家族、両親死後の不安を“月3万円”の貯蓄で払拭

「お金」の不安と向き合った長男の決断

 見通しを立てた後、ご家族とお話しながら「今後収入を増やせないか」「支出を減らせないか」などの検討をしていきました。すると、ご長男がぽつりとつぶやきました。

「やっぱり仕事をして少しでも稼げるようになりたいです…」

 ご長男は高校生の時に不登校となり、その後、自宅にひきこもるようになりました。今まで、アルバイトなどの仕事をしたことはないそうです。

 そこで、筆者は、月に数万円でも見通しは大きく改善するというお話をしてみました。

「仮に、1年後の35歳から仕事を始めて、60歳になるまで月3万円を貯蓄に回したとすると、3万円×12カ月×25年=900万円になります。親御さんが残せそうなお金と合わせれば、取りあえずの見通しは立ちそうです。ご長男に自信がついてもう少し稼げるようになれば、見通しはさらに改善しますよ」

 すると、ご長男は胸の内を語ってくれました。

「月3万円でもいいんですね。びっくりしました。今までは仕事というと『月20万円くらい稼げるようにならないとダメなんじゃないか』というイメージが頭の中にありました。それが自分にはものすごいプレッシャーで『そんなの無理』といつも思っていました。だから、何をしても無駄だと勝手に諦めていました。でも、今のお話で『何とかなりそうだ』という気持ちも少しは出てきました」

「仕事を始めることに自信がない場合、若者サポートステーションなど就労を支援してくれる施設もあります。最初は小さな一歩でいいので、できることから始めてみてくださいね」

「はい。そうしてみます」

 ご長男は控えめな笑顔でそう言いました。

 今回のご家族のように、親子で将来のお金の見通しを共有することで、お子さんが新たな一歩を踏み出そうとするケースもあります。お金の見通しを共有する際のポイントは、将来を悲観するのではなく、できるだけ前向きになるようにご家族で話し合っていくことだと思います。

(社会保険労務士・ファイナンシャルプランナー 浜田裕也)

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浜田裕也(はまだ・ゆうや)

社会保険労務士、ファイナンシャルプランナー

2011年7月に発行された内閣府ひきこもり支援者読本「第5章 親が高齢化、死亡した場合のための備え」を共同執筆。親族がひきこもり経験者であったことから、社会貢献の一環としてひきこもり支援にも携わるようになる。ひきこもりの子どもを持つ家族の相談には、ファイナンシャルプランナーとして生活設計を立てるだけでなく、社会保険労務士として、利用できる社会保障制度の検討もするなど、双方の視点からのアドバイスを常に心がけている。ひきこもりの子どもに限らず、障がいのある子ども、ニートやフリーターの子どもを持つ家庭の生活設計の相談を受ける「働けない子どものお金を考える会」メンバーでもある。

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