原料の多くが「中国産」、漢方薬の安全に必要なこと
一部週刊誌で安全性の問題が報じられた「漢方薬」。長年、漢方に携わってきた筆者が、今後ますます漢方が身近になることを見据えて、その“未来”に警鐘を鳴らします。
東京・麻布十番に先日オープンしたフランスのオーガニックスーパー「Bio c’Bon(ビオセボン)」が大きな話題を集めているようです。
欧米に比べて日本は“オーガニック後進国”といえますが、最近では、「Bio c’Bon」の日本展開をサポートし、私たちの生活にもなじみ深い大手スーパー「イオン」をはじめ、オーガニックの食品や製品を身近に感じられるようになっています。
この「オーガニック」が定着するきっかけになったのが、2000年代初頭の「LOHAS」ブームであり、また、食品の安全を確保するために、栽培や飼育から加工・製造・流通までの過程を明示する「トレーサビリティー」への注目でした。
ただ、いくらトレーサビリティーが明確になっても、食への安全を考えるとどうしても国産のものを選びたくなるのが私たちの本音で、実際そうしている人も多いことでしょう。そこで、漢方美容家としていつも考えてしまうのが、一部週刊誌でその安全性の問題が報じられた「漢方薬」のことです。
漢方のベースは古代中国医学
漢方もオーガニック同様に、LOHASや昨今の「健康第一」のライフスタイルを実現する上で欠かせない存在です。高齢化社会の進展により、その需要は今後も着実な伸びが期待され、日常に漢方薬や薬膳料理を積極的に取り入れている人も増えています。
漢方は日本独自のものではありますが、そのベースは古代中国医学にあります。実際に病院で処方される漢方薬をはじめ、健康食品、筆者の専門である美容を目的とした製品も、それらを構成する「生薬」は9割弱が輸入品でその大半を中国産に頼っています。生薬には鉱物や動物由来のものもありますが、その多くは植物いわゆる「薬草」です。
「漢方薬」は農家が生産したり、自然に成育したりした生薬をメーカーが調達して乾燥・調合・加工しています。しかし、体によい漢方薬の大半が「中国産」と聞くと、「毒餃子事件」など過去の事件から、何となく不安を覚えてしまう人もいることでしょう。
そうした懸念材料があることを十分承知しているのが国内メーカーであり、だからこそ、私たちの不安な気持ちを払しょくするために、「トレーサビリティー」を明確にして、安全性や品質に問題のないものだけを提供しようと努めているはずでした。
今後はますます、漢方や薬膳が身近な存在になっていきます。メーカーの今まで以上の努力と、より丁寧な管理体制が漢方市場の将来を左右すると言っても過言ではないでしょう。漢方・薬膳に携わる者としてその明るい未来を期待しています。
(美容コンサルタント・韓方薬膳料理専門家 余慶尚美)
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