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池袋暴走の高齢運転者、裁判になればどんな罪に問われる? 87歳で収監可能性は?

東京・池袋の乗用車暴走事故で、運転者の高齢男性が逮捕されなかったことが話題となりました。仮に重罪が確定していたら、87歳という高齢で収監される可能性はあるのでしょうか。

現場にはゴールデンウイーク中も花が供えられていた
現場にはゴールデンウイーク中も花が供えられていた

 東京・池袋で4月、87歳の男性が運転する乗用車が暴走し、母娘が死亡、10人が重軽傷を負う事故がありました。運転していた男性も負傷して入院したようで、逮捕されなかったことが話題となりましたが、いずれは警察の取り調べを受けることになりそうです。裁判となった場合、男性はどのような罪に問われる可能性があるのでしょうか。重い罪に問われた場合、87歳という高齢で懲役刑となる可能性もあるのでしょうか。芝綜合法律事務所の牧野和夫弁護士に聞きました。

「過失運転致死傷罪」と「危険運転致死傷罪」

Q.男性は事故を起こしたことで、どのような罪に問われる可能性がありますか。

牧野さん「人身事故の刑事責任は、自動車運転処罰法に規定があります。

同法5条の『過失運転致死傷罪』(自動車の運転上必要な注意を怠り人を死傷させる行為、7年以下の懲役・禁錮または100万円以下の罰金)に当たる可能性があります。他方で、飲酒・薬物の影響により、正常な運転が困難な状態で自動車を走行させた人身事故の場合などは、同法2条・3条の『危険運転致死傷罪』(人を負傷させた場合は15年以下の懲役、人を死亡させた場合には1年以上20年以下の懲役)が適用されます。

さらに、無免許や、飲酒などの発覚を免れる行為、ひき逃げにより罪が加重されます。また、人身事故を起こした場合の『行政責任』として、自動車運転免許の点数制度において加点され、累積の点数に応じ、免許停止や免許取り消しになることがあります」

Q.民事上では、どのような責任を問われる可能性がありますか。

牧野さん「自動車の運転上、注意を怠り、他人に損害(人身損害と車両の修理費などの物的損害)を与えた場合、不法行為責任(民法709条)により損害の賠償義務を負います。人身損害は、傷害(治療費、入院費、交通費、休業損害、入通院慰謝料など)と後遺障害(後遺障害慰謝料と、逸失利益=将来得られるはずの収入、を失った損害)があります。

人身事故を起こした加害者が、加害車両の保有者でもある場合、人身損害に限定された『運行供用者責任』(自動車損害賠償保障法3条)を負います。運行供用者責任は(1)加害者の無過失(2)被害者または第三者の故意または過失(3)自動車の構造上の欠陥または機能の障害のなかったこと――の3つを証明しない限りは責任を負うため、不法行為責任より重い責任です」

Q.運転していた男性は脚が悪く、つえをついて歩いており、周囲に「車の運転をやめる」と話していたとされます。運転に不安がありながら続けていたことで、罪や責任が重くなることはあるのでしょうか。

牧野さん「不安がありながら運転を続けていたことが事実であれば、『自動車の運転上必要な注意』を怠った程度が重くなるので、罪が重く認定される可能性があります」

Q.懲役刑となった場合、87歳でも収監されるのでしょうか。

牧野さん「『高齢者だから』と特別扱いされることは、ほとんどありません。87歳でも収監されますが、収監されると2週間の教育期間があり、そこで個人の適性や状況が把握され、処遇(労働)の種類が決まります」

Q.高齢の受刑者は、どのような刑務作業をするのでしょうか。

牧野さん「教育期間で『労役遂行に問題なし』と判定されると、若い受刑者と同じ工場に配属されます。高齢者にとっては、若者たちと同じ工場に配属されるのは大変といわれています」

Q.収監中に介護が必要な状態や、療養が必要になった場合、処遇はどうなるのでしょうか。死亡した場合は。

牧野さん「体が自由に動かない、認知症、その他精神や身体の障害を持っている場合、作業が軽微な介護病棟に近い場所に行きます。服役中に病死した場合は、死刑囚の刑死の場合と同じく、遺族に連絡が入り、遺体の引き取りがあります。遺体の引き取り後は、葬儀や墓地への納骨が可能です」

Q.要介護状態になったり、死亡したりした場合、民事上の賠償責任が生じていて、まだ補償を終えていなかった場合、どうなるのでしょうか。

牧野さん「債務を負った状態で相続が開始されるので、そのまま相続すれば、相続人は残債務の支払い義務を負います。相続放棄や限定承認(プラスの遺産があった場合のみ相続する手続き)をすれば、相続人は残債務の支払い義務を負わないでしょう」

(オトナンサー編集部)

牧野和夫(まきの・かずお)

弁護士(日・米ミシガン州)・弁理士

1981年早稲田大学法学部卒、1991年ジョージタウン大学ロースクール法学修士号、1992年米ミシガン州弁護士登録、2006年弁護士・弁理士登録。いすゞ自動車課長・審議役、アップルコンピュータ法務部長、Business Software Alliance(BSA)日本代表事務局長、内閣司法制度改革推進本部法曹養成検討会委員、国士舘大学法学部教授、尚美学園大学大学院客員教授、東京理科大学大学院客員教授を歴任し、現在に至る。専門は国際取引法、知的財産権、ライセンス契約、デジタルコンテンツ、インターネット法、企業法務、製造物責任、IT法務全般、個人情報保護法、法務・知財戦略、一般民事・刑事。

コメント

1件のコメント

  1. sorui [[[[[[[[[[[[[[[[[

    しょるそうけんい「「「

    書類送検で終わろと思う。
    ただ、被害者家族には手厚い損害賠償をしてあげて欲しい。金持ちなんだもんあたりまえ。これで殺人