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子どもが家に忘れ物…親は学校に届けるべき? 届けなければ“学び”につながる?

登校した子どもが、筆箱を家に忘れていた…。そんなとき、あなたなら親としてどうしますか。

子どもが忘れ物をしていたら、親はどうする?
子どもが忘れ物をしていたら、親はどうする?

 登校した子どもが、筆箱を家に忘れていた…。そんなとき、あなたなら親としてどうしますか。筆箱を学校に届けるでしょうか。それとも届けないでしょうか。学校に連絡して「貸してやってください」と伝えるでしょうか。

 忘れ物をした子どもに対して、親はどうしたらよいのでしょうか。

親が届けると、子どもは学ばない

 まず、「忘れ物を届ける」ケースで考えてみます。忘れ物を届けると、子どもは「僕(私)が忘れても、親が届けてくれる」と誤った学習をしてしまい、翌日から「忘れ物に気を付けよう」という意識が薄らいでしまいます。また、困った事態に陥ったとき、他人に“助けを求めること”ができず、受け身になってしまう可能性もあります。つまり、忘れ物を親が届けることで子どもが学ぶことは、残念ながらほとんどありません。

 過保護・過干渉になり、あれこれ世話を焼き過ぎて、知らず知らずのうちに子どもの成長の芽を摘んでしまう。こうした「子どもの頭上をパタパタと旋回するヘリコプター」のような親のことを「ヘリコプターペアレント」といいます。

 さらに、子どもが自分の力で困難を乗り越えて、歩き出そうとしているのに「これは邪魔でしょ」「これは危ないからね」と、まるで除雪車のように雪をかき分け、子どもの通る道を平らにしていく親のことを「スノープラウペアレント」と呼ぶそうです。

失敗は成長のチャンス

 では、“あえて”忘れ物を届けないケースはどうでしょうか。

「忘れ物をして困った」という経験が、「明日から忘れないように気を付けよう」という意識の芽生えのきっかけになるかもしれません。クラスメートや先生にSOSを出したり、代用品の工夫ができるようになったりするなど、ピンチを切り抜けるために自ら考え、行動できるようになるかもしれません。また、物を貸してもらうなど、周囲から親切にされれば、「友達を大切にしよう」「今度は誰かを助けてあげよう」と思うようにもなるでしょう。

 失敗は成長のチャンスです。慌てて届けてしまう親は「子どもが困るだろう」と目先のことを心配し、“よかれと思って”行動しているのですが、実は子どものためにはなっていないのです。

 もちろん、忘れ物の内容や年齢によっては、届ける必要があるケースもあります。期日が決められた保護者向けの提出物やお弁当、薬などは「子どもが入れ忘れたから」といって届けないのは放置・放任です。

 子どもが幼児の場合も同様です。ただし、幼児であっても、ハンカチやタオル程度の場合は届けずに自分で「先生、貸してください」と言えるように教育をした方が、子どものためになります。

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立石美津子(たていし・みつこ)

子育て本著者・講演家

20年間学習塾を経営。現在は著者・講演家として活動。自閉症スペクトラム支援士。著書は「1人でできる子が育つ『テキトー母さん』のすすめ」(日本実業出版社)、「はずれ先生にあたったとき読む本」(青春出版社)、「子どもも親も幸せになる 発達障害の子の育て方」(すばる舎)、「動画でおぼえちゃうドリル 笑えるひらがな」(小学館)など多数。日本医学ジャーナリスト協会賞(2019年度)で大賞を受賞したノンフィクション作品「発達障害に生まれて 自閉症児と母の17年」(中央公論新社、小児外科医・松永正訓著)のモデルにもなっている。オフィシャルブログ(http://www.tateishi-mitsuko.com/blog/)、Voicy(https://voicy.jp/channel/4272)。

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