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しっかり寝ているのに眠い…「過眠症」の原因・症状・治療法 睡眠不足との違いは?

「毎晩しっかり眠っているのに、昼間に強い眠気を感じる」。そんな人は、単なる寝不足ではなく、「過眠症」という睡眠障害かもしれません。

突然、強い眠気に襲われる「過眠症」とは?
突然、強い眠気に襲われる「過眠症」とは?

「毎晩しっかり睡眠を取っているにもかかわらず、日中に強い眠気を感じる」。このような症状について先日、ネット上で話題になりました。昼間の活動に悪影響が生じるほど過剰な眠気が現れるケースは「過眠症」という睡眠障害が疑われ、いわゆる「睡眠不足」とは異なるようです。

 ネット上では「常に眠いんだけど病気だったらどうしよう」「夜8時間しっかり寝ているのに、昼寝しないと耐えられなくてつらい」「寝不足との違いが分からない」「どうやったら治せるの」など、さまざまな声が上がっています。過眠症の原因と症状、治療法について、睡眠総合ケアクリニック代々木の井上雄一理事長に聞きました。

社会生活に影響を及ぼす睡眠障害

Q.「過眠症」とは何でしょうか。

井上さん「適切な量の睡眠を取れているにもかかわらず、昼間に強い眠気を感じるようになり、さらには、居眠りや事故など、社会生活に影響を及ぼす症状をもたらす睡眠障害を指します。具体的には、仕事中や会議中など、眠くなってはいけない重要な場面で抑えきれないほどの眠気を感じ、パフォーマンスの低下につながるという症状が出ます。

若年期の過眠症は、脳の中枢神経の障害によって発症する『中枢性過眠症』(ナルコレプシーなど)が少なくありません。一方、中年期は『睡眠時無呼吸症候群』、睡眠中に自覚なく手足が動く『周期性四肢運動障害』、甲状腺疾患、薬物(薬剤)アレルギーの薬などにより発症するケースが見られます。高齢期以降の慢性的なケースでは、体内時計機構の障害を考慮する必要があります。また、パーキンソン病の患者も眠気症状を感じることがあります」

Q.睡眠不足のときも仕事中に眠くなることがあります。「過眠症」と「睡眠不足」は違うのでしょうか。

井上さん「違います。睡眠の役割は、心と体、そして脳の疲労を回復することですが、睡眠不足とは、それらを休ませるための睡眠量が十分でない状態のことをいいます。日々の睡眠不足が借金のように積み重なる、いわゆる『睡眠負債』は、睡眠習慣の乱れによって引き起こされ、短期間では解消しにくいものです。

夜更かしと寝不足を繰り返すと、睡眠時間帯がどんどんずれていきます。リズムの狂った状況で睡眠を取っても、疲労感が取れず、起きても『疲れたまま』の状態になりやすい『社会的時差ボケ』の状態に陥ってしまいます。

一方、過眠症は最初に述べた通り、適切な量の睡眠を適切なタイミングで取れていても、昼間に強い眠気を感じます。昼間に眠気を感じる点は同じでも、過眠症と睡眠不足はまったく違うものです。日本の場合、慢性的寝不足の人は10%程度存在します。

また、睡眠不足による眠気は寝不足を解消すれば消えますが、過眠症による眠気は『十分眠っていても眠い』という違いがあります」

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井上雄一(いのうえ・ゆういち)

医療法人社団絹和会 睡眠総合ケアクリニック代々木理事長

1956年生まれ。1982年に東京医科大学卒業、鳥取大学大学院に入学。1987年、医学博士・鳥取大学医学部神経精神医学助手。1994年、同大講師。1999年、順天堂大学医学部精神医学講師、2007年より東京医科大学精神医学講座教授(現職)。2008年より東京医科大学睡眠学講座教授(現職)。2011年より、医療法人社団絹和会理事長(現職)。日本睡眠学会・日本薬物脳波学会の理事、日本自律神経学会・日本時間生物学会・日本臨床神経生理学会などの評議員を務める。睡眠総合ケアクリニック代々木(https://www.somnology.com/)。

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