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テレビのやらせ問題 「イッテQ」などに見る演出の構造と視聴者に求めること

「ぶらり途中下車の旅」~行き先が分かっている旅番組

「ぶらり途中下車の旅」(日本テレビ系)というプチ旅行番組があります。ある鉄道路線に乗りながら、気になった駅に降り立ち、さらに気になった店や場所を訪ねるという人気のプログラム。あまたある「散歩番組」の先駆けとしても知られています。

 ただ、この番組の台本はかなり緻密に作られており、どこをどうやって曲がるか、どんなことを言うのか、ほぼ書いてあるといわれています。さらに、小日向文世さんが合間に語るナレーションがどこに入るのかも書かれてあるそうです。

「笑点」~放送作家が回答を考えるということはやらせ?

 関東地区で高視聴率を誇る長寿番組「笑点」(日本テレビ系)。出演する落語家の回答は放送作家が考えているというのは、今や誰もが知るところですが、そうしたことを感じさせない出演者たちの雰囲気のやり取りを楽しむ番組になっています。林家木久扇さんが挙手した後、「忘れちゃった」と言うのも愛嬌(あいきょう)です。

やらせかどうかは、「大きく裏切られたか」と感じるか否か

 さまざまな事例を無造作に書き連ねてきましたが、どのような感想をお持ちでしょうか。やらせと認定する最大のポイントは「信頼して見ていた気持ちを大きく傷つけられた」「大きく裏切られた」と感じるか、そして、「許せるか」どうかだと思います。

 ただし、それも、個人個人尺度が違うということです。つまり、不快感や不満といった「見えない気持ち」は、物差しでは計れません。「やらせ疑惑」が毎回議論を呼ぶのは、そうした曖昧模糊(もこ)とした事象だからといえるでしょう。

やらせの俎上にあげられた番組の悲劇

「イッテQ」騒動では、実際にオンエアを見ていない人が、「下品な番組は打ち切った方がいい」と批判する人たちの中に加わる一方、熱心なファンは「週末の楽しみを奪うな」と問題の本質をすり替えて擁護している声がSNS上で目立ちます。それを伝えるメディア側も、果たしてどこまで問題となったオンエアを見たでしょうか。

 つまり、こうした問題で起こりがちなのは、原因となったことが見過ごされ、個人的な感情をなすりつけ合うだけになってしまうことです。

 こうしてつづってきましたが、やはり結論はいつまでたっても出ません。いずれにしても大切なのは、テレビマンは日々、自分の胸に手を当て、また、わが子や親を思いながら良心の呵責(かしゃく)を感じないよう真摯(しんし)に作ること。

 そして、視聴者は、根本のシーンを見ていないのに今までのイメージだけでバッシングしたり、かばったりしないということではないでしょうか。

(芸能ライター 河瀬鷹男)

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河瀬鷹男(かわせ・たかお)

芸能ライター

キャリアスタートはテレビ番組の制作。2014年頃から、Yahoo!ニュースやLINEニュースなど多くのニュースサイトに記事を配信している。主に、芸能系の分析を得意とする。

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