オトナンサー|オトナの教養エンタメバラエティー

「ちむどんどん」「ちゅらさん」「純と愛」朝ドラの舞台に沖縄が選ばれるワケ

沖縄料理に夢をかけるヒロインの姿を描いたNHK連続テレビ小説「ちむどんどん」がスタート。「ちゅらさん」「純と愛」に続く“沖縄朝ドラ”の魅力に筆者が迫ります。

黒島結菜さん(2015年8月、時事通信フォト)
黒島結菜さん(2015年8月、時事通信フォト)

 現在放送中のNHK連続テレビ小説「ちむどんどん」は沖縄が舞台。ヒロイン・暢子を沖縄出身の黒島結菜さんが演じています。

 4月26日放送の「あさイチ」(NHK総合)では、ゲストとして同じく沖縄出身の満島真之介さんが登場。MCの3人と、いわゆる「朝ドラ受け」をやりました。

 その日の「ちむどんどん」でヒロインが食べていた沖縄名物の菓子・タンナファクルーについて「子どもの頃からたくさん食べたんで、僕はもう一生食べたくないですね」と、満島さん。「たぶん黒島結菜ちゃんも、食べたくなくて食べてると思う」と語り、笑いを誘っていました。

沖縄色全開の「ちゅらさん」

 朝ドラは全国さまざまな土地が舞台になるため、そんな郷土っぽさもその都度楽しめます。そして、沖縄が舞台の朝ドラは今回が3作目。過去2作は、2001年度前期の「ちゅらさん」と2012年度後期の「純と愛」です。

 つまり、約10年に1度のペースで舞台になっています。都道府県の数が全部で47であることを思うと、沖縄人気の高さがうかがえます。

 この過去2作のうち“沖縄朝ドラ”としての印象がより強いのは「ちゅらさん」でしょう。

 ヒロインを沖縄出身の国仲涼子さんが演じた他、その祖母役とナレーションを沖縄で長年活躍してきた平良とみさんが担当、沖縄出身のお笑いコンビ・ガレッジセールの2人もコミカルな味を添えていました。

 また、主題歌は沖縄出身のKiroroが歌い、劇中に登場するご当地キャラクター・ゴーヤーマンともども大ヒット。タイトルの「ちゅらさん」だけでなく、各週のタイトルも「美(ちゅ)ら海の約束」「古酒(くーす)で乾杯!」「命(ぬち)どぅ宝」といった、沖縄らしいもので統一されていました。

 さらに、物語全体も明るく前向きで、沖縄の自然も美しく描かれ、いわゆる「本土」の人たちが思い抱く沖縄像を体現していたのです。

 これに対し「純と愛」は、沖縄色がやや希薄です。主題歌は沖縄出身のHYでしたが、ヒロインを演じた夏菜さんは埼玉県の出身。途中で舞台が大阪に移ったり、阪神・淡路大震災の話が取り上げられたりしました。

 その分、強まっていたのが「家政婦のミタ」(日本テレビ系)などで知られる脚本家・遊川和彦さんのカラーです。ヒロインの夫となる男性が「他者の心が分かる」特殊能力の持ち主だったり、ヒロインの父が沖縄を嫌う性悪なキャラに描かれていたりしました。

 斬新さが評価されたりしたものの、朝ドラらしさ、とりわけ「ちゅらさん」のような“沖縄朝ドラ”らしさを期待していた人たちには、しっくりこなかった作品かもしれません。

“沖縄朝ドラ”の人気ぶり

 では「ちむどんどん」はどうかというと――。これまでのところ「ちゅらさん」に近い印象です。

 ヒロインの黒島さんの他、母親役の仲間由紀恵さん、ナレーションのジョン・カビラさんも沖縄出身。主題歌も、沖縄出身の三浦大知さんが歌っています。

 また、「ちむどんどん」というタイトルは「わくわくする気持ち」を意味する沖縄の方言。「ちゅらさん」の各週タイトルにも使われました。ちなみに、今回の各週タイトルはここまで「シークワーサーの少女」「別れの沖縄そば」「悩めるサーターアンダギー」と、沖縄ゆかりの食べ物つながりになっています。

 なお「ちゅらさん」の前の朝ドラは「オードリー」でした。時代劇を愛するヒロインが登場することから「ちむどんどん」の前の朝ドラ「カムカムエヴリバディ」との共通点もあります。つまり、前作からの流れという点でも「ちむどんどん」は「ちゅらさん」とちょっと似ているのです。

 そして何より、今回も明るく前向きな物語になりそうな予感がします。実は昨年3月「あさイチ」の生放送中にヒロイン役が発表された際、黒島さんがこんな話をしていました。

 地元でもある沖縄の魅力について「沖縄の人はのんびりしていて、どんなことがあっても明るく前向きに、すごい元気がある人が多い」としたうえで、「ヒロイン暢子を通して、表現して伝えていけたらいいな」と。その思いは現時点でも、十分に達成されているのではないでしょうか。

 また、この言葉からは、朝ドラにおける沖縄人気が高い理由も見えてきます。彼女の言う沖縄の県民性というものが、何かと朝ドラ向きなのです。

 例えば、朝ドラに欠かせない「愛すべきトラブルメーカー」というキャラが造形しやすいことです。「ちむどんどん」ではヒロインの兄・賢秀がそれにあたります。

 ケンカをして懲らしめた相手が、ヒロインの就職内定先である社長の息子と分かり大騒動に。このキャラを憎めないものにするうえで、世間的にもよく知られている、沖縄県人の、底抜けの人の良さが一役買うわけです。

 個人的な実感としても、沖縄を旅する際、この県民性にはいつも驚かされます。賢秀は今後、詐欺にも遭うようですが、だまされてもめげずに立ち上がるというキャラは、まさに朝ドラが好んで描くものでもあります。つまり、沖縄らしさは朝ドラらしさとも、かなり重なるのです。

【写真】仲間由紀恵さん、川口春奈さん、上白石萌歌さん…ヒロインを支える比嘉家のキャストを見る

画像ギャラリー

1 2

宝泉薫(ほうせん・かおる)

作家、芸能評論家

1964年岐阜県生まれ。岩手県在住。早大除籍後「よい子の歌謡曲」「週刊明星」「宝島30」「噂の真相」「サイゾー」などに執筆する。近著に「平成の死 追悼は生きる糧」(KKベストセラーズ)、「平成『一発屋』見聞録」(言視舎)、「あのアイドルがなぜヌードに」(文春ムック)など。

コメント