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テレビのやらせ問題 「イッテQ」などに見る演出の構造と視聴者に求めること

2018年のテレビ業界で話題をさらった「世界の果てまでイッテQ!」のやらせ疑惑騒動。年をまたぐにあたって、筆者が改めて、これまでの“やらせ”について振り返ります。

内村光良さん(Getty Images)
内村光良さん(Getty Images)

 2018年も終わろうとしていますが、今年一番のテレビ界の“不祥事”といえば、「世界の果てまでイッテQ!」(日本テレビ系)のやらせ疑惑騒動ではないでしょうか。

 改めて説明すると、今年5月20日に同番組で放送されたラオス“伝統”の「橋祭り」が、番組のために初めて企画されたものであると週刊誌がスクープ。さらに、昨年2月12日の2時間スペシャルで放映された「カリフラワー祭りinタイ」でも同様の“でっち上げ”が発覚したのです。

 こうした問題を受け、放送倫理・番組向上機構(BPO)の放送倫理検証委員会は日テレに祭り企画の報告書の提出を要求、同局は12月14日に提出しました。これによると、タイとラオス以外にも「(祭りの)説明の仕方が足りなかった」と“疑い”を指摘する事例があったといいます。BPOは、バラエティー番組の演出に対する考え方などについて同局に追加報告を求めることを決めたそうです。

 世間的にこの問題は沈静化している雰囲気もあり、視聴者もその「イッテQショック」を忘れたかのように番組を楽しんでいます。しかし、年をまたぐ前に改めて、常に議論を呼び、別の番組でも起こりうる「やらせ」について、さまざまな番組を例に挙げながら、書き残しておこうと思います。

「DASH」「ほこ×たて」の場合~手心を加えるということ

 2009年6月14日放送の「ザ!鉄腕!DASH!!」では、TOKIO元メンバーの山口達也さんが長崎へカタクチイワシを獲りにいく際、漁船の網にたくさんのイワシが獲れているように見えていましたが、そのほとんどはスタッフがスーパーで買ってきたものだったことが、地元漁師の証言で明らかになっています。その経緯は、関西大学教授・黒田勇氏の論文の中にも書かれています。

 また、やらせで打ち切りになった番組といえば、かつて、「鉄腕DASH」をしのぐほどの人気を誇っていた「ほこ×たて」(フジテレビ系)です。非難が集中したのは「ラジコンカーvs鷹」という対決。そこでは、ディレクターからラジコンを操縦する方に「鷹が逃げないようにゆっくり走ってほしい」と指示されたり、「ラジコンカーvs猿軍団」では、猿の首を釣り糸でつないで引っ張ることで、ラジコンカーを追いかけているように見せる細工をしていました。

「プロジェクトX」の場合~事実の脚色

 もう一つ、「ヤラセ」と言われやすいのが物語の「脚色」です。かつての人気番組「プロジェクトX~挑戦者たち~」(NHK)では、大阪の工業高校に赴任してきた新人教師が、荒れた校風を見かねて合唱部を創部し、やる気のない生徒たちを成長させ、コンクールで日本一を獲得するまでを描いたストーリーがオンエアされました。

 視聴者からは感動の声が殺到しましたが、実際のOBからは「ワルの生徒たちの集まりのような“問題校”ではなかった」という指摘がありました。また、この物語の中ではパトカーが学校に来たという話が描かれていましたが、これはその教師が事前のインタビューで冗談で言ったことが“事実”として紹介されてしまったようです。

 また、真実は、合唱部の創設はその教師の発案ではなく、学校側からの要請だったとのこと。NHKに削除を申し入れましたが「編集が間に合わない」と断られたといいます。

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河瀬鷹男(かわせ・たかお)

芸能ライター

キャリアスタートはテレビ番組の制作。2014年頃から、Yahoo!ニュースやLINEニュースなど多くのニュースサイトに記事を配信している。主に、芸能系の分析を得意とする。

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