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メルカリ利用制限問題で「売上金が失効した」という人現る…失効は法的に有効? 賠償請求は?

集団訴訟の呼び掛け人に聞く

 メルカリを相手取った集団訴訟を呼び掛けている、埼玉県在住の「りくっ」さんは、2017年1月からメルカリを利用。日用雑貨などを2カ月に1回程度出品し、総額4万円ほどを売り上げていたそうです。

Q.売上金が凍結になったのはいつですか。

りくっさん「2018年8月11日で9000円でした」

Q.失効した売上金がありますか。

りくっさん「10月18日に売上金振込申請期限が来て、9000円が一時失効しましたが、10月31日になって凍結が解除され、返金されました。ただ、失効した売上金の振り込み申請期限がなぜか10日間となっていて、解除後10日を過ぎたら、ポイントに換えてメルカリで買い物をするしかなくなるところでした。私は偶然、解除のメールに気付きましたが、メールに気付かない利用者もいるようです」

Q.利用制限について、何か心当たりはありますか。

りくっさん「ありません。ほとんどの被害者に共通しているのは、出品後に落札され、売上金を『出金申請』したと同時に利用制限され、凍結されている点です。理由は明かされず、『本人確認』を求められるだけです」

Q.集団訴訟の希望者は何人くらいいますか。被害の総額は。

りくっさん「一時は31人が希望し、総額約550万円でしたが、テレビ局がメルカリに直接取材した翌日、8月の凍結分がほぼ全員解除され、激減しました。現在は4人ほどで、総額は200万円程度です」

Q.集団訴訟では、具体的にどのような請求をするつもりですか。

りくっさん「請求趣旨は売上金の返金及び遅延損害金請求です。100人での提訴が目標でしたが、10人程度でもやろうと考えています。地元の弁護士に依頼する予定で、被害内容などは相談済みです」

Q.メルカリ幹部は11月8日の決算説明会で、「失効した売上金は、本人確認ができて問題ないと分かれば補填する」と発言したそうです。

りくっさん「問題の本質は『いつか売上金は返還されるという事実』ではなく、『なぜ、明確な理由も示さずに売上金を凍結し、本人確認書類を複数回にわたって求めたのか。調査の期間、内容、目的の解明。本人確認書類をどう扱い、調査後、どう処理するか』などが争点です。説明会での発言は、論点のずれた無意味なもので、そもそも私たちが知りたい情報とかけ離れたものでした。

例えば『本人確認後返金する』といいますが、本人確認調査がどの程度の期間行われるかも示していないので、1年たっても3年、10年と経過しても『調査中』とされたら取得時効も成立します。せめて時限制とし、3カ月調査して結論に達しない場合はユーザーを強制退会させ、売上金も返金するというルールを設けるなどしなくては。

現行規約はメルカリの専決権が強大すぎて、ユーザーの抗弁権さえない、一方的かつ専断的で不均衡な規約です。それが諸悪の根源であると感じます」

Q.メルカリに「これだけは言いたい」ということがあれば。

りくっさん「せめて電話対応を可能にすべきです。現在の『お問い合わせ』は、質問に回答するかどうかがメルカリ側の任意で、メルカリにとって不利益な質問は黙殺するシステムが構築されています。 ユーザーの売上金を扱う一部上場企業としての自覚と責任を全く果たしていない。顧客の声、特に自社にとって耳の痛い声を封殺することは、企業倫理に反していると抗議します」

 なお、利用制限を受けた人たちの情報交換の場をツイッター上に開設している「メルカリ運営被害者の会」は、消費生活センターに相談して直接メルカリに電話をかけ、売上金失効を回避したそうです。メルカリ幹部の「補填」発言について「一切信用できません。最初からその気があれば、サポートの回答でそう伝えればよいだけです。逃げられない回答の場で思いついたでまかせにすぎません」と断じています。

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牧野和夫(まきの・かずお)

弁護士(日・米ミシガン州)・弁理士

1981年早稲田大学法学部卒、1991年ジョージタウン大学ロースクール法学修士号、1992年米ミシガン州弁護士登録、2006年弁護士・弁理士登録。いすゞ自動車課長・審議役、アップルコンピュータ法務部長、Business Software Alliance(BSA)日本代表事務局長、内閣司法制度改革推進本部法曹養成検討会委員、国士舘大学法学部教授、尚美学園大学大学院客員教授、東京理科大学大学院客員教授を歴任し、現在に至る。専門は国際取引法、知的財産権、ライセンス契約、デジタルコンテンツ、インターネット法、企業法務、製造物責任、IT法務全般、個人情報保護法、法務・知財戦略、一般民事・刑事。

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