オトナンサー|オトナの教養エンタメバラエティー

「おビール」「お原稿」…よかれと思って過剰に使われる「お」や「ご」に専門家が抱く“違和感と懸念”

「お電話」「ご確認」など、言葉に「お」や「ご」をつけることは相手に丁寧な印象を与えます。しかし昨今、過剰に使われる「お」や「ご」に違和感を抱く人も。専門家の見解を聞きました。

過剰な「お」や「ご」に違和感を抱く人も…
過剰な「お」や「ご」に違和感を抱く人も…

「お電話ありがとうございます」「ご確認ください」。ビジネスシーンをはじめ、日常のさまざまな場面で、単語に「お」や「ご」をつけて相手に伝えることは多くあるものです。「お」や「ご」をつけた言葉は丁寧に感じられることが多い一方で、時に過剰に使われる「お」や「ご」に対して違和感を覚えたり、不自然な印象を抱いたりする人も少なくないようです。

 よかれと思って丁寧な言葉を意識したつもりが、相手に違和感を与えてしまうこともある「お」や「ご」の過剰な使用について、マナーの専門家はどう考えるのでしょうか。ヒロコマナーグループ代表で、企業価値を高める人財育成コンサルティングをはじめ、皇室のマナー解説やNHK大河ドラマ「龍馬伝」、NHKドラマ「岸辺露伴は動かない 富豪村」、同シリーズ最新作「密漁海岸」のマナー指導などでも活躍するマナーコンサルタント・西出ひろ子さんに、見解を伺いました。

「自分を良く見せるための敬語」はマナーの本質から外れている

Q.そもそも、言葉における「お」や「ご」は、どういうものなのでしょうか。

西出さん「『お』や『ご』は、語の先頭につける『接頭語(接頭辞)』と呼ばれるものです。一般的に、和語(訓読み)には『お』を、漢語(音読み)には『ご』をつけるといわれています。

ただし例外もあり、例えば『料理』は音読みですが、『ご料理』ではなく『お』をつけて『お料理』というように、美化語として使われます」

Q.「お」や「ご」をつける理由とは。

西出さん「言葉に『お』や『ご』をつけるのは、相手を敬う気持ちを敬語として表現するためといえるでしょう。その使い方には次の3つのパターンがあります」

(1)相手への敬意を示す「尊敬語」として使う
(2)自分をへりくだり、相手を立てる「謙譲語」として使う
(3)言葉自体を美しく表現する「美化語」として使う

Q.相手への敬意として使用する「お」や「ご」ですが、これらを過剰に使用することを「不自然に感じる」人も少なくないようです。これについて、どう思われますか。

西出さん「『お』や『ご』は、相手への敬意から使用することが多いわけですが、一方で、それを使用することにより、相手から『丁寧な人だ』という印象を得ることにつながることもあります。そういう理由から、『お』や『ご』を過剰に使用しているケースが散見していることは否めませんね。

過剰な使用の例としては、『おボールをお持ちいたします』『お原稿をお書きいただけますか』などです。物に対する敬意を表することは、マナーの心としては大切なことであり、決して否定することではありませんし、丁寧に伝えようとするその気持ちも分かります。しかし、『ボール』は外来語であり、外来語に『お』や『ご』は、つけないといわれています。また、『原稿』は音読みなので、本来であれば『ご』をつけるとなりますが、『ご原稿』は不自然ですし、その後に『お書き』と敬語が続いていますので、『お』や『ご』はつけない『原稿』でよいと思われます。

さらに、『公園』などの公共施設や『ビール』などの外来語から日本語化した名詞、役職などにも、一般的に『お』や『ご』はつけないとされています」

Q.「お」や「ご」をつけることで、相手から「丁寧な人だと」いう印象を得ることにつながるということですが、いい印象を持ってもらう目的で、こうした言い方をすることをどう思われますか。

西出さん「マナーの視点から言えることは、マナーは、自分のことをよく思ってもらうための型でもスキルでもないということです。

マナーは、相手を敬う、思いやる気持ちを表現し、相手にプラスの感情を与えるものです。従って、『自分を良く見せるために』という自分中心の考え方で敬語を使用することは、マナーの本質から外れていると言わざるを得ません。

丁寧な言葉遣いをすることはよいことです。しかし、最近、懸念していることがあります。それは、近年、多くの被害が出ている詐欺事件です。

詐欺メールや詐欺電話の言葉は、敬語が使用されていることが多いです。それで『丁寧だから安心して信じてしまう』という声は少なくありません。その場合に使われる敬語ですが、よく聞けばどこか不自然だったり、過剰であったりするといわれます。

事実、『警察です。ご出頭ください』という詐欺電話がかかっていた人がいらっしゃいます。この言葉遣いについて、言葉だけを見ればとても丁寧に感じ、『出頭』は音読みですから、それに『ご』をつけることに間違いはないといえます。しかし、元警視庁国際捜査官の小比類巻文隆さんいわく、『警察官は《ご出頭》という言葉は使わない。《出頭》と言う』とのことでした。

丁寧さという視点から見れば問題のない言葉でも、実際にそうした言葉遣いが一般的なのかどうか、そして丁寧な言葉も、それを使う目的に、マナー、すなわち、相手への思いやりや敬意の気持ちが伴っているかどうかが大切です」

【画像】「えっ……!」→これが《つい言ってしまいがち》な「お」「ご」の過剰な使い方です(実際の文例)

画像ギャラリー

1 2

西出ひろ子(にしで・ひろこ)

マナーコンサルタント、マナー解説者、美道家

ヒロコマナーグループ代表。一般社団法人「マナー&プロトコル・日本伝統文化普及協会」代表理事。大妻女子大学卒業後、国会議員などの秘書職を経て、マナー講師として独立。マナーの本場英国へ。オックスフォードにて、オックスフォード大学大学院遺伝子学研究者のビジネスパートナーと1999年に起業し、お互いをプラスに導くマナー論を確立させる。帰国後、名だたる企業300社以上にマナーコンサルティングなどを行い、他に類を見ない唯一無二の指導と称賛される。その実績はテレビや新聞、雑誌などで「マナー界のカリスマ」として多数紹介。「マナーの賢人」として「ソロモン流」(テレビ東京)などのドキュメンタリー番組でも報道された。NHK大河ドラマ「龍馬伝」をはじめ、NHKドラマ「岸辺露伴は動かない 富豪村」、映画「るろうに剣心 伝説の最期編」などのドラマや映画、CMのマナー指導・監修者としても活躍中。著書は28万部突破の「お仕事のマナーとコツ」(学研プラス)、16万部を超える「改訂新版 入社1年目 ビジネスマナーの教科書」(プレジデント社) など監修含め国内外で100冊以上。「10歳までに身につけたい 一生困らない子どものマナー」「かつてない結果を導く 超『接待』術」(共に青春出版社)など子どものマナーから、ビジネスマナー、テーブルマナーなどマナーのすべてに精通。ヒロコマナーグループ(http://www.hirokomanner-group.com)。
※「TPPPO」「先手必笑」「マナーコミュニケーション」「真心マナー」は西出博子の登録商標です。

西出ひろ子(にしで・ひろこ) 関連記事

もっと見る

編集部おすすめ記事

ライフ 最新記事

ライフの記事もっと見る

コメント