トキの羽根を拾って人にあげたら違法? 「初めて知った」「何の法律?」、弁護士に聞く
「トキの羽根を拾って人にあげるのは法律違反」という趣旨の投稿が話題に。弁護士に聞きました。
「落ちているトキの羽根を拾って人にあげることは法律で禁止されている」。このような内容の投稿が先日、SNS上などで話題になりました。国の特別天然記念物でもあるトキの羽根は、鮮やかで美しい薄桃色が特徴的ですが、野外に落ちている羽根を拾って販売したり、譲渡したりする行為は、相手が親族・友人などであっても法律で禁止されているそうです。
SNS上では「初めて知った」「記念に持ち帰って友達にあげちゃいそう」「何の法律なのか気になる」「もし売ったら罰せられるの?」など、さまざまな声が上がっていますが、実際のところはどうなのでしょうか。トキの羽根を巡る法的問題について、芝綜合法律事務所の牧野和夫弁護士に聞きました。
「種の保存法」で譲渡などを規制
Q.拾ったトキの羽根を販売・譲渡することについて、法律で禁止されているのは事実でしょうか。
牧野さん「事実です。トキは絶滅の恐れがあるため、『国内希少野生動植物種』に指定されており、『種の保存法』12条1項に基づき、羽根を含む個体の譲渡や売買が規制されています」
Q.拾ったトキの羽根を販売・譲渡した場合、どのようなペナルティーが科されますか。
牧野さん「例えば、ネットオークションなどで販売・購入した場合、前述の12条1項に違反したことになり、5年以下の懲役または500万円以下の罰金が科せられる可能性があります」
Q.落ちている羽根を持ち帰り、自分で所持することはどうでしょうか。また、譲渡は身内など親しい相手であっても禁止されているのでしょうか。
牧野さん「種の保存法には例外規定があります。例えば、調査・研究目的で博物館に寄贈する場合や、自分だけが個人的に楽しむ場合です。『落ちている羽根を持ち帰り、自分で所持すること』はそもそも、譲り渡しなどに当たらないため、同法違反ではありません。しかし、譲渡に関しては、たとえ家族や友人など親しい相手への無償譲渡であっても、同法違反になります」
Q.何らかの事情で持ち主が羽根を所持し続けることができなくなった場合、相続・譲渡などを行うことは可能ですか。
牧野さん「相続で、羽根などの個体が相続人に承継される場合は、規制の例外に当たるので問題ないでしょう。所有者が亡くなって、相続を受けた人が新たな所有者になるからです。ただし、生前に譲渡すると、2人の人間の間で所有権が移ることになり、やはり『譲渡』として規制され、違法となる可能性があります。前述のように博物館への寄贈などの場合は、環境省に届けるなどの手続きをすれば例外扱いされます」
Q.トキと同様に、羽根などの販売・譲渡が禁止されている生物はいますか。
牧野さん「種の保存法に基づいて、鳥類ではタンチョウ(鶴)やアホウドリなどが国内希少野生動植物種に指定されており、トキと同様に羽根などの販売・譲渡が規制されています」
Q.この法律に関連するトラブルについて、過去の事例・判例はありますか。
牧野さん「トキの羽根を譲渡するなどして、種の保存法違反に問われて逮捕されたケースはないようですが、前述通り、5年以下の懲役または500万円以下の罰金が科せられる可能性があります。トキの羽根を拾っても、自分で所持して楽しむ範囲にとどめ、くれぐれもネットなどで販売しないようにしてください」
環境省によると、もともと日本に生息していたトキは、開発によるえさ場の減少や羽根を装飾品に利用するための乱獲などで激減し、2003年に絶滅。1999年に中国から提供されたつがいから、国が佐渡トキ保護センター(新潟県)で繁殖させ、2008年、野生への放鳥を始めました。
現在は約180羽が保護センターなどで飼育され、野生では推定約370羽が生息しているそうですが、貴重な存在であることに変わりはありません。
(オトナンサー編集部)
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