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マックの「貧乏人セット」が大ヒット、両親から給料をもらい「子ども業」に専念…中国の若者が直面する“負け組人生”の実態と背景

変化する処世術

 過酷な競争を放棄し、寝そべって暮らすという「タンピン」族の出現も世間を驚かせましたが、最近では新たに「45度青年」「九十度青年」という言葉も出回ってきています。

「45度青年」というのは、競争に巻き込まれることを避けつつ、しかしすべてを放棄して完全に寝そべるのではなく、45度の姿勢を保ちながら生きていくという処世術を指しています。つまり、激しい競争からは脱落したけれど、寝そべる生活にはついていけない、ならばその中間を探ろうと、微妙なバランスの上で生きる若者たちです。

「九十度青年」は、処世術というよりも、若者たちが抱く不安な心理を表しています。大勢が集まる場、授業も含め食事会などで、角となる隅の場所に座ることを好む。つまりグループに参加することを怖がり、社交に消極的で、隅に隠れるようにして生活する若者たちが多くなっているのです。

 一方、負け組と称する人の中でも、新たな職業を見つけて、機会の到来を待つ若者もいます。

「専業子供」(「全職児女」)とは、主婦業に専念する専業主婦のように、子ども業に専念するという意味になります。「齧老」(ニート)と違うのは、両親の世話や家事などを仕事のようにこなし、両親から「給料」をもらう点です。

 中国のメディアで紹介された専業子供の1日はこんな感じです。

 朝6時に起き、家族全員の朝食を用意する。両親が仕事に出かけた後、皿洗いをし、台所を掃除し、さらに2時間かけて160平米の家を掃除する。服にアイロンをかけ、両親の靴を磨き、ペットの世話をする。祖父の車いすを押して散歩に出かけ、食材を買い、家に帰って昼食を作り、再び台所と食堂の掃除を続け、夕食用の買い物をして夕食を作る――。

 こうした家事労働に対して、両親は4000元(約8万円)の「月給」を支払うのだそうです。それまで両親は、家政婦を雇って6000元(約12万円)を支払っていたため、2000元(約4万円)も節約したことになります。

 ちなみに、この専業子供は有名大学の大学院を卒業し、某IT企業の経営部門で働いていましたが、経済の悪化でリストラされてしまいました。次の仕事が見つかるまでは、と専業子供を選んだようです。

 90年代、香港・台湾、そして大陸で流行した楽曲に「明天会更好」というのがあります。「明日は今日よりもっと良い」…90年代の中国人はこんな言葉に励まされて、経済大国の道を突き進んでいきました。明日への希望を抱ける社会へと、中国は再び舵を取る必要があるのではないでしょうか。

(ノンフィクション作家・中国社会情勢専門家 青樹明子)

【画像】「えっ……!?」→これが、実は本場中国にはない「中華料理」です

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青樹明子(あおき・あきこ)

ノンフィクション作家・中国社会情勢専門家

早稲田大学第一文学部卒、早稲田大学大学院アジア太平洋研究科修士課程修了。大学卒業後、テレビ構成作家や舞台脚本家などを経て企画編集事務所を設立し、業務の傍らノンフィクションライターとして世界数十カ国を取材する。テーマは「海外・日本企業ビジネス最前線」など。1995年から2年間、北京師範大学、北京語言文化大学に留学し、1998年から中国国際放送局で北京向け日本語放送のキャスターを務める。2016年6月から公益財団法人日中友好会館理事。著書に「中国人の頭の中」「『小皇帝』世代の中国」「日中ビジネス摩擦」「中国人の『財布の中身』」など。近著に「家計簿から見る中国 今ほんとうの姿」(日経プレミアシリーズ)がある。

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