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新宿区が“騒音”理由にデモ出発地を制限…「拡声器は迷惑」「やり過ぎ」と賛否、法的には?

騒音と表現の自由、どちらが重視される?

Q.一方で、騒音などを理由にデモ活動を制限しようとすることは「言論の自由の侵害だ」という意見もあります。

牧野さん「騒音を理由にデモ活動を制限することは、ご指摘の通り、『言論の自由』を含む『表現の自由』を制約することになります。

新宿区の場合、公園周辺町会および商店会などから、デモ制限の要望が寄せられているため、『使用できる公園は、周辺環境への影響に配慮する観点から、住宅街に加え、学校・教育施設および商店街に近接していないものとする』と、条件の見直しを図りました。この結果、デモの出発地として使用できる公園が4つから1つに限定され、憲法が保障する『表現の自由』を制限する可能性があると指摘されています。

表現の自由は、民主主義の根幹を支える非常に重要な人権であるとされているので、これを制限する法規制の基準には『二重の基準論』が用いられます。二重の基準論とは、『精神的自由を規制する立法の合憲性は、経済的自由を規制する立法よりも特に厳しい基準によって審査されなくてはならない』という理論です。この理論に基づき、表現の自由の制限には、たとえ騒音を防止する理由があっても、以下のような厳しい基準が適用されます」

【精神的自由権に対する規制を審査する厳しい審査基準】

1.事前抑制の禁止(検閲の禁止など)
2.「明白かつ現在の危険」の要件の充足
3.予定する規制が「より制限的でない他の選びうる手段」であること

(ライフスタイルチーム)

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牧野和夫(まきの・かずお)

弁護士(日・米ミシガン州)・弁理士

1981年早稲田大学法学部卒、1991年ジョージタウン大学ロースクール法学修士号、1992年米ミシガン州弁護士登録、2006年弁護士・弁理士登録。いすゞ自動車課長・審議役、アップルコンピュータ法務部長、Business Software Alliance(BSA)日本代表事務局長、内閣司法制度改革推進本部法曹養成検討会委員、国士舘大学法学部教授、尚美学園大学大学院客員教授、東京理科大学大学院客員教授を歴任し、現在に至る。専門は国際取引法、知的財産権、ライセンス契約、デジタルコンテンツ、インターネット法、企業法務、製造物責任、IT法務全般、個人情報保護法、法務・知財戦略、一般民事・刑事。

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