「便」の臭いが強烈…“大腸がん”の可能性も 要注意食品&受診目安 消化器病専門医に聞く
便が強烈に臭う原因のほか、病気の可能性について、消化器病専門医が解説します。
排便時に、いつもより便が強烈に臭うことはありませんか。この場合、どのような原因が考えられるのでしょうか。便の臭いが強烈な状態を放置すると、どういったリスクが生じる可能性があるのでしょうか。ダイエット外来や腸内細菌外来などを併設する、あさひの森内科消化器クリニック(愛知県尾張旭市)院長で、消化器病専門医の福田頌子さんに聞きました。
プロテインの摂取で臭いが出ることも
Q.いつもより便の臭いが強烈な場合、どのような原因が考えられるのでしょうか。
福田さん「そもそも便の臭いの正体は、『スカトール』『インドール』と呼ばれる化学物質です。スカトールやインドールは、腸内細菌がアミノ酸であるトリプトファンを分解する過程で生成され、特にスカトールはとても不快な臭いを放ちます。一方、インドールは少量ではあまり臭いませんが、濃度が上昇すると臭いを放つ場合があります。
このように、スカトールやインドールはアミノ酸が原料となっていますが、アミノ酸(トリプトファン)は肉類や魚類、乳製品、豆類などに多く含まれています。そのため、これらの食べ物の摂取量が多くなると、便の臭いが強くなることがあります。近年は、健康のために意識的にタンパク質(プロテイン)を多めに摂取する人が増えており、便の臭いで悩む人も多いと思います。
また、消化不良も便の臭いの原因となります。消化不良があると、食べたものが完全に消化されずに小腸や大腸に到達します。未消化の食物が腸内で発酵することで、ガスや悪臭が発生することがあります。脂質が多い食品のほか、玄米やシリアル、豆類、ゴボウといった食物繊維が豊富な食品、乳製品、香辛料が含まれた辛い食べ物などを摂取すると、消化不良になることがあります。
食品以外にも、胃酸の分泌の低下も消化不良の原因となります。胃酸の分泌低下は加齢やストレスなどにより引き起こされますが、ピロリ菌の感染や胃酸の分泌を抑えるタイプの“胃薬”によって引き起こされることも多くあります。
そのため、長期的に、医療機関で処方された“胃薬”を服用している人は、ご自身の内服薬にどのような成分が含まれているのかを確認することが重要です。もし便の臭いに悩まされている場合は、かかりつけの医師に相談してみましょう」
Q.便の臭いが強烈な状態が続く場合、どのような原因が考えられるのでしょうか。病気の可能性はあるのでしょうか。医療機関を受診する目安も含めて、教えてください。
福田さん「先述の通り、腸内環境の乱れや便秘、消化不良などで便の臭いが強くなる場合があります。それ以外にも、細菌性腸炎といった腸の感染症のほか、クローン病や潰瘍性大腸炎などの慢性疾患があると、便の臭いが変わることがあります。ある特定の薬やサプリメントなどを摂取した場合も、便がより臭くなることがあります。
食事や生活習慣を見直しても便の臭いが強い状態が続く場合、医療機関を受診するのをお勧めします。便の臭いだけではなく、下痢が頻繁に続く場合や便に血が混じる場合、腹痛を伴う場合、便の形が細くなるなどの症状がある場合、潰瘍性大腸炎やクローン病といった腸管の炎症性疾患の可能性のほか、大腸がんなどの深刻な疾患の可能性が考えられるため、早めに受診するのをお勧めします。できれば、大腸カメラによる検査が可能な消化器内科を受診するのがよいでしょう」
Q.便の臭いが強烈な状態を放置した場合、どのようなリスクが生じる可能性があるのでしょうか。
福田さん「腸内環境の悪化に伴う一時的な臭いであれば問題ありませんが、なかなか改善しない場合は、慢性的な便秘や腸管ガスによる腹部膨満感のほか、ある種の腸内常在細菌が過剰に増殖し、下痢や栄養素の吸収不良を起こす『小腸内細菌異常増殖症(SIBO)』などに発展してしまう可能性もあります。
慢性的におなかの不快感を覚えて生活の質を落としかねないため、症状が続く場合は放置せず医療機関の受診をお勧めします」
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