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大学生が「バ畜」で留年&中退した どうなる? 大学教員が試算した経済的損失

留年&中退するとどうなる?

 単位をいくつか落とすとか、成績が少し落ちるぐらいなら、まだ損害は限定的です。追加の授業を履修して忙しくなることはあっても、在学中に追加の金銭的コストを支払う必要はありません。

 しかしアルバイトに明け暮れた結果、留年してしまうと大変です。まず、1年分の学費が追加でかかるため、国公立で60万円弱、私立で100万円ほどの支払いが生じます。また、1年分の生活費に加え、1人暮らしならば家賃なども追加でかかってきます。そして、奨学金制度を利用している人はほとんどの場合、5年目の分の奨学金は受け取れません。

 留年している時点で成績はさらに悪化しているはずなので、就職活動もさらに不利になります。また、就職が1年遅れることで働く期間が1年短くなるので、1年分の収入を失います。そしてこの1年の差は、単に収入の差だけではなく、経験を積んだり昇進したりするチャンスの差になるかもしれません。

 これらのマイナス分は簡単には計算できませんが、合わせて軽く1000万円近くになると思います。

 さらに、留年すると、入学時に仲良くなった友達と一緒に勉強する機会が減ります。友達が減って大学に行くモチベーションが下がり、奨学金が切れたり親の援助を受けづらくなったりして、さらにアルバイトに明け暮れるようになるかもしれません。しかし、その結果、中退してしまうと損害はさらに拡大します。

 高卒と大卒の年収の差は平均で100万円ほどなので40年間なら4000万円です。また、いつ退学したかにもよりますが、仮に4年生で退学したとすると、高卒の人が働いていた4年分の収入と、大学の学費や生活費4年分も追加で損することになるため、マイナス分は合計で軽く5000万円を超えてきます。

 大学生がバイトに明け暮れた場合の経済的損失について、おさらいしましょう。あくまでも、ざっくりと計算した結果ですが、授業を休むと数千円、単位を落とすと数万円、留年すると1000万円、中退すると5000万円です。

 もちろん、大学を中退して大成功する人もいれば、真面目に大学に通って良い成績を取ってもパッとしない人生を送る人もいるでしょう。しかし平均値で見れば、学業をおろそかにすることが、時給1000円ではとても埋められないような大損害につながるかもしれないことは知っておいてください。

 冒頭で解説した通り、アルバイトを否定するつもりは毛頭ありませんが、経済的にあまり困っておらず、楽しいから、目先の遊ぶお金が欲しいからという理由でアルバイトをするのであれば、大学の成績に影響が出ない程度にしておくことを強くお勧めします。

 ちなみに多くの私立大学では、成績優秀な学生の学費を免除する制度があります。すでにそれなりに良い成績を取っているのなら、もう少し勉強して学費免除を狙ってみるのがお勧めです。

 100万円が免除されるのであれば、年間500時間余計に勉強した場合でも時給2000円です。これに加えて、成績アップによる将来の収入増などの相乗効果も期待できるため、まさに一石二鳥です。

 勉強は将来に対する時間的投資でもあります。学生の皆さんは、その時間を1000円程度でどこまで売りに出してよいか、バランスをよく考えて、損をしないようにしてください。

(近畿大学生物理工学部准教授 島崎敢)

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島崎敢(しまざき・かん)

近畿大学生物理工学部准教授

1976年、東京都練馬区生まれ。静岡県立大学卒業後、大型トラックのドライバーなどで学費をため、早稲田大学大学院に進学し学位を取得。同大助手、助教、国立研究開発法人防災科学技術研究所特別研究員、名古屋大学未来社会創造機構特任准教授を経て、2022年4月から、近畿大学生物理工学部人間環境デザイン学科で准教授を務める。日本交通心理学会が認定する主幹総合交通心理士の他、全ての一種免許と大型二種免許、クレーンや重機など多くの資格を持つ。心理学による事故防止や災害リスク軽減を目指す研究者で、3人の娘の父親。趣味は料理と娘のヘアアレンジ。著書に「心配学〜本当の確率となぜずれる〜」(光文社)などがあり、「アベマプライム」「首都圏情報ネタドリ!」「TVタックル」などメディア出演も多数。博士(人間科学)。

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