「こたつで寝ると風邪をひく」っていうけど…本当なの? 内科医に“真偽”を聞いてみた
「こたつで寝ると風邪をひく」。親によく注意されたという人もいると思いますが、実際にこれは本当なのでしょうか。内科医が、医学的観点から解説します。
「こたつで寝たら風邪をひくよ!」。親からこんなふうに注意された経験がある人、きっと多いのではないでしょうか。実際、暖かいこたつに入っているうちに眠くなり、そのまま“寝落ち”してしまうことはよくあるものですが、それが原因で「風邪をひく」ことについては「本当なの?」「体が冷えるわけじゃないのに」「暖かい布団と変わらない気がするけど…」といった疑問の声も聞かれます。
「こたつで寝ると風邪をひく」のは本当なのか――。その“真偽”について、内科医の市原由美江さんが解説します。
脱水症状で鼻や喉が乾燥し…
そもそも「風邪」とは、鼻や喉にウイルスが感染することによって、咳(せき)や鼻水、発熱、咽頭痛などの症状を起こすものです。ストレスや睡眠不足、不規則な生活などで免疫力が落ちているとかかりやすくなるので、これがすなわち「風邪をひきやすい状態」といえます。
「こたつで寝ると風邪をひく」を医学的観点で見てみると、こたつと風邪の関連性を研究したデータはないのですが、関連はあると思います。こたつの中で“寝落ち”してしまうと脱水症状が起こりやすくなります。すると、鼻や喉が乾燥しやすくなり、ウイルスに感染する可能性が高まることが考えられるためです。
人体は通常、汗が皮膚で蒸発するときに熱が奪われ、体温が下がります。つまり、体温が上がると汗をかき、自然と体温が下がるように調節されるのです。しかし、こたつの中にいるときは、高温に長時間さらされている状態です。そのため、汗をかいても体温が下がらず、体温調節機能がうまく働かなくなることが考えられます。その結果、自律神経が乱れて免疫力が下がり、風邪を発症しやすくなる可能性があるといえるでしょう。
ちなみに、よく「頭寒足熱は健康によい」といわれます。これは確かにそうで、足元を温めることで足の血流が促進され、全身の血流もよくなります。こたつはうってつけと思われるかもしれませんが、これはあくまで、こたつに「座って入る」場合の話です。
こたつで横になる、つまり寝てしまうと、どうしても体全体がこたつの中に入ってしまいがちになります。この状態だと、頭以外の部分が高温にさらされ続け、熱がこもり過ぎてしまうのです。こうした点も、こたつで寝ることをお勧めしない理由です。こたつに入るのは足のみか、せめて下半身にとどめておくのがよいと考えます。
一方で、「こたつで寝ること」と「布団で寝ること」はどう違うのか、と考える人もいるかもしれません。
そもそも人は睡眠時、体温が下がるという特徴があります。布団で寝る場合は、汗をかいたり布団をずらしたりして、自分で温度調節を行うことが可能ですが、こたつの場合は先述のように、体が高温に長時間さらされるので、体温が下がりにくくなると考えられます。さらに、高温によって体の水分が奪われることで脱水状態に陥りやすく、その影響で心筋梗塞や脳梗塞を引き起こす可能性も高まります。
こうしたリスクがあっても、冬場はついつい「こたつで寝てしまった!」ということがあるかもしれません。うっかりこたつで寝てしまった場合は、起床後すぐに水分をしっかりと取るようにしてください。また、布団で寝たときに比べて、こたつでは睡眠中の体の動きが悪く、足腰や全身の関節に負担がかかっていることが考えられます。背伸びをするなど、少し体を動かすようにしましょう。
(オトナンサー編集部)
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