有力な情報提供者に支払う「捜査特別報奨金」…金額はどう決まる? 対象となる事件は? 弁護士に疑問を聞いた
容疑者の逮捕につながる有力情報の提供者に報酬が支払われる「捜査特別報奨金」という制度。金額の決め方や、対象となる事件など、さまざまな疑問に弁護士が答えます。

2022年6月、大分県別府市の交差点で発生した、大学生2人が死傷したひき逃げ事件。1年以上たった現在も容疑者の行方が分かっていない中、9月15日、警察庁がひき逃げ事件の容疑者としては全国初の「重要指名手配」に指定したことが報道されました。
この事件は「捜査特別報奨金」の対象となっており、逮捕につながる有力情報の提供者には公的懸賞金が最大300万円、また遺族などによる私的懸賞金が最大500万円支払われるとのことですが、この懸賞金については「金額の上限はあるの?」「期間も決まっている?」といった疑問の声も聞かれます。
金額はどう決まるのか、どんな事件が対象となるのか……有力な情報提供者に支払う「捜査特別報奨金」の疑問について、芝綜合法律事務所の牧野和夫弁護士に聞きました。
報酬は原則「300万円」まで
Q.そもそも「捜査特別報奨金」とは何ですか。
牧野さん「『捜査特別報奨金制度』とは、指名手配犯の情報を提供した人に報酬金を支払う制度で、警察庁が運用しています。一定の重要凶悪事件で、警察庁が指定した事件に関する情報を提供した人に、民法第529条『懸賞広告』、同法第529条の2『指定した行為をする期間の定めのある懸賞広告』、および同法第532条『優等懸賞広告』の規定に基づき、重要凶悪事件の検挙に結びつく有力な情報を提供した者に対して報奨金を支払う旨を広告しています。
有力な情報を提供した者のうち、『優等者』に対して、原則として300万円までの報酬が支払われます。特に必要がある場合は、1000万円を超えない範囲で増額が可能です。増額の考慮については、事件の重要度や凶悪性の度合いが基本になりますが、それに加えて、連続放火事件のように、早急に被疑者を確保しないと被害が広がる可能性がある場合の“緊急性”も要素になると思います。
応募期間は原則として1年間ですが、特に必要があると認める場合には、期間を延長または短縮することがあります」
Q.捜査特別報奨金の対象となる「有力な情報を提供した者」について、さらに詳しく教えてください。
牧野さん「『有力情報』とは被疑者の検挙、または事件の解決への寄与をした情報のことです。ただし、匿名など個人を特定できない方法による情報提供は、報酬金の対象となりません。また、警察職員、被疑者本人、共犯者、情報入手の過程で犯罪を行った者なども支払対象から除外されます。
情報提供者に対しては、被疑者の検挙または事件の解決への寄与の度合いに応じて、広告した上限額の範囲内で決定された金額が支払われます。情報提供者が複数の場合には、その度合いに応じて、広告した上限額の範囲内において分割して支払われることになります」
Q.ちなみに、捜査特別報奨金(公的懸賞金)と、私的懸賞金の違いとは何ですか。
牧野さん「捜査特別報奨金制度は、実施者(懸賞金支払者)が国や地方公共団体となる公的懸賞金制度です。一方、私的懸賞金対象事件は、捜査特別報奨金制度以外の懸賞広告事件のことをいい、実施者(懸賞金支払者)が私的団体や遺族など、個人となる場合をいいます。例えば、実施者が『◯◯強盗殺人事件の捜査に協力する会』などの場合です」
(オトナンサー編集部)
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