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ゴミのポイ捨てや騒音…モラルなき「路上飲み」、法的な問題はないの? 弁護士に聞いた

東京・渋谷駅周辺における「路上飲み」が問題視されている中、ネット上では「路上飲みは違法じゃないの?」との声も聞かれます。「路上飲み」に法的な問題はないのか、弁護士に聞きました。

悪質な「路上飲み」…違法じゃないの?
悪質な「路上飲み」…違法じゃないの?

 東京・渋谷駅周辺における「路上飲み(路上飲酒)」の増加が問題となっています。報道によると、路上飲みに伴い、ゴミの放置やポイ捨て、深夜の騒音、飲食店前でのたむろといった迷惑行為も増加しているといい、モラルやマナーの悪化も懸念されています。

 こうした事態を受け、渋谷区は9月1日からパトロールを実施し、路上飲酒をやめるよう呼び掛けていますが、ネット上では「路上飲みは違法じゃないの?」「法律で禁止にしてほしい」「ポイ捨ては普通に犯罪だろ」「迷惑行為は本当にダメ」など、さまざまな声が上がっています。

 モラルやマナーを無視した「路上飲み」に、法的な問題はないのでしょうか。佐藤みのり法律事務所の佐藤みのり弁護士に聞きました。

路上飲酒を禁止する法律は「ない」けれど…

Q.そもそも、「路上で飲酒をすること」自体について、何らかの法的な問題はないのでしょうか。

佐藤さん「日本には、公道・私道問わず、路上飲酒を禁止する法律はありません。ただし、東京都渋谷区では、場所・期間限定で、路上での飲酒を禁止する条例があります。この条例では、人が集まりやすいハロウィーンの時期や、年末年始のカウントダウンのある大みそかと元日に、人が集まりやすいいくつかの場所において、路上飲酒を禁じています。罰則規定はありませんが、規定に違反した場合は飲酒をやめるよう指導されます」

Q.では、モラルやマナーが欠如した路上飲みによって、迷惑行為が行われた場合はどうでしょうか。

佐藤さん「路上飲みに伴う迷惑行為の中には、法律で禁止されている行為、犯罪に該当する行為が存在します。代表的な例は次の通りです」

【ゴミのポイ捨てや放置】

飲み終わった空き缶やビンなどをポイ捨てしたり、放置したりすると、さまざまな法律・条例に違反し、罰則が科せられることがあります。ゴミのポイ捨てを禁じる法としては、廃棄物処理法、軽犯罪法、自然公園法、河川法施行令、自治体ごとに定める条例などがあります。

【大声で騒ぐ、騒音を出す】

大声で騒ぎ、異常な騒音を出せば、軽犯罪法に違反する可能性があります。同法1条14号は、「公務員の制止をきかずに、人声、楽器、ラジオなどの音を異常に大きく出して静穏を害し近隣に迷惑をかけ」る行為を禁じています。法定刑は、拘留(1日以上30日未満、刑事施設に拘置する刑)または科料(1000円以上1万円未満の金銭を支払わせる刑)です。

先述した、場所・期間限定で路上飲酒を禁じる東京都渋谷区の条例でも、路上で大きな音量を流すことなどの迷惑行為を禁じています。

【店の前に座り込む】

店の前の敷地内に座り込んだとしても、直ちに違法になるわけではありません。しかし、店主が立ち去るよう求めたにもかかわらず、立ち退かず、怒号を発するなどして居座り、他の客が入店しにくい状況がつくられたようなケースでは、威力業務妨害罪(刑法234条)といった罪に問われる可能性もあります。

【路上で寝る】

路上で寝ると、道路交通法違反に問われる可能性があります。同法76条4項2号は、「道路において、交通の妨害となるような方法で寝そべり、すわり、しゃがみ、または立ちどまっていること」を禁じており、これに違反した場合、5万円以下の罰金に処される可能性があります(同法120条1項10号)。

【酒に酔って道路でふらつく】

酒に酔って、道路でふらついた場合も、道路交通法違反に問われる可能性があります。同法76条4項1号は、「道路において、酒に酔って交通の妨害となるような程度にふらつくこと」を禁じており、これに違反した場合、5万円以下の罰金に処される可能性があります(同法120条1項10号)。

Q.海外では、公共の場での飲酒が禁止されているケースも少なくなく、「日本でも法律で禁止にしてほしい」との声も聞かれます。日本で路上飲酒を禁止する法律を制定することについて、どう思われますか。

佐藤さん「私たちの社会は、自由が原則であり、国家権力による法規制は必要最小限に抑えるべきだと思います。法律で罰則を設けるなど、規制すると、国家権力による監視の必要も生じ、ギスギスした社会になる恐れもあります。

迷惑な路上飲酒が深刻化している渋谷区では、一定の時間帯でパトロールを行い、路上飲酒の自粛要請をすると報じられています。こうした自粛要請にも応じず、迷惑行為が一向にやまないような場合には、法規制も検討せざるを得ませんが、一人一人が自主的にマナーを守り、みんなが暮らしやすい社会にすることが望ましいでしょう」

(オトナンサー編集部)

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佐藤みのり(さとう・みのり)

弁護士

神奈川県出身。中学時代、友人の非行がきっかけで、少年事件に携わりたいとの思いから弁護士を志す。2012年3月、慶応義塾大学大学院法務研究科修了後、同年9月に司法試験に合格。2015年5月、佐藤みのり法律事務所開設。少年非行、いじめ、児童虐待に関する活動に参加し、いじめに関する第三者委員やいじめ防止授業の講師、日本弁護士連合会(日弁連)主催の小中高校生向け社会科見学講師を務めるなど、現代の子どもと触れ合いながら、子どもの問題に積極的に取り組む。弁護士活動の傍ら、ニュース番組の取材協力、執筆活動など幅広く活動。女子中高生の性の問題、学校現場で起こるさまざまな問題などにコメントしている。

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