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中卒扱い、就職が悲惨…特別支援学校“卒業”は本当に「不利」? 自閉症児を育てた親の見解

卒業後の「進路」は?

就労移行支援事業所「ホープ神田」に通っていた息子(立石美津子さん提供)
就労移行支援事業所「ホープ神田」に通っていた息子(立石美津子さん提供)

 特別支援学校高等部の卒業後の進路は、次の5通りが考えられます。

(1)生活介護…常に支援が必要な人に対して社会生活能力を向上するための場
(2)就労継続支援B型…一般就労が困難な人が働く作業所。工賃として支給される
(3)就労継続支援A型…事業所から雇用される。最低賃金が保証される
(4)就労移行支援…一般就労を目指す就労訓練の場。2年間限定
(5)一般就労…法定雇用率による障害者枠で就労

 知的障害を伴う自閉症児として育った私の息子は、特別支援学校高等部を卒業した後、障害者雇用枠での就労を希望せず、就労移行支援事業所に進みました。

 どうしてかというと、「普通の人でも高校を卒業して就職する人はいるけれど、障害がある子がいきなり社会に出るのは厳しいのではないか」「大学や専門学校のような意味合いで、職業訓練をしっかりしてくれる就労移行支援事業所に行くのがいいのではないか」と考えたからです(就労移行支援事業所は療育手帳がなくても、受給者証を取って通うことが可能です)。

 息子は「ホープ神田」という就労移行支援事業所に、3年間通いました。通常は2年間限定のものですが、コロナの関係で就職活動ができない時期があったため、3年間が認められました。

 就労移行支援事業所を出て就職すると、月1回、事業所職員による「職場訪問」があります。就労定着支援のため、3年間訪問してくれます。

 もちろん、特別支援学校高等部を卒業後、すぐに就職した場合も学校の先生は職場に出向き、一定期間はフォローしてくれます。でも、支援学校高等部の先生たちは、来年度に新卒を迎える3年生の就職活動の支援で手いっぱいなのが現状です。卒業生の就労定着支援に関わっている時間はないのではないでしょうか。

「助けてください」と言えるようになる

 これは、ある企業の人が言っていたことです。

「自己肯定感が低く、自分自身の障害受容ができておらず、知ったかぶりをして、質問することを恥ずかしいと思い、注意を受けるとプライドが邪魔して素直に聞けない人は、実に扱いにくい」

 自身の「苦手」を分かっていて、「僕はこれができないので助けてください」と言えることが大切です。

 こういうことを身に着けられる進路はどこでしょうか。知的遅れがある程度みられるのに、通常級に入れ、わが子が自信を喪失して引きこもってしまっては元も子もありません。

 一方で「支援級に進み、支援学校高等部に進み、就労移行支援事業所に進み、しっかりと職業訓練を受けて就職」は、よい進路だと私は思います。このあたりをよく考えて、学校選びをスタートさせたらよいと思います。

 特別支援学校高等部に入学するために療育手帳が必須の学校もありますが、障害者雇用枠での就労を目指すため、入学時に手帳を持っていなくても、入学後に取得できるよう動いてくれる学校もあると耳にしたことがあります。自治体にもよるので、お住まいの地域の学校情報を集めてみてくださいね。

(子育て本著者・講演家 立石美津子)

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立石美津子(たていし・みつこ)

子育て本著者・講演家

20年間学習塾を経営。現在は著者・講演家として活動。自閉症スペクトラム支援士。著書は「1人でできる子が育つ『テキトー母さん』のすすめ」(日本実業出版社)、「はずれ先生にあたったとき読む本」(青春出版社)、「子どもも親も幸せになる 発達障害の子の育て方」(すばる舎)、「動画でおぼえちゃうドリル 笑えるひらがな」(小学館)など多数。日本医学ジャーナリスト協会賞(2019年度)で大賞を受賞したノンフィクション作品「発達障害に生まれて 自閉症児と母の17年」(中央公論新社、小児外科医・松永正訓著)のモデルにもなっている。オフィシャルブログ(http://www.tateishi-mitsuko.com/blog/)、Voicy(https://voicy.jp/channel/4272)。

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