「扇風機だけで大丈夫」は危険? 夏場の「ペットの留守番」の注意点、獣医師に聞いた
室内も暑くなる夏場は、ペットの留守番時の「暑さ対策」が欠かせません。どのような点に注意して準備を行えばよいのか、獣医師が解説します。

夏場、気温が特に高い日は、家の中で過ごしていても暑さを感じるもの。そのため、夏場にペットを留守番させるときには「暑さ対策」が必須です。実際、「夏場のお留守番は不安」と感じる飼い主も少なくありませんが、どのような点に注意する必要があるのでしょうか。ますだ動物クリニック(静岡県島田市)院長で獣医師の増田国充さんに聞きました。
人間が室内で「快適」と感じる環境を整えておく
Q.夏場、暑さ対策をしないでペット(犬、猫)に留守番をさせると、どうなることが考えられますか。
増田さん「まず大前提として、日本の夏は想像以上に暑いということです。そして、犬や猫にとっても暑いわけです。昨今の夏は、窓を閉め切った状態の室内が40度に達することもあります。実際に、人間が室内で熱中症になり病院で手当てを受けたというニュースを見聞きするように、冷房がないと室内で熱中症を起こしてしまう可能性があります。
犬や猫は体温が上昇した際、汗での熱放散はほとんどなく、呼気で調整します。この『パンティング』と呼ばれる呼吸は、発汗と比べて熱を逃がす効率が劣るため、暑い環境に置かれると高体温になり、熱中症になってしまう可能性が高まります。そして、犬や猫を留守番させる際は戸締まりをしますから、冷房など暑さ対策がされていないと、室内が温室のようになることは想像に難くありません」
Q.暑さ対策の観点から、ペットを留守番させるときに必要なことや、準備物は何でしょうか。
増田さん「ひと口に暑さといっても、私たちが暑さを感じる要素は温度だけではありません。温度の他、湿度や直射日光の有無、風通し、水分が取れるかどうか、といった要因も非常に重要です。
特に、閉め切った部屋は空気の移動が制限されるため、熱がこもりやすくなり、温度以上に暑さを感じやすくなります。適温の冷房はこの時期、必要と考えておくべきといえます。また、冷房の効率を高めるためにサーキュレーターを、日差しを避けるためにカーテンを使用するなど、人間が室内で『快適』と感じる環境を整えておくことが重要です」
Q.「エアコンは切って扇風機だけで大丈夫」と考えている人もいるようですが、実際のところはどうでしょうか。
増田さん「使い方に注意を払うことが大切です。強い日差しを遮ることができて、かつ空気の流れがあることで、体感温度は下げられることがあります。お住まいの地域や時間帯といった環境による条件の他、個体差も加味するようにしないといけません。特に、体温調節機能が十分でない高齢あるいは若齢のワンちゃん、猫ちゃんの場合は、一層の心遣いをするようにしましょう。
なお、多少の差はありますが、一般的に犬にとって適した温度はおよそ25度前後、猫はそれより少々高めの26~28度といわれます。湿度は高すぎず、低すぎずの50%あたりを目安にするとよいかと思います。暑がり、寒がりなど個性もあると思うので、多少の微調整をするとよいでしょう」
Q.その他、ペットの留守番時に注意が必要なこととは。
増田さん「おうちの人が留守の際、クレート内やサークル内で留守番をすることがあるかと思います。行動が制限される環境で、『日中、日差しを避けられない』というようなことが起こらないように配慮してください。
また、おうちの人が不在と分かると不安になって、シーツをびりびりにしたり、頻繁にほえたりする『分離不安』と呼ばれる状態になるワンちゃんがいます。この状態になると、緊張や興奮状態を引き起こしやすく、呼吸数の増加や体温が上昇しやすくなることがあります。室内での熱中症対策とは少々異なりますが、安心してお留守番できるようにトレーニングすることも予防の一助となります。
基本的に、人間が『暑くてその場所にいたくない』と思う条件は、犬や猫にとっても過酷であると認識しておくのがよいのではないかと思います。まだまだ暑い日が続きますが、実は本格的な暑さを迎える前後の、『急に暑くなった日』というのが要注意の日です。体が暑さに慣れていないと、必ずしも酷暑でなくても熱中症になりやすくなります。引き続き、暑さ対策に抜かりのないよう、対策を取っておきましょう」
(オトナンサー編集部)
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