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自宅の庭、道路、駐車場で「花火」 法律違反になる? 弁護士に聞いた

お盆に花火で楽しむ人もいるでしょう。自宅の庭、道路、駐車場で「花火」をする場合の違法性や法律などについて弁護士に聞きました。

 お盆に田舎へ帰省したり、自宅に友人などが集まって花火を楽しむこともあると思います。しかし、住宅街や集合住宅などで花火をすると「流れてくる煙が迷惑」「洗濯物に臭いがつくからやめてほしい」「騒ぎ声がうるさい」など、トラブルに発展しまいそうな声が少なくないほか、「そもそも、庭や道路、駐車場で花火をやってもいいの?」と疑問を持っている人もいます。自宅の敷地内や自宅前の道路で行う花火に関する法的問題について、芝綜合法律事務所の弁護士・牧野和夫さんに聞きました。

市町村によって条例・規制がある 逮捕に至ったケースとは…

Q.「自宅の敷地内」で線香花火などの手持ち花火をすることに、法的な問題は考えられるのでしょうか。また、打ち上げ花火の場合はどうでしょうか。

牧野さん「線香花火などの手持ち花火をする(花火を消費する)ことについて火薬類取締法では、規制がありません(打ち上げ花火の場合も、省令で定める数量以下の火薬類を消費する場合は、火薬類取締法で規制されていません)が、多くの市町村の条例で、以下の規制があります。

<兵庫県宝塚市>
花火の音などにより安眠が妨害されたりすることを防止するため、午後10時から翌日午前6時の深夜早朝にかけて行われる花火は禁止されています(中止命令に違反したものに対しては10万円以下の罰金など)。

<東京都火災予防条例>
玩具用花火は、玩具用煙火として、多くの条例で以下の様に規制されています。

(1)玩具用煙火は、火災予防上支障のある場所で消費してはならない。
(2)玩具用用煙火を貯蔵し、または取り扱う場合においては、炎、火花または高温体との接近を避けなければならない。
(3)火薬類取締法施行規則(昭和25年通商産業省令第88号)第91条第2号で定める数量の5分の1以上同号で定める数量以下の玩具用煙火を貯蔵し、または取り扱う場合においては、ふたのある不燃性の容器に入れるか、又は防炎処理を施した覆いをしなければならない。

第1項の「火災予防上支障のある場所」については、次の場所が示されています。
(1)引火性または可燃性の物品を貯蔵し、または取り扱っている場所およびその附近
(2)強風時または異常乾燥時における木造家屋の密集している場所及およびその附近
(3)火の粉もしくは火花が落下し、または飛散する地点に可燃性の物品がある場所

第2項に定める炎、火花および高温体との接近防止のための措置は、次の例に示す通りです。
(1)玩具用煙火の近くで燃焼器具を使用しないこと。
(2)炊事場、風呂場などてで使用する熱源が影響する場所から安全な距離をとるか、または区画すること。
(3)店頭で陳列する容器には、ふた又は覆いを用いて、たばこの吸い殻などの火源が入ることを防止すること。
(4)裸電球の接近を避けること。

また、条例によりますが、花火禁止の公園で花火はできません。そして、路上で花火をすると、道路交通法第76条第4項第4号にある『人や車両を損傷する恐れのある物を投げたり発射したりすること』に違反する可能性があるため、やめましょう。

Q.自宅敷地内での花火が原因で、隣家の「前の道路に焦げ跡や花火のゴミがあった」「ブロック塀が焦げてしまった」といった実害を被った場合、何らかの法的手段を取ることは可能なのでしょうか。

牧野さん「花火が原因で隣家が実害を被った場合(他人に損害を与えたなど)、被害者が花火が原因でその損害が発生したことを証明できる場合には、民法の不法行為に基づき、花火をした人に対して損害賠償請求が可能です」

Q.自宅敷地内での花火によって、近隣トラブルを起こさないためのポイントはありますか?

牧野さん「5つの留意点があると思います。(1)火災の原因にならない様に火の適切な始末やゴミの処分を行う。(2)騒がしくしないように気をつける。(3)常識的な時間帯(日の入りから夜8時頃まで)に短時間で行う。(4)住宅地を避ける。(5)条例によりますが花火禁止の公園で花火をしない」

Q.これまでに、花火に関連した事件や判例はありますか?

牧野さん「2020年11月、大分地裁中津支部が、同県中津市営西谷温泉の火災の原因となった打ち上げ花火をした福岡県北九州市の男性に対して、中津市からの民法の不法行為に基づく、1388万円の損害賠償請求を認めた判決を下しています」

 花火で楽しく盛り上がることはありますが、周囲の人や家に迷惑を掛けてしまうようなことはやめましょう。また、けがや火事につながらないよう対策をしっかりと行うなどして、花火を楽しむようにしましょうね。

(オトナンサー編集部)

牧野和夫(まきの・かずお)

弁護士(日・米ミシガン州)・弁理士

1981年早稲田大学法学部卒、1991年ジョージタウン大学ロースクール法学修士号、1992年米ミシガン州弁護士登録、2006年弁護士・弁理士登録。いすゞ自動車課長・審議役、アップルコンピュータ法務部長、Business Software Alliance(BSA)日本代表事務局長、内閣司法制度改革推進本部法曹養成検討会委員、国士舘大学法学部教授、尚美学園大学大学院客員教授、東京理科大学大学院客員教授を歴任し、現在に至る。専門は国際取引法、知的財産権、ライセンス契約、デジタルコンテンツ、インターネット法、企業法務、製造物責任、IT法務全般、個人情報保護法、法務・知財戦略、一般民事・刑事。

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