シマウマ逃走、電車脱線…地震などの災害時に「デマ」が拡散するのはなぜか その対策は?
大阪府で起きた地震後、さまざまな流言が広がりました。その背景と影響を取材しました。

大阪府で最大震度6弱を記録した6月18日の地震後、「シマウマが逃げた」「京阪電車が脱線した」「京セラドーム大阪の屋根に亀裂が入った」といった事実無根の流言がSNS上で拡散されました。2016年の熊本地震では「ライオンが動物園から逃げた」というデマがツイッターに投稿され、逮捕者まで出ました。
なぜ大地震が起きるとデマや流言が発生し、拡散するのでしょうか。オトナンサー編集部では、専門家にその背景を聞くとともに、熊本地震で被害を受けた動物園に当時の状況を取材しました。
不安と情報不足が背景に
「シマウマが逃げた」というツイッターの投稿は画像付きでしたが、過去にあった逃走事例の画像と一致することが指摘されています。「京セラドームの亀裂」は、屋根にある階段を亀裂と見誤った可能性があります。時代をさかのぼると、関東大震災(1923年)でも「朝鮮人が暴動を起こす」などの流言が流れ、多くの朝鮮人が殺害される悲劇が起きました。
流言が広がる背景や対策を、東京大学大学院情報学環・総合防災情報研究センターの関谷直也准教授(災害心理学)に聞きました。
Q.なぜ、地震などの大災害時に流言が発生、拡散するのでしょうか。
関谷さん「流言などのうわさが広がりやすい要因としては、不安と情報不足が考えられます。地震や水害の後は多くの人が不安になります。メディアの情報が途絶えて不安になったり、情報が流れてもなかなか現状が分からなかったりして『情報が足りない』と感じます。うわさが広がりやすい要件を備えているのが災害です」
Q.関東大震災でも流言はありました。当時とSNS時代の違いはどういう点でしょうか。
関谷さん「昔なら被災地中心だったものが、今では一気に広がっていきます。SNSやメールがない時代は、うわさはいつの間にか消えていき、後で誰かから聞いても確認できないので広がりにくいという面がありました。
しかし、ネットは記録が残っていてうわさが発見されやすく、広がるスピードも範囲も違います。さらに、SNSでは小さな流言、かつてなら取るに足りないようなうわさも、広がっていきます。
関東大震災でも、発生翌々日には地方紙に『朝鮮人の暴動』の記事が載ったように、昔からうわさの広がりは速いのですが、今はより広がりやすくなっています」
Q.「シマウマ」「電車脱線」「ドームの亀裂」など今回の流言の特徴とは。
関谷さん「3つはそれぞれ違います。『シマウマ』はインターネット上ならではのうわさで、ツイッターのコミュニケーションの特徴、愉快犯的な要素が大きいです。熊本地震のライオンもそうです。シマウマのことを発信した人は、熊本のライオンの件を知っていて画像を載せた可能性があります。
『電車脱線』は、たどっていくと『脱線したかも』が『脱線』に変わっています。流言の古典的パターンの一つで、『伝言ゲーム』の中で内容が変わっていったのです。『京セラドーム』は誤認でしょう。最初は誤認して、それが広がっていったようです」
Q.流言への対応、対策は。個人レベルでできることと、国や自治体などに望まれる役割を教えてください。
関谷さん「一つは、流言に対する耐性をつけること。災害時はさまざまな情報が広がります。それをきちんとチェックする、公的機関などで確認するという行為が重要です。
公的機関が情報を出していくことも大事です。外国では『ルーマー(うわさ)コントロールセンター』というコールセンターができることもあります。東日本大震災では、製油所での爆発で『有害物質が降る』という流言が出回りましたが、その直後からコスモ石油が『このような事実はありません』とホームページに掲載して収束していきました。
正しい情報を出していくのが、一番の対策と言えます」
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