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「はたらくって、生きるため」 異なる主張が“同居”する人材会社の広告に賛否両論、狙いは?

一見すると相反する言葉を並べた、総合人材サービス企業の「広告」が話題になっています。

2つのコピーが並ぶアンサー広告(パーソルホールディングス提供)
2つのコピーが並ぶアンサー広告(パーソルホールディングス提供)

「はたらいて、笑おう。」と呼びかけるポスターのそばに「はたらくって、笑うためじゃなくて生きるためです」と、最初の呼びかけを否定するかのようなポスターを並べた、総合人材サービス企業の広告が話題になっています。SNS上では、「このコピーを検証する展開が面白い」「どっち? どっちを訴えてるの?と考えてしまう」と賛否両論。企画担当者に制作の経緯を聞きました。

反響の大きさで方針転換

 広告を展開しているのは、総合人材サービス企業の「パーソルホールディングス」(東京都渋谷区)です。人材派遣や人材紹介、転職サイトの運営などを幅広く手掛けており、テンプホールディングスが2017年7月、パーソルホールディングスへと商号を変更しました。

「はたらいて、笑おう。」の広告は2017年3月に登場。世界的なITエンジニアのスティーブ・ウォズニアックさんと、80歳を超えてなお現役のモデルとして活躍するカルメン・デロリフィチェさんが呼びかける形で、テレビCMや駅構内の大型ポスターなどを展開しました。2018年1月からは、派遣で働く女性が「はたらくって、笑うためじゃなくて生きるためです」とつぶやいたり、ワーキングマザーが「いつか笑うために、今は、たくさん泣いています」と話したりするCMやポスターを、ウォズニアックさん、デロリフィチェさんの広告と共に展開しています。

 パーソルホールディングス グループ経営戦略本部の大橋直子プロモーション室長に、制作の狙いや経緯を聞きました。

Q.ウォズニアックさんとデロリフィチェさんを広告に起用した理由は。

大橋さん「『PERSOL(パーソル)』というブランド名には、今までの人材サービスを超えて、働くことの課題を解決していきたい、という私たちの意志を込めています。従来の広告のイメージを離れて、メッセージのインパクトをしっかり出せる人、その人自身の言葉で働くことの意義を語ってくれる人、『はたらいて、笑おう。』というスローガンを実践している人、ということでお二人にお願いしました。

制作に当たっては、質問だけを用意して、筋書きなしでそれぞれ約3時間ずつのロングインタビューを行い、リアルな言葉にこだわりました」

Q.「笑うためじゃなくて生きるためです」といった一見相反する広告を、2人のポスターのそばに並べた経緯を教えてください。

大橋さん「実は当初の予定にはなかった展開です。『アンサー広告』と呼んでいるのですが、『はたらいて、笑おう。』を展開した時、メッセージに共感する人がいる一方で、『(笑おうなんて)そんな状況じゃないよ』というネガティブな反応もありました。

その受け止め方自体を伝えていくことで、私たちのメッセージを理解していただけるのではと考え、アンサー広告を作りました。元々の計画では、第2弾は日本の代表的なワーカーの人に出てもらうはずだったのですが、『はたらいて、笑おう。』への反響が予想以上に大きかったので、方針を転換しました」

Q.反応はSNSが中心ですか。

大橋さん「ツイッターやインスタグラム、フェイスブックでも見ました。第2弾を展開するに当たっては、弊社に登録中の派遣スタッフさんや登録会に来ている人たち、また、他社で働く人たち計約20人に『はたらいて、笑おう。と聞いてどう感じますか』とか『この広告をどう思いましたか』と直接インタビューしたり、アンケートをしたりして、その声を反映しました」

Q.アンサー広告は一見、「働くのは、笑うためか、生きるためか、どちらを言いたいのだろう」と迷いそうです。

大橋さん「『どっちなんだ』というのは、よくSNSでも書かれていますが、『笑うためじゃなくて生きるためです』と『はたらいて笑おう。』が共存するようにしています。『笑おう』と押し付けたいわけではなく、いろいろな人がいて、いろいろな受け止め方がある、でよいと思います。どちらであれ、すべての働く人を応援したいというのが弊社の姿勢です」

Q.パーソルグループでは、派遣やアルバイトのマッチングも扱っています。非正規雇用の拡大が低所得や格差の背景の一つとも言われますが、どのように考えていますか。

大橋さん「私たちは『非正規』という言葉をなくしたいと思っています。一人一人に合った働き方の実現ということが大切なのであって、『正規、非正規』という捉え方自体をなくしたいのです。企業側、社会側から押し付ける概念を超えて、一人一人が働きやすいようにしていきたいですね」

Q.働き方改革法案が注目されていますが、今も現実の働く場では、長時間労働やパワハラなどで「笑えない」人たちもいます。

大橋さん「新しい制度については、まだ未確定な部分も多いので、何とも言えません。多くの人がその人らしく働けるよう、制度が正しく機能することこそが大事だと思います。

現実の働く場では、大変なことも多いでしょうし、悩んでいる人も多いと思います。『笑おう』というのは、仕事中ずっと笑顔で、ということではなく、プライベートも含めて、働くことで笑える状態になる人が一人でも多くなれば、という思いです。それが私たちグループの存在価値だと思っています」

「はたらいて、笑おう。」など一連のコピーは、クリエイティブディレクターの佐倉康彦さん作です。テレビCMは、TBS系「ゲンバビト」などで放映中で、パーソルグループのホームページでは、これまでの広告を見られるとともに、広告コピーと自分が撮った写真を合成できる「はた笑(わら)メーカー」も提供しています。

(報道チーム)

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