発達障害の25歳ひきこもり長男、「障害年金」受給できず絶望…どうする? 再請求は可能?
障害年金を再請求する際のポイントについて、社会保険労務士の資格を持つファイナンシャルプランナーが解説します。

筆者のファイナンシャルプランナー・浜田裕也さんは、社会保険労務士の資格を持ち、病気などで就労が困難なひきこもりの人を対象に、障害年金の請求を支援する活動も行っています。
浜田さんによると、障害年金は不支給決定を受けてしまった場合でも、条件を満たせば何度でも再請求することができます。このような再請求のことを「事後重症請求」といいます。
ただ、いくら事後重症請求ができるからといって、不支給になった理由を解決しなければ、再び不支給決定を受けてしまいます。そのため、事後重症請求の前に不支給の理由を解決するための対策を立てておく必要があります。浜田さんが事後重症請求をする際のポイントを解説します。
医師との相性が合わず
私は、ひきこもりの長男(25)のいる母親(57)から、長男の事後重症請求について相談を受けたため、事情を詳しく伺いました。
母親によると、長男には発達障害があり、小さい頃からストレスの多い生活を余儀なくされてきたそうです。「学校の授業を真面目に聞いていても、その内容が頭の中に入らない」「漢字の書き取りを何度練習しても、漢字が書けない」「算数の計算が合わない」「宿題や提出物を白紙で出してしまう」といったことから、母親や先生からよく叱られていました。
また、コミュニケーションも苦手で、級友と会話がかみ合わず、いつも孤独を感じていたそうです。
大学進学は難しそうだったので、長男は、以前から興味があったプログラミングの専門学校に進学しました。当時、遊ぶお金が欲しかったため、アルバイトを始めましたが、職場で先輩や上司から仕事の指導を受けたときに、頭の中が真っ白になることが多かったため、仕事をうまくこなせず、いつも失敗ばかりしていました。その結果、さまざまなアルバイトを転々としましたが、いずれも長続きしませんでした。
「何をしてもうまくいかない。原因は一体何なのか」。疑問を持った長男は、書籍やインターネットで調べ、「自分は発達障害ではないか」という結論に至り、19歳の頃に精神科を受診しました。すると、医師から発達障害の診断を受けました。
長男は専門学校を無事に卒業しましたが、在学中に就職活動に失敗した影響で就職できなかったため、自宅にひきこもるようになりました。
その後、将来に不安を感じた長男は、インターネットなどでさまざまな情報を調べていくうちに障害年金があることを知り、1人で時間をかけて書類をそろえ、請求をしました。請求完了後、長男は母親に向かって「これだけ頑張ったんだから、障害年金は受給できるはずだ」とうれしそうに話したそうです。
しかし長男の期待とは裏腹に、日本年金機構から届いた通知には「不支給」の文字が書かれていました。
「あんなに苦労したのに…。もう駄目だ」
絶望を抱えてしまった長男は、ひきこもり状態がさらに悪化し、月1回の精神科の受診もやめてしまいました。
不支給の理由を踏まえた対策を考える
母親から話を伺った後、私は、長男が障害年金の不支給決定を受けた理由を確認しました。
母親が持参した「国民年金・厚生年金保険の支給しない理由のお知らせ」の通知には、次のような理由が記載されていました。
「請求のあった傷病の障害認定日現在の障害の状態は、障害年金1級または2級の対象となる障害(国民年金法施行令別表に規定)に該当しません」
通知書を見ていた私は、顔を上げて言いました。
「息子さんは障害年金が受給できる程度の障害状態にはなかったので、障害年金が認められなかったということですね。なお、障害状態がどのくらい重いのかは、主に医師の書く診断書によって判断されます。その診断書の記載内容が『障害年金が受給できるほど重くはなかった』ということになります」
すると、母親は思い切ってこう伝えました。
「私の個人的な意見になってしまいますが、この間まで通院していた精神科の医師は、長男のことをあまり理解してくれていなかったのではないかと思っているのです」
「なぜそのように思うのですか」
筆者は疑問に思い、母親からもう少し事情を伺いました。
長男は会話のキャッチボールが苦手で、家族以外の人に話しかけることはほとんどないそうです。受診をしても、医師と何も話さずにすぐに診療室から出てしまったことが何度もあったほか、医師の問診は数分で終わってしまうとのことでした。
そこで、心配した母親が同席を希望しましたが、医師が拒否したため、仕方なく長男のみで受診を続けていたそうです。
そのような経緯もあり、母親は「果たして医師がどこまで長男のことを理解してくれていたのか」と、心の中にモヤモヤしたものを抱えていました。
事情を把握した私は、「それでは、息子さんの特性を理解してくれそうな新しい病院を探すところから始めてみましょう。インターネットで『発達障害 専門外来』などと検索して探すこともできます。いくつかのサイトを見比べてみて、良さそうな病院を受診してみるとよいでしょう」とアドバイスをしました。
その上で「新たな病院を受診した後、私にご連絡いただければ、息子さんの日常生活の困難さを参考資料としてまとめることもできます。参考資料を医師にご覧いただくことで、口頭では伝え切れないこともカバーすることができます」と提案しました。
すると、母親は「分かりました。病院のことと専門家の方に手伝ってもらえることを長男に伝えてみます」と返答し、面談が終了しました。
面談から1カ月がたった頃、母親から次のような報告がありました。
「長男はあまり乗り気ではないようでしたが、私(母親)と一緒に病院のサイトを少しずつ調べるようになりました。長男の気に入るような病院が見つかるまで時間がかかりそうですが、焦らずに探していこうと思います」
絶望を抱えていた長男は新たな一歩が踏み出せたようで、私はうれしく思いました。
(社会保険労務士・ファイナンシャルプランナー 浜田裕也)
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