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1人暮らしの「ヒートショック」 “助かるため”にすべきこと、医師に聞く

冬になると、よく「ヒートショック」という言葉を耳にしますが、1人暮らしでヒートショックになったときは、周囲がすぐに助けてくれません。どのように対処すればよいでしょうか。

1人暮らしの浴室でヒートショックになったら?
1人暮らしの浴室でヒートショックになったら?

 冬になると、よく「ヒートショック」という言葉を耳にします。特に高齢者が、浴室やトイレで突然倒れる事例が目立ちますが、若者もヒートショックになる可能性があり油断できません。実際にヒートショックになっても、周囲に人がいれば、助けられる可能性があります。しかし、単身世帯が増えている現在、周囲に誰もいない状況で、ヒートショックになることも考えられます。1人暮らしでヒートショックになったとき、どのように対処すればよいでしょうか。内科医の市原由美江さんに聞きました。

直前に自覚症状あり

Q.「ヒートショック」とは、何でしょうか。

市原さん「冬場の寒い時期に、暖かい部屋から寒いトイレや脱衣所に移動すると、その急激な温度差によって血圧が上がります。さらに、脱衣所から浴室に移動して、温かい湯船につかると血管が拡張するので、今度は血圧が下がります。この急激な血圧の変動によって心臓や脳の血管に負担がかかり、脳出血や脳梗塞、心筋梗塞などを起こすことを『ヒートショック』と呼びます」

Q.ヒートショックが起きる前に、何らかの自覚症状が出るのですか。あるいは、突然、起きてしまうのですか。

市原さん「ヒートショックによる脳出血や脳梗塞、心筋梗塞などは急に起きます。しかし、自覚症状が出ることがあり、脳出血や脳梗塞、心筋梗塞などが起きる直前に、めまいや立ちくらみなどの不調を感じ、その後に頭痛や胸痛、脱力、意識障害などを起こします。脳出血や脳梗塞、心筋梗塞に至らない状態であれば、めまいや立ちくらみなどの不調を感じます」

Q. 1人暮らしでは、ヒートショックになっても、すぐに助けられないケースが多いと思います。もしも、ヒートショックになった場合、どのように対処すればよいでしょうか。

市原さん「めまいや立ちくらみの段階で、早めに横になり安静にできたとしても、入浴中であれば脱衣状態ですし、悪化する可能性もあり、1人で体調の経過を確認するのは心配です。一方、浴室内も含め、急に立ち上がったり起き上がったりしたとき、血圧が一時的に低下する『起立性低血圧』の場合も、同様にめまいや立ちくらみが起きるのですが、この場合は数分で改善します。

しかし、一般の人が、めまいや立ちくらみの原因が起立性低血圧なのか、ヒートショックなのかを判別するのは難しいと思います。そのため、めまいや立ちくらみが起きたとき、数分後に改善する保証はないと考え、1人暮らしの入浴時は、脱衣所にスマホを置いておき、すぐに連絡できる手段を確保しましょう。めまいや立ちくらみが起きたときは、自宅に来られる人にすぐに連絡するか、ちゅうちょせずに救急車を呼びましょう」

Q.ヒートショックにならないための予防策を教えてください。

市原さん「急激な温度差によって、血圧が乱高下することにより、ヒートショックは起こります。トイレや脱衣所、浴室を温めておくことが大事です。湯船につかる時間も長すぎると血圧が下がり過ぎるので、10分程度にとどめ、お湯の温度も40度程度にしましょう。

湯船を出るときは、急に立ち上がると血圧の急激な低下を助長するので、ゆっくりと起き上がりましょう。また、飲酒後の入浴も血圧低下を助長し、危険なので避けましょう」

(オトナンサー編集部)

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市原由美江(いちはら・ゆみえ)

医師(内科・糖尿病専門医)

eatLIFEクリニック院長。自身が11歳の時に1型糖尿病(年間10万人に約2人が発症)を発症したことをきっかけに糖尿病専門医に。病気のことを周囲に理解してもらえず苦しんだ子ども時代の経験から、1型糖尿病の正しい理解の普及・啓発のために患者会や企業での講演活動を行っている。また、医師と患者両方の立場から患者の気持ちに寄り添い、「病気を個性として前向きに付き合ってほしい」との思いで日々診療している。糖尿病専門医として、患者としての経験から、ダイエットや食事療法、糖質管理などの食に関する知識が豊富。1児の母として子育てをしながら仕事や家事をパワフルにこなしている。オフィシャルブログ(https://ameblo.jp/yumie6822/)。eatLIFEクリニック(https://eatlife-cl.com/)。

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