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うつ病の24歳ひきこもり長男、「障害年金」請求先延ばしで母困惑 どう説得する?

病気で就労困難なひきこもりの人が、障害年金の請求を先延ばしにする場合、同居する家族はどのように対処すべきなのでしょうか。社会保険労務士の資格を持ち、就労困難なひきこもりの人を対象に、障害年金の請求を支援する専門家が解説します。

病気で就労困難な人が、障害年金の請求を先延ばしにするリスクは?
病気で就労困難な人が、障害年金の請求を先延ばしにするリスクは?

 筆者のファイナンシャルプランナー・浜田裕也さんは、社会保険労務士の資格を持ち、病気などで就労が困難なひきこもりの人を対象に、障害年金の請求を支援する活動も行っています。ひきこもりを続ける人の中には、うつ病などの病気が原因で就労が難しいケースもあります。その場合、将来的に生活を続けるためには、障害年金を請求するのが有効ですが、中には障害年金を請求する決心がつかず、請求を先延ばしにしている人もいます。

 決心がつくまで何もせずにいると、病院で書いてもらう証明書が入手できなくなってしまう可能性があり、障害年金の審査に影響が出てしまいます。ひきこもりの人が障害年金の請求を先延ばしにする場合、同居する家族はどのように説得したらよいのでしょうか。ひきこもりの子どものいる家族を例に、浜田さんが対処法を紹介します。

高校退学後、ひきこもるようになった長男

 ある日、ひきこもりの長男(24)のいる母親(55)から障害年金の請求に関する相談を受けました。母親は、長男がひきこもりに至った経緯や障害年金の請求状況について、語り出しました。

 進学校に入学した長男は高校1年の頃、勉強についていけず苦しんでいました。さらに「級友からばかにされる」「先生たちから無視される」などの出来事も重なり、学校に行けなくなってしまったそうです。しばらくして高校を退学。通信制の高校に編入しました。

 しかし、すっかり自信をなくしてしまった長男は、通信制高校も退学してしまいました。その後、長男は外出することもほとんどせず、自室にひきこもるようになったそうです。

 長男が20歳になった頃、心の不調を訴えるようになったため、心配した母親は長男を近所の心療内科へ連れて行きました。

 医師からはうつ病の傾向があると診断され、服薬治療を開始することに。しかし、治療をしてもなかなか回復することはありませんでした。疑心暗鬼に陥ってしまった長男は、その後、転院を繰り返し、現在通っている病院は5カ所目になるそうです。

 長男は今もうつ病を抱えており、月に1回、母親に付き添ってもらいながら精神科に通院。通院する以外に外出することは一切なく、1日のほとんどを自室で過ごしています。

「長男は就労が難しいかもしれない」

 そう感じた母親は、長男に「障害年金の請求をしてみてはどうか」と伝えてみたそうです。すると、長男からは思いがけない返事がありました。

「障害年金の請求は30歳になるまで待ってほしい。それまで何とか自分なりに頑張ってみたい」

 母親は、長男が30歳になるまで待つ理由が分からなかったので、長男にその理由を聞いてみました。しかし、はっきりとした理由を教えてもらうことはできませんでした。

「恐らく、長男の中で区切りになる年齢なのではないかと思います。30歳まで頑張ってみて、それでも駄目なら障害年金を受給する、ということなのでしょう」

 当時を振り返り、母親はそう言いました。

 とはいえ、長男は今のところ何か行動を起こしているわけではないそうです。就労支援を受けることもなければ、精神疾患の人向けのデイケア(社会参加、社会復帰などを目的にさまざまなグループ活動をすること)にも参加していません。

 母親としてはもどかしい気持ちもありますが、長男が30歳になるまで待つことに決めたそうです。

「できるだけ長男の意見を尊重するようにしたいと思っています。それで大丈夫ですよね」

 母親は自分を納得させたいためか、同意を求めてきました。

 しかし、ここまでお話を伺ったときに、ある懸念を抱きました。それは「このまま長男が30歳になるまで何もしないでいると、初診日の証明書を入手することが難しくなってしまうのではないか」というものです。

 そこで、初診日の証明について母親にアドバイスをしました。

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浜田裕也(はまだ・ゆうや)

社会保険労務士、ファイナンシャルプランナー

2011年7月に発行された内閣府ひきこもり支援者読本「第5章 親が高齢化、死亡した場合のための備え」を共同執筆。親族がひきこもり経験者であったことから、社会貢献の一環としてひきこもり支援にも携わるようになる。ひきこもりの子どもを持つ家族の相談には、ファイナンシャルプランナーとして生活設計を立てるだけでなく、社会保険労務士として、利用できる社会保障制度の検討もするなど、双方の視点からのアドバイスを常に心がけている。ひきこもりの子どもに限らず、障がいのある子ども、ニートやフリーターの子どもを持つ家庭の生活設計の相談を受ける「働けない子どものお金を考える会」メンバーでもある。

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