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猫に“人間用の牛乳”を「与えてはいけない」って本当? 真偽を獣医師に聞いた

ネット上にある「猫に人間用の牛乳を与えてはいけない」という情報。本当にそうなのか、真偽を獣医師に聞いてみました。

「猫に牛乳を」と考える人は多いけど…
「猫に牛乳を」と考える人は多いけど…

 野良猫や捨て猫を保護した際、「牛乳を飲ませてあげよう」と考える人は多いのではないでしょうか。また、実際に牛乳を飲ませたという経験がある人もいるかもしれません。しかし、ネット上には「猫に人間用の牛乳を与えてはいけない」という情報もあり、「知らなかった」「どうして人間用はダメなの?」「どんなものを与えればいい?」など、疑問の声もあります。

「猫に人間用の牛乳を与えてはいけない」というのは本当なのでしょうか。実際のところについて、獣医師の増田国充さんに聞きました。

便が緩くなる「乳糖不耐症」の猫もいる

Q.「猫に人間用の牛乳を与えてはいけない」というのは事実でしょうか。

増田さん「はい、推奨しません。子猫の場合、授乳期にミルクを飲むことができないのは致命的な問題になり得るため、『何らかの乳製品を与えなければいけない』と考えるのは合点がいきます。しかし、人間が飲用する牛乳については、有害な成分が入っているわけではないものの、積極的に与えることは推奨できません。

その理由として、猫の母乳と人間が飲む牛乳とでは、栄養組成に差があることが挙げられます。牛乳には乳糖(ラクトース)という成分が豊富に含まれていますが、猫の中には、乳糖を消化する能力が低い個体が存在します。人間でも、牛乳を飲むとおなかが緩くなる『乳糖不耐症』の人がいますが、これは猫にも同様にみられるもので、便が緩くなるケースがあるのです。一方で、人間用の牛乳を飲んでも特に不調を来すことがない猫もいることから、個体による差があることを知っておくとよいでしょう。

なお、猫が衰弱している場合や、幼齢・高齢の猫の場合では、消化管の機能が低下していることがあるため、手元に猫用ミルクがあればそちらを与えることが望ましいといえます」

Q.野良猫や捨て猫の保護時には、手元に猫用ミルクがなく、すぐに準備できないケースもあると思います。そのような場合、何を与えるのがよいですか。

増田さん「手元に猫用ミルクがなく、かつ、動物病院にすぐ連れて行けない場合の緊急的な代用方法として、牛乳に卵黄を溶かしたものを用いることがあります。こうすることで、猫用のミルクの成分に近づけることができます。その後は、健康チェックや適正なミルクの摂取量の確認のため、動物病院に連れて行きましょう。

子猫にミルクを与える際に重要となるのは、与える量と間隔です。体は小さいものの多くの栄養が必要なので、頻繁に授乳を行いましょう。例えば、目が開いていない生後1週間程度の猫であれば、1回の授乳量は5~8ミリリットルです。これを2~3時間置きに行い、1日の総量として50ミリリットルほど飲ませることが望まれます。そして、体重を毎日計測し、1日当たり10グラム程度増加することを目指します。生後4週付近までの猫は自力で排せつできないため、その際は排せつ補助も行いましょう。

なお、屋外で保護された猫は、十分な食べ物にありつけていない、あるいは感染症やさまざまな病気によって体力が十分でないケースが多くみられます。この状況で、一度に多くのミルクや食べ物を急激に与えると、かえって下痢を誘発する場合があるため、注意が必要です」

Q.もし、誤って猫に人間用の牛乳を与えてしまったら、どうすればいいですか。

増田さん「先述の通り、人間用の牛乳を与えても特に影響がない猫がいる一方で、乳糖不耐症によって便が緩くなってしまう猫もいます。人間用の牛乳を与えた結果、明らかに便の状態に変化が生じた場合は、使用を控える必要があります。

また、牛乳に含まれる『カゼイン』と呼ばれるタンパク質に対して、猫がアレルギーを持っているケースもみられます。このアレルギーの場合、下痢の他、皮膚にかゆみを伴う症状が出ることがあるかもしれません。牛乳を与えたことによって明らかに不調が生じた場合は、動物病院に連れて行き、適切な処置を受けましょう。

なお、時折、『水の代用として牛乳を与える』人がいますが、栄養組成のバランスに変化を与える可能性があるため、無理に牛乳を与える必要はありません」

Q.その他、猫に与えるのがNGな人間用の飲食物はありますか。

増田さん「猫に与えてはいけない飲食物は意外と多いです。日本は島国なので、猫に魚介類を与える風習がよくみられますが、タコやイカなどの生食は『ビタミンB1欠乏症』を招き、食欲低下や嘔吐(おうと)が生じる可能性があります。また、豚肉の生食は『トキソプラズマ』と呼ばれる原虫の寄生リスクがあります。国内で流通している豚肉はリスクが低いと考えられますが、豚肉は人間と同じく、猫にとっても『そもそも生食には適さない食材』という認識でよいと思います。

なお、犬とも共通しますが、ネギ類は貧血、チョコレートは興奮や嘔吐、下痢などを起こすため、与えてはいけません。

また、食べ物ではないものの、『人間が服用する薬を飲んでしまった』という例が多くみられます。猫は、体内で薬物を代謝する能力が人間や犬よりも低いため、中毒が生じやすい点も注意すべきでしょう」

(オトナンサー編集部)

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増田国充(ますだ・くにみつ)

獣医師

北里大学卒業。愛知、静岡県内で勤務後、2007年にますだ動物クリニックを開院。一般診療のほか、専門診療科として鍼灸や漢方をはじめとした東洋医療を行っている。国際中獣医学院日本校事務局長兼中国本校認定講師、中国伝統獣医学国際培訓研究センター客員研究員、日本ペット中医学研究会学術委員、AHIOアニマルハーブボール国際協会顧問、専門学校ルネサンス・ペット・アカデミー非常勤講師。ますだ動物クリニック(http://www.masuda-ac.jp)。

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