「宛名が空欄や上様はNG」「『品代』もアウト」…「領収書」の“ルール”、法的根拠はあるの? 弁護士に聞いた
漢字の間違い、自分で修正は?
Q.領収書の宛名が間違っていて、再発行してもらうのが難しい場合、その領収書は無効になってしまうのでしょうか。微妙な間違いの場合と明らかな間違いの場合とで違いはあるのでしょうか。
佐藤さん「領収書の宛名が間違っていても、それだけで無効になり、経費として計上できなくなるわけではありません。事業との関連性が記帳の状況や支出の目的などから認められれば、その領収書を使用して経費として計上できます。
例えば、漢字が1文字誤っているなどの微妙な間違いで、その事業者のことを指していることがほぼ明らかであり、しかも、事業者が領収書の内容と一致する証拠(記帳やメモなど)を持っていれば、領収書の宛名が間違っていたとしても経費として計上してもらいやすくなると思います。ただし、支出によっては、宛名が間違っているせいで事業との関連性が否定され、認めてもらえないケースもあるでしょう」
Q.もし、自分で宛名を書き直したらどうなるのでしょうか。
佐藤さん「宛名を書き直した場合も、それだけで直ちに無効にはなりません。その他の証拠から事業との関連性が認められれば、経費として計上してもらえるでしょう。ただし、領収書は本来、発行側が作成するものなので、あえて書き直さない方がよいでしょう」
Q.宛名ではなく、金額が空欄の領収書の法的問題はどうでしょうか。発行側、受け取り側双方について教えてください。
佐藤さん「金額を空欄にした領収書は、受取人が水増しした金額を記入して経費として計上するなど悪用されるリスクが高いので、発行するのはやめましょう。受取人が会社や税務署に提出するため、水増しした金額を記入すれば、受取人は私文書偽造罪に問われますし、場合によっては詐欺や脱税などの問題になることもあります。
受取側による悪用があった場合、発行側も『悪用を助けた』として法的責任を問われる可能性があります。実際、『金額を空欄にした領収書を大量に渡して、取引先の脱税を手助けした』などとして法人税法違反ほう助の罪に問われた会社役員に対し、懲役6月・執行猶予3年の判決が言い渡されたケースもあります(大阪高裁2014年5月13日)。このケースでは『取引先が脱税に悪用する可能性は当然認識していた』として発行側の責任が認められました」
Q.「ただし書き」の部分が空欄や「品代」の場合の問題点も教えてください。
佐藤さん「領収書の『ただし書き』には取引内容を記載します。先述した通り、取引内容は消費税法上の記載事項とされていますし、何を買ったのか、どんなサービスを受けたのかが分からないと経費として計上することもできないので、きちんと記載する必要があります。
『ただし書き』を空欄にした場合、先述した金額が空欄のケースと同様、悪用される可能性があります。事業と関連性がある支出であるかのように装って、虚偽の取引内容が記載されれば、私文書偽造罪や脱税などに問われる可能性があり、領収書を発行した側にも責任が及ぶことがあります。また、『品代』とのあいまいな書き方も税務調査の際、『事業との関連性が薄い支出を経費として計上しているのではないか』と不正を疑われる可能性があるため避けるべきです」
(オトナンサー編集部)
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