オトナンサー|オトナの教養エンタメバラエティー

コロナ禍で「ガクチカ」が話せない! さてどうする? 専門家のアドバイス

就活や転職、企業人事のさまざまな話題について、企業の採用・人事担当として2万人超の面接をしてきた筆者が解説します。

「ガクチカ」がなかったらどうする?
「ガクチカ」がなかったらどうする?

 以前、「面接で『学生時代に力を入れてきたこと』=『ガクチカ』がなくても大丈夫?」という記事を書きました。そこでは「面接は成果自慢大会ではないので、何か派手な課外活動をしていることは特に必要がない」「まずは義務で行う学業等に対してどういう行動を取ったかの方が、仕事での行動を予測しやすい」といったことを述べました。2020年11月、新型コロナが国内で流行し始めた年の秋の記事です。

 その後、2024年卒業予定の学生の皆さんが夏のインターンシップの時期を迎え、さらにこの問題は切実なものになってきているという声がありましたので、今回は再び、「ガクチカ」がうまく話せない場合の対策について考えてみたいと思います。

中高時代などの「昔話」をしてみる

 学生時代をコロナ禍で過ごして、人に話す「ガクチカ」的エピソードがあまりないという人は、自分の性格・能力・価値観を表現するのに「昔話」、つまり幼少期から中高時代の思春期の話をしてみてはどうでしょうか。

 そもそも面接担当者の多くは「学生時代は、既にある程度人となりが固まってきている時期」と捉えています。アイデンティティー(≒自分らしさ)の概念を提唱したエリクソン(米国の心理学者)もそのライフサイクル理論において、アイデンティティーの確立が発達課題となるのは思春期であるとしており、そのため、面接担当者は学生時代だけではなく、その人となりを形成した中高時代を聞きたがる人が多いくらいです。

 ただ、「学生時代に何をしてきたか」という質問に対して、いきなり中高時代の話だけをすると「この人は聞かれたことに答えていない」と思われてしまうかもしれません。「学生時代には、これこれのことをしてきました」と簡単に述べた上で、「それをしようとしたきっかけは高校時代に…」「実は中高時代にこういうことをしてきたので、それが可能な能力が身に付いた/そういうことをしようと考えるようになった」など、学生時代にしてきたことの「きっかけ」「背景」「原因」「由来」「理由」として回答すれば、自然に「昔話」をすることができて、面接担当者に「自分」を伝えることができます。

小さなことの積み重ねで「合わせ技一本」

 さらに、思春期で形成されたものが根付いていることを訴えるためには、もう一度、「だから学生時代に、こんな場面でこういうことができた/したのです」と伝えられればベストです。ただ、それができないから「昔話」をしているわけなので、その場合、とても地味で小さなことでまったく構わないので、「中高時代で培ったこういった能力/性格/価値観は、『例えば』こんなことや、あんなことに表れています」と、数個のエピソードに小分けにして例を出し、「どんな場面でも、いつでも発揮できている」と印象付けることで「根付いている」と思ってもらうことが可能です。

 一つのインパクトあるエピソードでなくても、このように「合わせ技一本」というやり方でも、企業が見たい「再現性」が分かるので問題ありません。

【復活!】リアルの場が増えた2022年の就活、合同企業説明会に参加した学生たち

画像ギャラリー

1 2

曽和利光(そわ・としみつ)

人材研究所代表

1971年、愛知県豊田市出身。灘高校を経て1990年、京都大学教育学部に入学し、1995年に同学部教育心理学科を卒業。リクルートで人事採用部門を担当し、最終的にはゼネラルマネジャーとして活動した後、オープンハウス、ライフネット生命保険など多様な業界で人事を担当。「組織」「人事」と「心理学」をクロスさせた独特の手法を特徴としている。2011年、「人材研究所」を設立し、代表取締役社長に就任。企業の人事部(採用する側)への指南を行うと同時に、これまで2万人を超える就職希望者の面接を行った経験から、新卒および中途採用の就職活動者(採用される側)への活動指南を各種メディアのコラムなどで展開している。著書に「定着と離職のマネジメント『自ら変わり続ける組織』を実現する人材流動性とは」(ソシム)など。

コメント