9人体制の法人警護で暴力団員と対峙…緊迫の応接室〜実録・ボディーガード体験談
刑事3人が待機…緊迫のアポイント
では、一日の流れをお話ししましょう。
毎朝7時45分に、会長の自宅に専用車が迎えに来ます。役員は全員、運転手付きの社用車での移動でした。自宅玄関前で待機すると、8時ちょうどに会長が姿を見せます。車で20分ほどの会社に向かい、出社後は警護用の待機室で、秘書からその日のスケジュールが伝えられます。その後は会長の行き先全てに同行し、午後7〜8時ごろに自宅までお送りして終了――というのが大まかな流れです。
警護開始から数日は何も起こりませんでしたが、10日目くらいに、「◯◯エンタープライズ(仮名)」という会社から面会の申し入れがありました。先述した「Z」という組織のフロント企業です。本来、会う必要はありませんが、会長の指示により申し入れを受けることになりました。実は警察からも、アポを受けるように要請があったのです。ここで相手がボロを出せば、解決がスムーズですから。
3人の刑事がモニター付きの別室で待機し、万が一の際は現行犯逮捕する手はずです。ただし、実際の話し合いは役員ではなく、企画室長と営業部長が行いました。ちなみに、私も社員という体で同席しています。
「なぜ会長が応対しないのか」と疑問かもしれませんが、こういう場合、トップが顔を出すことはめったにありません。危険なだけでなく、決裁権を持つ人間が同席すると、無理な決断をその場で迫られることもあります。つまり、「後日回答します」という逃げが使えなくなるのです。
午後1時、約束の時間ちょうどにスーツ姿の2人が来社しました。お出迎えと応接室への案内は、私がしました。2人とも40歳前後、風体は「いかにも暴力団員」という感じではありません。しかし、一般のサラリーマンとは明らかに気配が違います。
応接室にお通しすると、中で待っていた企画室長と営業部長が名刺を渡しました。しかし相手は名乗るだけで、自分の名刺は出しませんでした。その後は、席に着くなり本題です。
「今、XとY、両方の組と渡りをつけている。うまくまとまりそうだが、ここから先はおたく(A社)の協力が必要だ」。簡単にいうと、このような内容です。はっきりとは言いませんが、「協力」とは金のことでしょう。XとYのメンツを保つには、金が必要である…こういう筋書きです。
しかし企画室長は、「仲介をお願いしたことはないし、お願いする気もありません。今後の対応は警察に任せているので、ご心配いただかなくて大丈夫です」と返しました。すると相手は、「警察では渡世の義理までは強要できない。蛇の道は蛇に任せなさい。面倒になりかねませんよ」というようなことを、静かに言いました。

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