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「してまう」を敬遠し「しちゃう」を使う関西の若者が増加…関西弁は衰退しつつある?

「しちゃう」「やっちゃう」といった東京発の言葉が昨今、関西の若者の間で定着するとともに、コテコテの関西弁は敬遠されつつある、という内容の記事が話題となりました。関西弁は衰退してしまうのでしょうか。

関西弁は衰退しつつある?

 先日「関西弁と東京弁(標準語)」に関するニュースがネット上で話題になりました。それによると近年、「しちゃう」「やっちゃう」などの東京由来の言葉が、関西の若者の間でも定着しつつあるとのこと。また、「買ってまう」のような「~てまう」という言い回しを「コテコテ過ぎる」と敬遠する若者が増えているとの指摘や「けったいな」「なんぎや」などのように、東京弁に言い換えられない独自の関西弁は今後使われなくなっていくだろう、との予測もなされています。

 ネット上では「『買っちゃうねん』は違和感あるわ~」「コテコテなのは年配の人だけかも」「関西独特のイントネーションは廃れないと思う」などさまざまな意見が見られますが、関西弁は衰退しつつあるのでしょうか。日本の方言に詳しい、大阪府立大学大学院人間社会システム科学研究科の西尾純二教授(日本語学)に聞きました。

背景に標準語化と若者特有の言葉遊び

Q.「しちゃう」「やっちゃう」が関西の若者の間で広まっている要因として、どのようなことが考えられますか。

西尾さん「要因の一つとしては、やはり『標準語化』があると思います。東京で使われる『しちゃう』はフォーマルな標準語とは言いにくいですが、関西において東京弁の『しちゃう』は、標準語のようにちょっと『いい言葉』、派生して『キザな言葉』と認識されています。日本語の長い歴史のほとんどの期間、地域の方言は内発的に、もしくは近隣の方言に影響を受けて変化してきました。しかし、日本全体に標準語が浸透した結果、方言は標準語の影響を強く受けるようになりました。『しちゃう』のような東京弁もマスメディアでよく使われるため、これもまた地域の言葉に影響を与えているのです。一般に、言語変化は若い人たちから始まります。関西の若者が、東京弁の『しちゃう』『やっちゃう』を使うようになったことで、以前の言葉がコテコテに感じられたり、下品に感じられたりします。たとえば大阪では、『~しとる』に代わって『~してる』という言い方が優勢になっています。そして、元々の『~しとる』は少し荒っぽい言い方だと思われています。特に女性は使わない傾向にあります。同様に、『してまう』も『しちゃう』に変化するにあたって、元々の言葉が『コテコテの荒っぽい言い方』と認識されているのでしょう」

西尾さん「ほかにも若者に定着する要因は考えられます。それは『~ちゃう』という表現の意味に関わることです。たとえば、『最近、食べ過ぎちゃう』と『最近、食べ過ぎる』とを比較すると、同じ事柄を説明していても、『~してしまう』の方が感情を入れ込んでいる印象があります。こうした場合、通常の言い方をするよりも少し別の言い方をしたくなるものです。関西人には、ちょっとキザな東京弁の『しちゃう』を使いたくなることもあるのです。テレビで関西弁を話すお笑い芸人が、真顔で標準語を使うと笑いが起きたりします。また、あるアイドル事務所の影響で『やっちゃいなよ』というフレーズも面白い言い方として広く知られています。こういう言葉遊びは若者が好みます。関西の若者が、標準語や東京弁を『権威ある模倣の対象』ではなく『会話を楽しく演出する道具』として使えるのは、関西人の“お笑い気質”だけでなく、日本語内における関西弁の地位の高さを表しているのかもしれません」

Q.いわゆる「コテコテの関西弁」は減少傾向にあるのでしょうか。

西尾さん「言葉は常に変化しているため、コテコテの方言は現代も含め、いつの時代も減少傾向です。たとえば『今日は雨やで』という時の『や』は、約100年前の上方では『じゃ』が優勢でした。その後、女性が『や』を使用し始めました。世界的に女性は規範的でいい言葉を志向する傾向にあります。また『雨や』という言い方ではなく『雨やろうな』という断定的でない推量表現から使われ始めたことが文献資料から見て取れます。『や』が普及し始めた頃、上方では『や』はマイルドでちょっといい言葉で、『じゃ』はコテコテの言い方と認識されていたのではないでしょうか。そのコテコテの言い方は、現在の京阪神では『何ぬかしとるんじゃ』のような野卑でキツイ言い方になっており、先述の『~しとる』もこれに含まれます。『じゃ/や』の場合、古い関西弁が野卑な言い方に追いやられて、新しい関西弁に変化しています。つまり関西弁が関西弁に変化しているのです。一方『してまう』『してもうた』という関西弁が『しちゃう』『しちゃった』など首都圏の言葉に置き換わっているのは、標準語化に近い変化であり、関西以外の地域でも進んでいそうです。そういう意味では、関西弁も言葉としての独自性が徐々に薄れていくのかもしれません」

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