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ジョークでも大切な人が侮辱されたら、あなたは一緒に笑う? ウィル・スミス氏「平手打ち事件」から考える

大切なのは侮辱された当人のケア

 また、侮辱によって傷つけられた人をまずケアするべきだ、と考える人もいます。

「家族が侮辱されて怒るのは、自分の勝手です。許せない気持ちは理解できますが、本当に大切な人のことを案じるなら、まず自分の感情をいったん置くべきです。ウィル・スミスさんの妻であるジェイダさんは、夫がビンタまでして『私のことで怒ってくれてうれしい』という思いはあったかもしれませんが、気まずい気持ちの方が強かったと思うんですよねえ…。

僕がもしウィル・スミスさんだったら、パートナーに声を掛け、2人そろって無言で席を立っていたと思います。傷つけられたであろうパートナーを落ち着ける空間に連れていけますし、ジョークを言った相手への抗議のメッセージにもなります。それに、怒りをありのままにぶつけるより、周りの人を味方に付けやすかったと思います。

と、偉そうなことを言いましたが、実際に僕がそうした立場になったら、この理想通りに動ける自信はまったくありません。自分がその時に適切な行動を取れるよう、普段からイメージトレーニングしておいた方がいいかもしれませんね」(39歳男性)

 誰かのために怒る行為は、実は自分のためかもしれない…という、なかなか示唆に富む考え方です。土壇場で、自分の怒りを横に置いてパートナーのことを真っ先に思いやる難しさはありますが、これができれば自分の怒りに振り回されずに済むはずです。

 アカデミー賞授賞式という特別な場に限らず、自分の前で大切な人が侮辱される・傷つけられるシーンは日常でも同様に起こり得ます。そのような機会に出くわした際、「自分がどう感じ、どのように動こうとするか」「何を一番優先すべきか」などをあらかじめ考えておくことは、備えとなり無駄ではないはずです。

 さまざまな意見が飛び交ったウィル・スミスさんの平手打ち事件ですが、これを通して自分や大切な人のことを改めて考えることは、きっと有益な試みになることでしょう。

(フリーライター 武藤弘樹)

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武藤弘樹(むとう・こうき)

フリーライター

早稲田大学第一文学部卒。広告代理店社員、トラック運転手、築地市場内の魚介類卸売店勤務などさまざまな職歴を重ね、現在はライターとミュージシャンとして活動。1児の父で、溺愛しすぎている飼い猫とは、ほぼ共依存の関係にあるが本来は犬派。趣味はゲームと人間観察。

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