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若手社員が嫌がる「社内行事」 どんな意味や効果? 楽しむための工夫はある?

いつの時代も社内行事は、若い社員を中心に、参加することに否定的な声があります。どうすれば楽しい社内行事にできるのでしょうか。

社内行事の代表の花見、場所取りは過去の話?
社内行事の代表の花見、場所取りは過去の話?

 コロナ禍になり、運動会や社員旅行、懇親会などの「社内行事」を行いにくい雰囲気となっています。とはいえ、会社の中には「テレワークの浸透で社員間の意思疎通が難しくなったからこそ、社内行事が必要」という考えもあります。一方、若手社員を中心に、コロナ禍以前から社内行事に参加することに否定的な声が多いのも事実です。社内行事は本当に会社にとってプラスの効果をもたらしているのでしょうか。また、社員が参加したいと思える社内行事を作るためにはどうしたらよいのでしょうか。社会保険労務士の木村政美さんに聞きました。

コミュニケーション促進で離職率低下

Q.運動会などの社内行事を行うことで、どのような効果が期待されているのでしょうか。

木村さん「人材不足が叫ばれている昨今、社員の離職を防ぐことは会社にとって大きな課題となっています。離職の原因は幾つかあり、その一つが『社内での人間関係の不調』です。その大部分は『社内でのコミュニケーション不足』ともいえます。

実際、コミュニケーションが不足している会社は、そうではない会社に比べ、離職者が多い傾向にあります。社内行事を企画したり参加したりすることで、上司と部下の関係だけではなく、部内や普段仕事での関わりが薄い他部署の人たちとのコミュニケーションを図ることが可能となります。

さらに、コミュニケーションの促進は職場への愛着につながり、仕事に対するモチベーションの向上、離職率の低下も期待できます」

Q.ネット上などには、社内行事への参加にネガティブな意見が数多く見られます。なぜでしょうか。

木村さん「特に若手社員の場合、『仕事さえきちんとやっていればよい』と考える人が多く、社内行事への参加に消極的な傾向があります。例えば、『仕事外で社内の人と付き合いたくない』『社内行事への参加で、自分のプライベートな時間が奪われるのは嫌だ』『社内行事に自分でお金を払いたくない』などと考えるのです。

そうした若手社員の価値観を考えると、勤務時間外や休日を使った社内行事は、場合にもよりますが歓迎されない傾向にあります。そこで、会社側は、社内行事の参加率が上がるようさまざまな工夫をしています」

Q.どのような工夫ですか。

木村さん「例えば(1)社内行事を勤務時間内に行うようにする(2)勤務時間外に行う場合は時間外手当や休日給を支給する(3)参加費が必要な場合は会社が負担する(4)ゲーム的な要素を取り入れるなど参加者全員が楽しめる企画を考える―といった取り組みが行われています」

Q.ネガティブな声が多いということは、嫌々参加している社員も数多く存在するということだと思います。そうした状況で行われる社内行事は、会社にとってプラスなのでしょうか。

木村さん「ネガティブな声が多いのには、必ず理由があります。会社によって理由はまちまちですが(1)参加自由のはずなのに上司から強制参加を促される(2)参加しないと協調性がない人間だと思われ、社内での居心地が悪くなったり、人事考課の評価に影響したりする(3)社内行事が休日に行われるため、自分の休みが減ってしまう(4)社内行事と同時に行われる宴会などで、上司からセクハラやパワハラをされてしまう―などが挙げられます。

みんなで楽しむはずの社内行事でネガティブな面が目立ってくると、かえって社員のモチベーションの低下を招き、また、その行事の存在がストレスとなって会社を退職する原因になる場合もあります。そう考えると、社内行事のあり方について改善していかないとプラスの効果はかなり少ないでしょう」

Q.社内行事に楽しみややりがいを感じることができれば、ネガティブな意見も減るように思います。ポジティブな気持ちで社内行事に参加するために、会社や社員がすべきことは何でしょうか。

木村さん「ハードルが低く、社員全員が参加しやすい行事を計画することです。例えば、ゴルフや釣りなど特定の趣味に偏ったものより、ウオーキングの方が参加しやすいでしょう。手軽さから、忘年会や新年会、歓送迎会など飲み会が中心という会社も多いですが、参加者が少なければ再検討する必要があります。酒席では、つい気が緩み、上司から部下へのセクハラやパワハラなどハラスメントの温床になりやすいため注意が必要です。

社内行事を企画するにあたっては、社員の声に耳を傾けることが大切です。例えば、アンケートを取るなどして、どの行事ならみんなが楽しめ、社内活性化につながるのかを検討することが重要です。社員の側も『面倒くさいし、どうせ楽しくない』といった“食わず嫌い”な部分があるかもしれません。もっと気軽に参加してみてはどうでしょうか」

Q.ポジティブな気持ちで社内行事に参加する社員が多い会社では、どのような工夫をしていますか。事例を教えてください。

木村さん「社内行事で思い浮かぶのは、飲み会や社員旅行などですが、最近は行事も多様化し、いろいろな企画が生まれています。ここでは、参加社員から好評を得ているイベントの一例として『ランチ会』を紹介します。

飲み会は夜の開催が多く、プライベートな時間を使うことになるので個々の事情などで全員参加が難しかったり、お酒が飲めない人も多かったりします。しかし、ランチ会は昼休みを使うので参加しやすいです。宅配ピザなどデリバリーサービスを使って社内で行う場合も多く、みんなで雑談しながらランチを楽しむことで、ストレスの解消とコミュニケーションのアップにつなげています」

(オトナンサー編集部)

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木村政美(きむら・まさみ)

行政書士、社会保険労務士、ファイナンシャルプランナー

1963年生まれ。専門学校卒業後、旅行会社、セミナー運営会社、生命保険会社営業職などを経て、2004年に「きむらオフィス」開業。近年は特にコンサルティング、講師、執筆活動に力を入れており、講師実績は延べ700件以上(2019年現在)。演題は労務管理全般、「士業のための講師術」など。きむらオフィス(http://kimura-office.p-kit.com/)。

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