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個別指導の金沢工大、ゼミの武蔵大…高校教諭が選ぶ「面倒見がよい大学」ランキング

入試や授業内容、学生の就職支援など、大学のさまざまな話題について、教育関連の情報発信に携わってきた筆者が解説します。

「面倒見がよい」大学は?
「面倒見がよい」大学は?

 筆者が常務を務める大学通信は毎年、全国の進学校2000校にアンケートを行っています。今年は739校から回答があり、項目別に進路指導教諭におすすめの大学を挙げてもらっています。その中で「面倒見がよい大学」はどこかを聞きました。5校連記で記入してもらい、最初の大学を5ポイント、次を4ポイント…として計算し、集計しています。上位に入った大学を紹介しましょう。

国公立トップは東北大

「面倒見がよい大学」上位10大学
「面倒見がよい大学」上位10大学

 トップは16年連続で金沢工業大学です。進路指導教諭からは「高校の学びの状況に応じて、学び直しの指導を行っている点」(岩手・県立高)、「入学時に比べて卒業時の能力を高めて社会に送り出しているから」(新潟・県立高)、「入学時の偏差値に関係なく、力を引き上げてくれる」(岐阜・県立高)、「真面目な学生をしっかりサポートして、成長させている」(奈良・私立高)などの評価が上がりました。

 2000年から、他大学に先駆けて数理工教育研究センターを設置し、高校の数学・理科の復習から、大学の専門領域で活用できる数理学習まで、個別学習指導が受けられる体制を整えています。学生が自由にものづくりができるよう、「夢考房」というスペースも設けています。理論だけでなく、実践の場を用意しているのが特徴です。

 2位は武蔵大学です。経済、人文、社会の3学部の大学ですが、来年、国際教養学部の新設を予定しています。“ゼミの武蔵”といわれるほど、ゼミナール形式の授業で有名です。このゼミナールは少人数教育で、今でいう、双方向で授業を進めるアクティブラーニング型授業を創立時から実践してきました。全学生、4年間、ゼミが必修で、進路指導教諭からも少人数教育とゼミへの評価が高く、「1年生からのゼミを含め、学生への個別対応が充実している」(東京・都立高)といった評価です。

 3位は、この項目で国公立大トップの東北大学です。総合型選抜に力を入れていることで知られます。大学の教職員が各高校を訪問し、大学の中身を丁寧に説明しているところが評価されています。4位は福岡工業大学です。「偏差値が低く、進学した生徒でも4年間で希望する職種へ就職させている」(長崎・県立高)など、就職力の高さが面倒見のよさとして評価されています。近年では研究分野に力を入れています。

 5位は産業能率大学です。経営と情報マネジメントの2学部の大学で、進路指導教諭たちは「小規模なこともあって学生との距離が近く、きめ細かい指導を行っている」(東京・私立高)、「大規模校ではないが就職率も高く、PBL型授業や実習が充実している」(東京・私立高)などと評価しています。PBL型授業とは、答えのない課題について、個人で考え、グループで話し合って、課題解決につながる提案を発表していく授業です。企業出身の実務家教員が多いことで、このような授業を積極的に取り入れています。

 上位5大学を紹介しましたが、その他、ランキングに入っている大学を含め、「面倒見がよい」といっても、手取り足取り、学生の世話するわけではありません。授業では、主体的な学びを引き出す教育が行われています。学生第一を貫き、学びだけにとどまらず、課外授業においても、学生が主体的に動こうとするときにいろいろなサポートを受けられるところが、本当の面倒見のよさです。そのため、大規模大学もランキングに登場しているのです。

(大学通信常務 安田賢治)

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安田賢治(やすだ・けんじ)

大学通信常務

兵庫県生まれ。早稲田大学卒業後、1983年に大学通信入社。現在、同社常務取締役で、出版編集とマスコミへの情報提供の責任者。小・中・高・大の入試から高校の大学合格実績、大学生の就職までの情報提供と記事を執筆、講演も多数。大正大学人間学部で講師も務める。著書に「中学受験のひみつ」(朝日出版社)、「笑うに笑えない大学の惨状」「教育費破産」(ともに祥伝社新書)がある。

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